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【時雨の里】  作者: 有馬波瑠海
第12章 【泡沫の一番弟子編】
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【それぞれの旅立ち】

 夜空を見上げながら、時雨(しぐれ)は言う・・・。


時雨(しぐれ)

「連・・・。ワタシは、師匠と共に暫くの間、修行の旅に出ようと思う・・・。」


連雨(れんう)

「えっ・・・!?」


時雨(しぐれ)

「ホタルとネネは、水森の里へと行き、最後の巫女修行に入る。兄上も、どこか宛があると言ってこの里を一度離れて修行すると言っていた・・・。」


 兄ちゃんは、俺を見て言って来る。


時雨(しぐれ)

連雨(れんう)・・・。お前はどうしたい・・・?」


 兄ちゃんは、真っ直ぐに俺を見て、言ってきた・・・。


連雨(れんう)

「お、俺は・・・。」





        次の日・・・。




 カァー!カァー!と朝から小波(さざなみ)がうるさく騒ぎ立てている・・・。


時雨(しぐれ)

「父上、母上、では、行って参ります・・・。」


 時雨(しぐれ)は、優しく笑う。玄関前で、卯月(うづき)と五月雨そして、連雨(れんう)が、それぞれの道を歩こうとする、4人の少年少女の見送りをしてくれる。


連雨(れんう)

「兄ちゃん達・・・。気をつけな・・・。俺、皆がいない間・・・。頑張って弟達の面倒みるよ・・・。」


 連雨(れんう)は、寂しそうな笑顔を向ける・・・。


時雨(しぐれ)

「連・・・。もし一緒に来たいなら・・・。」


 時雨(しぐれ)が、そう言おうとした時だった。連雨(れんう)は顔を横に強く振って、明るく答える。


連雨(れんう)

「俺、弟達のこと、守るって決めたんだ!だから、俺のことは気にしないで・・・。」



時雨(しぐれ)

「そうか・・・。」


小波(さざなみ)

「カァー!」


 時雨(しぐれ)の肩に止まる、小波(さざなみ)が一声鳴いた。


【ホタル】

「連・・・。私とネネちゃんはちょくちょく、里に戻って来るからね・・・。」


【ネネ】

「うん!美味しいお団子、買って帰って来るわ・・・。」


氷雨(ひさめ)

「手紙、書くからよ。返事かけよ、な?」


 連雨(れんう)は、うんと、明るく答えたのだった・・・。そんな様子を泡沫(うたかた)は、見守る。


 連雨(れんう)は、5人と1匹が見えなくなるまで、ずっと見送っていた・・・。


 家の中に入れば、とても静かだった・・・。次平(じっぺい)は、昨日五十嵐(いがらし)東十朗(とうじゅうろう)と、その妻、如月(きさらぎ)と共に清流(せいりゅう)の村へと帰った。そのため、部屋にいるのは、冷雨(れいう)と、白雨(はくう)のみ・・・。二人ともすやすやと眠っている・・・。


 そこへ、卯月(うづき)がやって来て、連雨(れんう)に声をかける・・・。


卯月(うづき)

連雨(れんう)!あなた、何やってるの!?」


 卯月(うづき)は、いきなり怒鳴ってきた。連雨(れんう)は驚きつつも、言う。


連雨(れんう)

「う、卯月(うづき)様・・・!ふ、2人が起きてしまいますよ!」


 連雨(れんう)は、必死に言う。


卯月(うづき)

「良いのよ!起きたら、私がそっと寝かしつけるから!いい?連雨(れんう)。近くにいるってだけが護るってことじゃないのよ!今のあなたに、この子達は守れない。だって、あなた、弱すぎるもの!今のあなたは、勇敢な戦士でも、良いお兄ちゃんでもないわ!ただの保父さんよ!」


 卯月(うづき)は、するどい口調で言った後、優しく連雨(れんう)を抱きしめた。


卯月(うづき)

連雨(れんう)・・・あなたも、そして、冷雨(れいう)も私の大切な息子よ・・・。だから、あなたはお兄ちゃんと一緒に、強くなってこの里に帰って来なさい。そして、私達を護って・・・。それまで、母さんと父さんが、冷雨(れいう)白雨(はくう)のことを護ってるから・・・。」


連雨(れんう)

「母・・・さん・・・。」


 連雨(れんう)は、ゆっくりと卯月(うづき)から離れると、元気よく言った。


連雨(れんう)

「母さん、ありがとう!俺、強くなって、帰って来るから!兄ちゃん達と一緒に!だからそれまで、2人のこと・・・よろしく!」


すると、卯月(うづき)は笑う。


卯月(うづき)

「はいはい!体には気をつけて、いってらっしゃい!」


 連雨(れんう)は、外へと飛び出した。走って走って森の中を進む2人の背中、すぐに追いついた。


連雨(れんう)

時雨(しぐれ)のにぃーちゃん!」


 振り向く時雨(しぐれ)は、狐の面をつけていた・・・。


時雨(しぐれ)

連雨(れんう)!お前・・・!」


連雨(れんう)

「兄ちゃん、俺も連れてってくれよ!」


 連雨(れんう)は真剣な眼差しで時雨(しぐれ)を見つめた。時雨(しぐれ)は、すぐ前にいる師匠に言う。


時雨(しぐれ)】 

「師匠・・・良いですよね?」


 狼の面をつけた泡沫(うたかた)は、こちらを振り返らないで、一言言、った。


泡沫(うたかた)

