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【時雨の里】  作者: 有馬波瑠海
第12章 【泡沫の一番弟子編】
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【里を抜けた少年】

 一角(いっかく)は立ち上がると、術を解いた・・・。一平達を囲んでいた鳥籠(とりかご)が一瞬にして消えた・・・。一角(いっかく)は、一平を見ると言った。


一角(いっかく)

「それで・・・お前はどうするんだ?一緒に、来るのか・・・?それとも、そいつらと一緒に帰るのか・・・?」


 目の前に渡された選択肢は二つ・・・。コイツらと共に、東の里に帰るか、それとも目の前にいる甲賀の忍びと共に行くか・・・。


 ここで、東の里に帰れば、皆でまたあの小屋で修行をしつつ、様々な場所に任務に行く生活へと戻る・・・。最近では、全員が揃うことは少なくなったものの、それでも皆が揃えば、小屋の中では笑い声が絶えない幸せな日々があった・・・。


 でも、もう・・・あの生活には、戻れない・・・。


 一度、抱いてしまったこの疑念は、払拭するまではもう、あの小屋で自分が、笑うことはないだろう・・・。


 それにもし、師匠が二人を殺した犯人の一人だったら、オイラは、きっと師匠を殺すだろう・・・。あいつらの目の前で、あいつらの大切な師を殺すことになる・・・。


 一平は、何も言わず立ち上がった・・・。







 ホタルとネネは、東の里に帰える途中にある小さな村にいた・・・。その村にあるお団子屋さんで、お茶を飲みながらホタルとネネは休憩している・・・。とても、小さな団子屋さんだった・・・。しかし、出るお茶も、お団子もとても美味しく、自然とそれを食べる二人の少女を笑顔にした・・・。お茶を(すす)りながらホタルはネネに聞く。


【ホタル】

「ネネちゃん・・・。ここのお団子がおいしいんだって。皆に買っていってあげようか・・・?」


 ホタルは、そうネネに言うと・・・


【ネネ】

「そうだね!一平様、みたらし団子が好きだから、ちょっと多めに買っていこうかな・・・。」


 ネネは、ニコニコと楽しそうに笑った。


【ホタル】

「よく、ご存じですねぇ・・・。」


 ホタルは、含みのある言い方をした・・・。ネネは、顔を赤くしながら、「もう!」と言うと、ホタルは、「ごめんね。」と言って、二人で笑う・・・。











 一平は立ち上がると、隣にいた葦荒に声をかける・・・。


【一平】

「葦荒さん・・・。伝言を頼みます・・・。」




 皆、ごめん・・・・・・。


 オイラには、ずっと殺さないといけない奴等がいたんだ・・・。


 そいつらは、オイラから兄ちゃんと、姉ちゃんを奪った奴等だ・・・。


 いつか、必ず殺してやるって、ずっと思ってた・・・。


 でも、お前達と一緒に過ごして行くうちに、少しずつだけど、そんな気持ちがどこかへ消えていくような気がした・・・。


 でも、結局・・・。この気持ちは、あいつらを殺すまでは、消えてはくれないみたいだ・・・。


 俺は、あいつらを殺しに行く・・・。何年経っても、何十年経っても必ずあいつらを見つけ出して、殺す・・・。例え、人殺しに成り下がっても、俺は、兄妹の(かたき)をとる・・・。

 

 だから、俺は、東の里には戻らない・・・。永遠に・・・。


 さようなら・・・。お前達との暮らしは、スゲーあったかくて、本当に、楽しかった・・・。


 ・・・ネネ・・・。ごめん・・・。許してくれなんて・・・言わない。・・・許して欲しいとも・・・思わない・・・。これから殺人鬼になる最悪な俺のことは、とっとと忘れて、幸せにかなってくれ・・・。




 










 !?!?!?!?!?!?!?!?!?!?


 突然、驚いたように後ろを振り向いたネネに、ホタルは声をかける・・・。


【ホタル】

「ネネちゃん、どうかしたの・・・?」


 ネネは、辺りをキョロキョロしながら言う。


【ネネ】

「なんか今、一平様の声がしたような・・・。」


 周りには、自分達以外には客はいなかった・・・。


 








   ううん、なんでもない・・・。












ザーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 滝のような大雨が降る・・・。昔から、里では、悪いことが起きるとこうして、空を真っ黒に染めた、黒い雨が降るのである・・・。風は、(うな)り声を上げ、雷は大きな音を立てて地を揺らす・・・。


  ゴロロロロロロロ! ヒューーーヒューーー


 

 ここは、東の里・・・。本流(ほんりゅう)の村、東五月雨の住む家の中・・・。東の長、雲海(うんかい)威風(いふう)に二人の少女が呼び出された。目の前に座る雲海(うんかい)威風(いふう)は、いつも会う度に話す時雨と氷雨の父、東五月雨でも、少年の父、五十嵐東十朗では無かった・・・。


 それは紛れもなく、里をおさめる二人の長の姿だった・・・。


 2人の少女達は、真っ暗な部屋の中で、その二人の長から、一人の少年が里抜けをした事実を知らされた・・・。



 一人の少女は、驚きのあまり言葉が出てこない・・・。もう一人の少女は、その場に崩れ、泣き叫んだ・・・。泣き崩れた少女に周りの誰も、声をかけることができない・・・。


 時雨も氷雨も顔を上げられず、顔を伏せたまま拳を握りしめていた・・・。後ろでは、泡沫が目を伏せたまま、一言も発っしない。


 部屋に入って来られず、廊下で声を殺してなく、少年の母、如月・・・。廊下で姉が泣いていると分かっていても、声をかけることができない部屋の隅で座る時雨と氷雨の母、卯月・・・。


 その日・・・。東の里から一人の少年が消えた・・・。

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