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【時雨の里】  作者: 有馬波瑠海
第12章 【泡沫の一番弟子編】
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【あいつを連れ戻す・・・。】

 時雨(しぐれ)は、夕方そっと4人の子供達が眠る部屋へとやって来た。部屋の中に入れば、丁度、連雨(れんう)が目を覚ました所だった・・・。


 連雨(れんう)は目を(こす)りながら、まだ半分夢の中と言ったところだろうか・・・。


時雨(しぐれ)

連雨(れんう)、連日、弟達の面倒を見させてすまないな・・・。ホタルと、兄上が面倒を、見てくれるみたいだから、ちょっと外に出ないか?」


 時雨(しぐれ)は、そう言うと気を使って大丈夫だと言う連雨(れんう)を少し強引に外へと連れ出した。


 連雨(れんう)と共に里の中を歩く・・・。辺りはすっかり、暗くなって来ていたため、どの家でも明かりが灯されて来ていていた・・・。家の中からは、楽しげな声が響く・・・。空にはどこまでも続く星空が広がり、月が美しく輝いていた・・・。


 それかろ暫く歩くと、そこは青々と生い茂る麦畑だった・・・。その麦畑の中で時雨(しぐれ)は寝そべる。連雨(れんう)はそんな時雨(しぐれ)の様子を見て、見よう見まねで自分も寝そべる。すると視界に広がっているのは、大きな大きな夜空だった・・・。白くキラキラと光る星に、夜空を時々飛んでいる野鳥は、巣に帰るのを急いでいるようだった・・・。


連雨(れんう)

「うわぁー!綺麗だなぁー!」


 連雨(れんう)は声を弾ませて言った。


時雨(しぐれ)

「この麦畑は、ワタシが連雨(れんう)と同じ年の頃、皆とよく来たんだ・・・。」


 連雨(れんう)は、考える。皆とは・・・氷雨(ひさめ)兄ちゃんと、ホタル姉ちゃんと、オト姉ちゃんと、それから・・・。


※オト姉ちゃん→ネネのこと



連雨(れんう)

「・・・皆は、どんな子供だったの・・・?」


 連雨(れんう)は、時雨(しぐれ)に質問する。


時雨(しぐれ)

「今と何も変わらないと・・・。ホタルは努力家で、ネネは姉御肌で、兄上はお調子もので・・・。それから一平(いっぺい)は、イタズラが好きたった・・・。兄上は、よく一平(いっぺい)にイタズラを仕掛けられてキレて怒っていたな・・・。でも、皆、心優しい子供達だった・・・。今だって、それは変わらない・・・。変わらないんだ・・・。」











  時雨(しぐれ)は、ゆっくりと頭を上げると言った・・・。


時雨(しぐれ)

「・・・慎んで承ります。・・・」


 東十朗(とうじゅうろう)は、ホッとしたような面持ちになる。しかし、時雨(しぐれ)は、こう続けた。


時雨(しぐれ)

「しかし、条件がございます。」


 周りは騒然とする・・・。東十朗(とうじゅうろう)は、不思議な顔をして、条件とは、何か?と時雨(しぐれ)に聞いた。


時雨(しぐれ)

(おさ)継承の年齢は、17才になった年の七夕。つまり4年後の七夕までに、一平(いっぺい)をこの里に連れ戻します・・・。もし、ワタシが一平(いっぺい)を連れ戻すことができたら、この話は無かったことにし、許嫁の件も、威風(いふう)の名を受け継ぐことの件も一平(いっぺい)のままにしてください・・・。」


東十朗(とうじゅうろう)

「しかし、一平(いっぺい)は、これから人を殺すと言っているんだぞ?人殺しを東の里の(おさ)にするわけにはいかない・・・。」


 すると、時雨(しぐれ)は、きっぱり言い切る。


時雨(しぐれ)

一平(いっぺい)は、そんなことしませんよ。絶対に。この条件を飲んでもらえないなら、この話、ワタシは断らさせてもらいます・・・。」


 真剣な眼差しで、東十朗(とうじゅうろう)を見る。すると、東十朗(とうじゅうろう)は言った。


東十朗(とうじゅうろう)

「よかろう・・・。しかし、あいつがこの里へ戻って来たところで、一平(いっぺい)が人殺しになっていたら、この話は無効とする。時雨(しぐれ)、お前にこの里の(おさ)となってもらう・・・。良いか?」


 時雨(しぐれ)は、黙って頷いたのだった・・・。一週間にも及んだ話し合いはこうして幕を閉じた・・・。


 その後部屋には、ホタル、ネネ、氷雨(ひさめ)、そして、泡沫が残る・・・。時雨(しぐれ)は、まずネネと向き合って言う・・・。


時雨(しぐれ)

「ネネ・・・。すまなかったね。こんな事になってしまって。しかし、こうしなければ君はどこの誰と結婚させられるか分かったもんじゃなかったし、一平(いっぺい)以外のだれが、威風(いふう)になれる?君なら分かると思うけど、一平(いっぺい)は、この東の里の(おさ)になる男なんだ・・・。ワタシではその代わりは務まらない。必ず、一平(いっぺい)を連れ戻すから、大丈夫だよ・・・。」


 ネネは、泣きながら、うん。と頷いた・・・。ホタルと、心のどこかで安心している自分がいた・・・。安心・・・してしまった。


 きっと、時雨(しぐれ)様なら一平(いっぺい)様を連れ戻すだろう・・・。そう、必ず・・・彼はそういう人だ・・・。


【ネネ】

「ありがとう、時雨(しぐれ)様。でも、アタシも一平(いっぺい)様を探すわ・・・。」


 あの人はアタシに言った・・・。もし、自分が、道を踏み外したら、アタシに止めて欲しいって、そう言った・・・。きっと、一平(いっぺい)様はこうなるんじゃないかって、思ってたのだろう・・・。


 ならば、あの人がどこにいたって、止めに行く・・・。


【ホタル】

「私も、探すの手伝うわ!」


氷雨(ひさめ)

「もちろん!俺もだぜ!あのバカ猿をなんとしてもこの里に連れ戻すぞ。」


 時雨(しぐれ)は、黙って頷いた・・・。


時雨(しぐれ)

「師匠・・・。甲賀(こうが)の忍びは、どこに潜伏しているんですか・・・?」


【泡沫】

甲賀(こうが)の忍びは、基本的に1つ場所に留まらない。沢山ある隠れ里を転々としている・・・。探すのは、骨が折れるし、今のお前達の力量じゃ返り討ちにあって終わりだな・・・。俺もついて行くとしても、何千といる忍びの前では、あまりにも多勢に無勢だ・・・。安心しろ・・・。時間はある。なぜなら、一平(いっぺい)は、まだ未熟者だ・・・。そして、一平(いっぺい)を連れていった奴は、一角さんに、蝮に、千年(ちとせ)だ・・・。あの中で、七人集(ななにんしゅう)のまとめ役の一角さんはかなりの人格者だ・・・。一平(いっぺい)がちゃんと忍術を会得するまでは、人殺しなんてさせないというか、里からも出さないだろうな・・・。あの人は、死ぬと分かっていながら、部下を戦地に送るようなことはしない人だ・・・。どんなに少なく見積もっても、後2年は、人殺しにはならないだろう・・・。」


氷雨(ひさめ)

「じゃあ、今の俺達ができることって・・・。」


時雨(しぐれ)

「強くなること・・・。」


【泡沫】

「あぁ・・・。その通りだ・・・。」




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