【それぞれの旅立ち】
夜空を見上げながら、時雨は言う・・・。
【時雨】
「連・・・。ワタシは、師匠と共に暫くの間、修行の旅に出ようと思う・・・。」
【連雨】
「えっ・・・!?」
【時雨】
「ホタルとネネは、水森の里へと行き、最後の巫女修行に入る。兄上も、どこか宛があると言ってこの里を一度離れて修行すると言っていた・・・。」
兄ちゃんは、俺を見て言って来る。
【時雨】
「連雨・・・。お前はどうしたい・・・?」
兄ちゃんは、真っ直ぐに俺を見て、言ってきた・・・。
【連雨】
「お、俺は・・・。」
次の日・・・。
カァー!カァー!と朝から小波がうるさく騒ぎ立てている・・・。
【時雨】
「父上、母上、では、行って参ります・・・。」
時雨は、優しく笑う。玄関前で、卯月と五月雨そして、連雨が、それぞれの道を歩こうとする、4人の少年少女の見送りをしてくれる。
【連雨】
「兄ちゃん達・・・。気をつけな・・・。俺、皆がいない間・・・。頑張って弟達の面倒みるよ・・・。」
連雨は、寂しそうな笑顔を向ける・・・。
【時雨】
「連・・・。もし一緒に来たいなら・・・。」
時雨が、そう言おうとした時だった。連雨は顔を横に強く振って、明るく答える。
【連雨】
「俺、弟達のこと、守るって決めたんだ!だから、俺のことは気にしないで・・・。」
【時雨】
「そうか・・・。」
【小波】
「カァー!」
時雨の肩に止まる、小波が一声鳴いた。
【ホタル】
「連・・・。私とネネちゃんはちょくちょく、里に戻って来るからね・・・。」
【ネネ】
「うん!美味しいお団子、買って帰って来るわ・・・。」
【氷雨】
「手紙、書くからよ。返事かけよ、な?」
連雨は、うんと、明るく答えたのだった・・・。そんな様子を泡沫は、見守る。
連雨は、5人と1匹が見えなくなるまで、ずっと見送っていた・・・。
家の中に入れば、とても静かだった・・・。次平は、昨日五十嵐東十朗と、その妻、如月と共に清流の村へと帰った。そのため、部屋にいるのは、冷雨と、白雨のみ・・・。二人ともすやすやと眠っている・・・。
そこへ、卯月がやって来て、連雨に声をかける・・・。
【卯月】
「連雨!あなた、何やってるの!?」
卯月は、いきなり怒鳴ってきた。連雨は驚きつつも、言う。
【連雨】
「う、卯月様・・・!ふ、2人が起きてしまいますよ!」
連雨は、必死に言う。
【卯月】
「良いのよ!起きたら、私がそっと寝かしつけるから!いい?連雨。近くにいるってだけが護るってことじゃないのよ!今のあなたに、この子達は守れない。だって、あなた、弱すぎるもの!今のあなたは、勇敢な戦士でも、良いお兄ちゃんでもないわ!ただの保父さんよ!」
卯月は、するどい口調で言った後、優しく連雨を抱きしめた。
【卯月】
「連雨・・・あなたも、そして、冷雨も私の大切な息子よ・・・。だから、あなたはお兄ちゃんと一緒に、強くなってこの里に帰って来なさい。そして、私達を護って・・・。それまで、母さんと父さんが、冷雨と白雨のことを護ってるから・・・。」
【連雨】
「母・・・さん・・・。」
連雨は、ゆっくりと卯月から離れると、元気よく言った。
【連雨】
「母さん、ありがとう!俺、強くなって、帰って来るから!兄ちゃん達と一緒に!だからそれまで、2人のこと・・・よろしく!」
すると、卯月は笑う。
【卯月】
「はいはい!体には気をつけて、いってらっしゃい!」
連雨は、外へと飛び出した。走って走って森の中を進む2人の背中、すぐに追いついた。
【連雨】
「時雨のにぃーちゃん!」
振り向く時雨は、狐の面をつけていた・・・。
【時雨】
「連雨!お前・・・!」
【連雨】
「兄ちゃん、俺も連れてってくれよ!」
連雨は真剣な眼差しで時雨を見つめた。時雨は、すぐ前にいる師匠に言う。
【時雨】
「師匠・・・良いですよね?」
狼の面をつけた泡沫は、こちらを振り返らないで、一言言、った。
【泡沫】
「お前の弟子だ・・・。お前の好きなようにしろ・・・。」
こうして、泡沫、時雨、小波、そして連雨は、修行の旅へと出た・・・。
