【飛び込んで来たモノ・・・】
泡沫の視界から突然、新垣が消えた・・・。
代わりに目の前に飛び込んで来たのは、いつも周りに笑顔を向けていた女が血を吐き、痛みに顔を歪める姿だった・・・。
・・・弥生・・・
俺に向けられていたはずの小刀は、弥生の背中から刺され、腹を貫通し、弥生の腹から刃先が突き出ていた・・・。
どこからか、幻像と千年が走って来る!
【千年】
「テメェー!コノヤロウー!!!」
幻像は、素早く印を結ぶ。
【幻像】
「・・・精神身体型忍術 "金縛り"」
すると新垣は、小刀を握りしめた状態で、体が硬直しているようだった・・・。
【新垣博司】
「な!なぜだ!体が動かない!!」
【幻像】
「千年!」
【千年】
「あぁ!」
幻像の後ろから、千年が飛び出す。
【千年】
「ただ、斬るだけじゃ、たりねぇー感電しながら首の飛ぶ痛みを味わいやがれ・・・。」
千年は、左手に刀を持ち、右手で印を結ぶ・・・。
【千年】
「気然気刀忍術・・・。落雷・・・。」
シュ、バーーーーーーーーーーーーン
一瞬の雷が、新垣の首を真っ直ぐに通過した・・・。
夜空を赤い血を吹き上げながら、一人の男の首が舞った・・・。
そして、血ならなくポタンッと首が地面へと落ちる。首を失った体もゆっくりと、地面へ倒れた・・・。
泡沫は、力なく崩れ落ちる弥生を抱き抱える・・・。弥生の腹部には、最期の力を振り絞って刺したであろう新垣博司の刀先が突き出ている・・・、
【泡沫】
「弥生・・・!お前、どうして・・・!!」
両眼から涙が溢れ、頬を伝って、自分を見上げる弥生の頬に落ちた。
荒い息の中、弥生は笑う・・・。
【弥生】
「・・・良いのよ。ここであなたが、あの人を殺せば、二度とあなたに笑顔が戻ることは無いって思ったから。昔はよく笑って、仲間思いだったあなたが、お母様の月夜さんが死んで、忍びとして生きる決意をし、任務に出るようになってから、笑顔が消えていった・・・。
誰よりも優しかったあなたは、敵を殺し、仲間が殺されて行くのを見る度に、心に深い傷を作っていたのよね・・・。」
弥生は、泡沫の頬に手をあてる。涙を流しながらも、弥生は笑う。
【弥生】
「あなたには・・・。ずっと・・・ずっと・・・優しい笑顔をしていて、欲しかったから・・・。あなたの笑った顔が、好きだったから・・・。」
その言葉を最後に弥生は長い眠りについた。両眼から涙が溢れ、頬を伝って、泡沫を見上げる弥生の頬に落ちた。
幻像と、千年はただただその光景を見守っていた・・・。
そして、この光景を見ている人物はまだいた・・・。その者達は、森の中に潜み、息を殺してその光景を見ていた。
【海】
「師走さん・・・。あの人が、師走さんの殺したいやつですか・・・?」
【師走】
「やれやれ・・・。ダメな男だね・・・。結局、女一人守れないなんて、父親と同じだ・・・。」
二人の忍びは、たまたま、他国に任務へと行った帰り道に、近江国と、甲賀国で戦をしているの噂があり偵察に来たのだ。その忍び達は、暫くその光景を見つめていたが、その後、森の中へ消えた。
その後、戦は終わった・・・。一角と蝮が近江の物資を押収することに成功したのだ。
あの日、弥生は甲賀から救護班として、怪我をした隊士がいたら、治療するためにあの場までやって来ていたそうだ。
森の中で部隊から隊士と二人で離れて行く、泡沫を見かけた所、あの現場に遭遇し、いてもたってもいられなくなったのだろう・・・。
救護班によって、すぐに治療をされ一命を弥生だったが、里に帰って来てからも目を覚まさなかった。あの日以降ずっと眠り続けたままだった・・・。
又、新垣博司は、近江国のスパイで、妻も赤ん坊の話も全くの嘘だったということが後で判明した・・・。
里に帰って来て、いつも座っていた岩の上に座る・・・。
皆は、弥生のいる部屋で弥生のことを見守っている・・・。
眠ってい、弥生を見て蝮は思った・・・。こうなると知っていたら、気持ちを打ち明けておくんだったなと・・・。ゆっくりと目を閉じると、一筋の涙が頬をつたった・・・。雨が降りだした・・・。冷たい雨だった・・・。
このままずっと雨にうたれていたいと思った・・・。
しかし、不意に雨があたらなくなった。
見上げれば、赤い傘がさしてある。後ろにいるのは・・・。
【千年】
「泡沫さん・・・まさか、死のうとしてるんじゃないでしょうね?」
【泡沫】
「・・・俺が、新垣博司を殺すことを躊躇っていなかったら、弥生はこうはなっていなかった・・・。目を覚まさないということは、死んでるいるのと同じだ・・・。俺は、あいつを殺した・・・。悪いな、お前の姉貴を奪っちまって・・・。」
二人の間に重い沈黙が落ちる・・・。聞こえて来るのは、雨の音ばかり・・・。
【千年】
「・・・弥生さんは、必ず、目を覚ましますよ・・・。だからへんなこと考えるなよ?アンタを殺すのは、俺だ・・・。」
そう言うと千年は、赤い傘を泡沫の肩にかけ、弥生の眠る病室へと戻って行った・・・。
その様子を、遠くで見守るは、紛れもない鵜飼だった・・・。




