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幽霊が生きるこの場所で  作者: 深海京
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真っ白な幽霊

初投稿です。


温かい目で見ていただけると助かります。


どうか、よろしくお願いします。

 もしかしたら、自分は死んでしまったのかも知れない。


 実際、今自分は宙に浮いているし壁抜けだってできるし、誰も自分のことを見やしない。物にだって触れないし、食欲も睡眠欲もない、話しかけたって完全無視。

 無い無い尽くしの毎日だ。


 自分はもしかして幽霊なのでは、と考えが浮かぶまでにさして時間が掛からなかったと思う。その理由の一因として、周りに幽霊が溢れかえっていたことがあげられるが、幽霊は意外とこの世界に多くいるようだ。


 自分が初めて会った幽霊は、自動販売機の横で飲み物を買いに来る人を観察するのが日課と教えてくれた幽霊のおっちゃんだ。


 人間観察が趣味らしく新参者の自分をあっさり受け入れてくれたときは凄く助かった。何と言うか、きっとヒトと久しぶりに話したことが凄く嬉しかったのだろう、少し泣いてしまったのは自分とおっちゃんの秘密だ。


 幽霊とは死人の魂がこの世に留まってしまった状態を指すらしい。怨念だとか後悔だとか、そういった強い思いがこの世に魂を縛り付ける枷になるんだそう。


 実際、生身の人間を呪い殺している瞬間に立ち会ってしまったことがあるとおっちゃんは言っていた。怖い限りである。自分は何時までも清く正しく綺麗な幽霊で居たいものだ。


 幽霊になった以上、何か未練的なものがあるようなので綺麗の判定が未練がましくないだと大変困ってしまうのだが。


 こう言っては何だが、自分は生前の記憶がない。つまり怨念だの後悔だのはさっぱり分からないのだ。自分の事なのに分からない、少し悶々としている自分を見かねたのかある日おっちゃんは自分に興味深い話を教えてくれた。


『幽霊の相談を聞いてくれる人がいるらしい』


 自分はすぐに食いついた。おっちゃんと話をすることは凄く楽しかったが、おっちゃんはこの工事現場から動けない。普通の幽霊は皆動けるらしいがおっちゃんは特別でここから動けないらしい。よっておっちゃんと話すにはここに来なければならない。人見知りのではないが幽霊になって間もない自分は移動するのが怖かった。記憶はないが、無知は死に近いと知っている。


 それでも外の世界を覗いてみたかった。

 まぁ、実際外で生活しているのだけれども幽霊なのでノーカウントで。


 自分のことを知りたかった。

 真っ白のままで居たくなかった。


『ありがと、おっちゃん。僕行ってみるよ』


 おう、気をつけてな、そう言っておっちゃんは見送ってくれる。少し寂しそうな顔を隠した笑顔で手を振ってくれる。


 また来るよ、と告げ、おっちゃんが相談してくれる人を教えてもらったという幽霊さんに会いに行くことにする。偶々、僕が居ない時に通りかかった幽霊さんらしく普段は生前住んでいた家で家族を見守っているそうだ。


 暫く浮遊して教えてもらった家につき、お邪魔しまーすと言いながら家に入る。

 幽霊だから不法侵入ではありません、たぶん、きっと。そんなこと考えているとふと後ろから話しかけられた。


『何だお前?』


 白髪の多い頭髪に笑い皺の目立つ顔の老父が自分の後ろに浮いていた。

 その後ろできゃっきゃと戯れる二人の幼子を見る目は酷く優しい、きっと良い祖父であったに違いない。そんな想像をし、おっちゃんイチオシの人畜無害スマイルを浮かべ老父に尋ねる。


『貴方が工事現場のおっちゃんに相談屋さんのことを教えてくださった幽霊さんですか?』


 あぁ、その話か、と言われ着いて来いといきなり道案内が開始されそうになる。驚いて何処に行くんですと聞くと、相談屋のトコに行きたいんじゃ無いのか、と聞かれまずは話が聞きたいと返す。


『話を聞くも何も、名前の通りだぞ。相談を聞いてくれる、それだけだ』


 確か手紙の代筆とかもしとったかな、と告げる老父に驚いた。自分達は物に触ることができない、つまり相談屋は幽霊では無いということになる。


『人間なんですか、その人』


 そうだな人間だぞ、俺等に近い存在だがな、と告げられ水を得た魚のようにテンションが上がる。ついつい癖で踊りだしてしまった事に後悔はしていない。


 テンションの上がり日本語がだいぶおかしくなった自分に老父が若干、いやかなり引いたような表情をしていたが自分はそんなことで止まりはしない。


 人間と話せる、このポイントが自分の好奇心をジャストヒット、大当たりしていた。


『連れて行ってください、相談屋さんに』


 生前より生き生きしているかも知れない、そんな予感がした。



 これが真っ白な幽霊を巡る奇怪な前日譚。


 幽霊が生きる世界を見つめるある青年のお話。


 はじまり、はじまり。



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