暫く、3人で森を進むなかで、泡沫の面を見た時雨は、ふと不思議に思う・・・。空蝉の話では、泡沫は、昔、ずっとこの面をつけていることが多かったと聞く・・・。なんで、つけていたのだろうか?身分がばれないようにと言うのであれば、ずっとつけているはず、しかし、空蝉さんと師匠の会話の中で、空蝉さんは、いつの日か当然しなくなったと言っていて・・・。師匠はそれに対して、する必要かなくなったからと言っていた・・・。
時雨は、泡沫に問いかける。
【時雨】
「・・・師匠。師匠はなぜ、ずっと面をつけていたのに、どうして当然しなくなったのですか?」
すると、泡沫は立ち止まる。
それにつられて、時雨と連雨も立ち止まった。
泡沫は、ゆっくりと振り向くと、狼の面に手をかけたのだった・・・。
・・・1週間前・・・
森の中を歩く4人の人影・・・。
【千年】
「お前・・・。泡沫に何されたんだ?・・・恨んでるのか?」
【一平】
「アンタには、関係ないことだ・・・。」
【千年】
「ふぅーん。まぁ、良いけど・・・。俺の修行は、キツいから、覚悟しとけよ?泡みたいな、生易し修行は、させねぇーから。」
【一平】
「えーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!」
一平は、森中に響き渡るようか声を上げた。近くを歩く、一角、蝮、そして千年は耳をふさぐ。
【千年】
「テメェー何しやがる!鼓膜破る気か!コノヤロウ!」
【一平】
「し、師匠の修行が、生ぬるい・・・?だだだたっったら・・・えぇ・・・?だったら、千年の修行って一体・・・。」
一平は、ガタガタと体を震わせた。それを見ていた一角が呆れた顔をして言う・・・。
【一角】
「千年・・・。泡沫の修行は、ちゃんとやれば中々にキツい藻のだぞ・・・?あいつの部隊の隊員達は、いつもヒーヒー言っていた。お前と違って、ろくに修行もしないで物凄い早さで強くなった化け物と普通の奴等を一緒にするな・・・。」
【千年】
「なーに言ってるんですか?一角・・・。俺はちゃんと影で修行しましたぜ?いかにして、あいつに気づかれないように、あいつの羽織を雑巾に変えるかとか、どこの場所が、あいつの大切にしてた刀を隠すのに適しているかとか、しっかり調べ上げた上で、ことを起こしてましたぜ・・・。」
【一平】
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」
一平は、何も言えなくなる。自分の知らない泡沫の姿がそこにあった・・・。自分達の知る泡沫は、修行となれば、どこかいつも冷淡なところが見え隠れする厳しい男だった・・・。
しかし、同じ師弟という間柄でも、人が変わればここまで、関係性が違うものなのだろうか・・・。
そんなことを思っているうちに、山の中に小さな村が現れる。村の中は、とても静かで人の気配がながった・・・。しかし、いくつかあるうちの家の一軒に俺達は行った・・・。
玄関先まで行くと、千年は、振り返って言う。
【千年】
「はーい。じゃあ今回は俺の番だな・・・。おい、五十嵐。お前、今すぐしゃがまないと首が飛ぶぜ?」
首が飛ぶという言葉に、一平は、とっさにその場に伏せる。一角と、蝮もその場にしゃがみこんだ。
3人がしゃがむのを確認して、千年は玄関の戸を開ける。
すると、戸を開けた瞬間、おびただしい数のクナイと手裏剣が、飛んできた。千年は、それを背から抜いた刀一本で全て、打ち落とす。
キキキキキキキキキキーン!!!!!
金属と金属がぶつかる音が、鳴り響くこと約1分。不意にその音は止んだ。千年、は忍び刀を背へと戻す・・・。
【千年】
「ただいま・・・。様子はどうだ・・・?」
千年は中にいる誰かに、声をかけた・・・。一平は、千年の後ろから、家の中を覗きこむと、誰かが布団の上で眠っているようだった・・・。
奥の部屋から誰かがこちらへ歩いて来る・・・。そいつが近づいて来て分かった・・・。そいつは狼の面をしていたのだ・・・。一平は、体が硬直した・・・。
その少年は言った。
【???】
「相変わらず、ずっと眠り続けているよ。」
と・・・。そして、笑顔で聞いた・・・。
【???】
「それよりも、兄さんは見つかった・・・?」
千年は、答える。
【千年】
「いや、でもあいつの弟子なら、連れて来たぜ・・・。」
ーーーー幻像ーーーーー
狼の面をとった少年は、ニコニコと笑ったのだった・・・。