「お前の弟子だ・・・。お前の好きなようにしろ・・・。」


 こうして、泡沫(うたかた)時雨(しぐれ)小波(さざなみ)、そして連雨(れんう)は、修行の旅へと出た・・・。



 暫く、3人で森を進むなかで、泡沫(うたかた)の面を見た時雨(しぐれ)は、ふと不思議に思う・・・。空蝉(うつせみ)の話では、泡沫(うたかた)は、昔、ずっとこの面をつけていることが多かったと聞く・・・。なんで、つけていたのだろうか?身分がばれないようにと言うのであれば、ずっとつけているはず、しかし、空蝉(うつせみ)さんと師匠の会話の中で、空蝉(うつせみ)さんは、いつの日か当然しなくなったと言っていて・・・。師匠はそれに対して、する必要かなくなったからと言っていた・・・。


 時雨(しぐれ)は、泡沫(うたかた)に問いかける。


時雨(しぐれ)

「・・・師匠。師匠はなぜ、ずっと面をつけていたのに、どうして当然しなくなったのですか?」


 すると、泡沫(うたかた)は立ち止まる。


 それにつられて、時雨(しぐれ)連雨(れんう)も立ち止まった。


 泡沫(うたかた)は、ゆっくりと振り向くと、狼の面に手をかけたのだった・・・。













      ・・・1週間前・・・


森の中を歩く4人の人影・・・。


千年(ちとせ)

「お前・・・。泡沫(うたかた)に何されたんだ?・・・恨んでるのか?」


一平(いっぺい)

「アンタには、関係ないことだ・・・。」


千年(ちとせ)

「ふぅーん。まぁ、良いけど・・・。俺の修行は、キツいから、覚悟しとけよ?泡みたいな、生易し修行は、させねぇーから。」


 

一平(いっぺい)

「えーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!」


 一平(いっぺい)は、森中に響き渡るようか声を上げた。近くを歩く、一角(いっかく)、蝮、そして千年(ちとせ)は耳をふさぐ。


千年(ちとせ)

「テメェー何しやがる!鼓膜破る気か!コノヤロウ!」


一平(いっぺい)

「し、師匠の修行が、生ぬるい・・・?だだだたっったら・・・えぇ・・・?だったら、千年(ちとせ)の修行って一体・・・。」


 一平(いっぺい)は、ガタガタと体を震わせた。それを見ていた一角(いっかく)が呆れた顔をして言う・・・。


一角(いっかく)

千年(ちとせ)・・・。泡沫(うたかた)の修行は、ちゃんとやれば中々にキツい藻のだぞ・・・?あいつの部隊の隊員達は、いつもヒーヒー言っていた。お前と違って、ろくに修行もしないで物凄い早さで強くなった化け物と普通の奴等を一緒にするな・・・。」


千年(ちとせ)

「なーに言ってるんですか?一角(いっかく)・・・。俺はちゃんと影で修行しましたぜ?いかにして、あいつに気づかれないように、あいつの羽織を雑巾に変えるかとか、どこの場所が、あいつの大切にしてた刀を隠すのに適しているかとか、しっかり調べ上げた上で、ことを起こしてましたぜ・・・。」


一平(いっぺい)】 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」


 一平(いっぺい)は、何も言えなくなる。自分の知らない泡沫(うたかた)の姿がそこにあった・・・。自分達の知る泡沫(うたかた)は、修行となれば、どこかいつも冷淡なところが見え隠れする厳しい男だった・・・。


 しかし、同じ師弟という間柄でも、人が変わればここまで、関係性が違うものなのだろうか・・・。


 そんなことを思っているうちに、山の中に小さな村が現れる。村の中は、とても静かで人の気配がながった・・・。しかし、いくつかあるうちの家の一軒に俺達は行った・・・。


 玄関先まで行くと、千年(ちとせ)は、振り返って言う。


千年(ちとせ)

「はーい。じゃあ今回は俺の番だな・・・。おい、五十嵐(いがらし)。お前、今すぐしゃがまないと首が飛ぶぜ?」


 首が飛ぶという言葉に、一平(いっぺい)は、とっさにその場に伏せる。一角(いっかく)と、蝮もその場にしゃがみこんだ。


 3人がしゃがむのを確認して、千年(ちとせ)は玄関の戸を開ける。


 すると、戸を開けた瞬間、おびただしい数のクナイと手裏剣が、飛んできた。千年(ちとせ)は、それを背から抜いた刀一本で全て、打ち落とす。


 キキキキキキキキキキーン!!!!!


 金属と金属がぶつかる音が、鳴り響くこと約1分。不意にその音は止んだ。千年(ちとせ)、は忍び刀を背へと戻す・・・。


千年(ちとせ)

「ただいま・・・。様子はどうだ・・・?」


 千年(ちとせ)は中にいる誰かに、声をかけた・・・。一平(いっぺい)は、千年(ちとせ)の後ろから、家の中を覗きこむと、誰かが布団の上で眠っているようだった・・・。


 奥の部屋から誰かがこちらへ歩いて来る・・・。そいつが近づいて来て分かった・・・。そいつは狼の面をしていたのだ・・・。一平(いっぺい)は、体が硬直した・・・。


 その少年は言った。


【???】

「相変わらず、ずっと眠り続けているよ。」


 と・・・。そして、笑顔で聞いた・・・。


【???】

「それよりも、兄さんは見つかった・・・?」

 

 千年(ちとせ)は、答える。


千年(ちとせ)

「いや、でもあいつの弟子なら、連れて来たぜ・・・。」




   ーーーー幻像(げんぞう)ーーーーー


 

 狼の面をとった少年は、ニコニコと笑ったのだった・・・。

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