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【時雨の里】  作者: 有馬波瑠海
第10章【幽霊城の編】
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【 動機 】

 部屋のすみに立つ、女の人。その人は、舞子の格好をし、悲しそうな涙を流していた。


 一体、あの人は・・・。目を開けると朝だった。事件が起きるまで待機していた部屋に寝かされていた。部屋中を見渡すと、壁にもたれた氷雨と、一平の姿が目に止まった。


【時雨】

「二人とも、どうしたんだ?」


 時雨が問いかけると、氷雨はゆっくりと顔をあげ、時雨の質問には答えず、時雨に聞く。


【氷雨】

「時雨、お前、昨日あの部屋で何を見たんだ?」


 時雨は、二人に昨日見た、女の人の話をした。


【氷雨】

「そうか。時雨、お前には。その女の人が見えていたんだな。昨日の葦荒って人が言ってた。幽霊ってのは気の固まりなんだと。だから、気を使う忍術を使える人には、その姿が見えたんだ。」


【時雨】

「きっと、この城には何かあるんだ。あの女性のことを調べなくてはいけない。そうだろう?二人とも!?」


【氷雨】

「あ、あぁ。そうだな。」


【一平】

「よし、じゃあ、情報収集に行くか?」


 一平はそう言うが、二人の心は今ここにあらずと、いった状態だった。氷雨は、葦荒に言われたことが心に引っ掛かっており、一平は一平で泡沫の一番弟子との取引をどうしたものかで悩んでいた。しかし、今は時雨を前にして、今は任務に集中しろと己に言い聞かせた。


 その後、三人は城中を人間から舞子の姿をした女性の話を聞き回った。すると、3年ほど前に、この城で働いていた舞子がある日、この城の城主が代々受け継ぐ大切な羽織をズタズタに切り裂くという事件を起こした。


 しかし、その犯人が舞子であるということはすぐに発覚し、甲賀の忍びである泡沫によって暗殺されたという話を聞く。


【時雨】

「師匠が、舞子を殺した?そんな、はずがない!」


 時雨が強くそう言うと、氷雨もうんうんと力強く頷いていた。しかし、一平は、頷けなかった。


【一平】

「・・・・・・。」


 師匠が舞子を殺すはずがない・・・。本当にそうだろうか・・・?もし、仮に師匠がなんの罪もない幼かった自分の兄妹を殺していたとしたら、舞子を殺すことなんて、造作もないことなとではないだろうか・・・?


【時雨】

「しかし、なぜ、舞子は羽織りをズタズタにしたんだろう?」


【氷雨】

「城主に、嫌がらせでもされていたのかな?」



【伝三】

「そのことについては、私が説明致しましょう。」


 と、近くにいた伝三が話をしてくれる。伝三の話によれば、舞子は、城主に恋心を抱いていたのだが、清姫と女性との縁談が決まるやいなや、城主を暗殺しようと、城主の部屋に来たのだが、その時、城主は他国へと足を運んでおり、いなかった。


 舞子は悔しさのあまり歴代城主が羽織っている大切な羽織りをズタズタに切り裂いたそうだ。その証拠に現場には、舞子が使っていた扇子が落ちていた。


【氷雨】

「ってことは、舞子の逆恨みか!?幽霊が相手なら、オレ達がどうこうするよりも、里で巫女やってる、ホタルやネネ、ボタン様に来てもらった方が良いんじゃないかな?」


【一平】

「この話を聞く限りだと、そんな感じだな。」


【氷雨】

「時雨、お前はどう思う?」


【時雨】

「この話、こんなにも簡単な話なんだろうか・・・?」


 時雨は、泡沫の言葉を思いだす。


・・・見えぬものを見、ねじ曲げられたものを本来あるべき姿に戻して来い。・・・


 あの言葉の意味が分からない・・・。


 時雨は、この一件がそう簡単には片付かない案件だと言うことを感じ、ほんの一瞬物思いにふける。


 そこへ、城の女中が三人を呼びに来た。昼間は、事件が起きないからと、城主から部屋で休むようにとの言伝てを頼まれたそうだった。


 部屋に戻ると、一晩中寝ずに見張りをしていた氷雨と一平は、壁にもたれるとぐっすり眠ってしまった。


 時雨は、二人に布団をかけると、こっそり、部屋を抜け出した。そして、城で働く人に当時の舞子の様子を聞いて回った。すると、どの人から聞いてもその舞子は、心優しく穏やかな人柄で、とても、城主を殺そうとするような人ではなかったという話が次々に挙がった。


 舞子は、本当に悪者なのだろうか?そして、舞子が犯人では無かったのなら、羽織りをズタズタにした犯人はだれなのだろうか?すると・・・。


 後ろに、人の気配。時雨は木刀の柄に手をかけた。そして・・・。


【影丸】

「ふん。よく気がついたな。」


 振り向けば、風魔の忍、影丸がいた。


【時雨】

「はい。あなたの気配は、もう覚えましたから。」


【影丸】

「舞子のことについて、何か分かったか?」


 時雨は、自分が知り得た情報を包み隠さず影丸に話した。すると、影丸は呆れた様子で言う。


【影丸】

「お前は、バカだな。忍にとって情報は、命よりも大切なものなのに、それを易々と話しちまうなんてよ。」


【時雨】

「あなたは、共にこの仕事を依頼された仲間だから、話しても、問題ないでしょう?」


 そう言って時雨は、影丸に笑って見せる。


【影丸】

「まだ、そんなことを・・・。」


 呆れたように影丸は、言う。


【影丸】

「まぁ、良い。俺達は、お前のことを仲間とは思わない。だがな。東の忍に恩を売るのも尺に触る。だから、良いこと教えてやる。この城の奥方様は、当時この城に嫁いだ時、相当、舞子のことを恨んでいやがった。城主が自分のことそっちのけで舞子と逢引てるのが、相当気に入らなかったんだろうよ。舞子の着ている着物に墨をぶちまけたり、そうとう嫌がらせをしてたみたいだぜ・・・」


【時雨】

「と、言うことは・・・。」


 影丸は、ニヤリと笑った。


【影丸】

「そう・・・。奥方様には、舞子を殺す動機があった。しかし自分では殺す勇気はない。そこで、戦火の狼に舞子の暗殺の依頼し、舞子は狼に食い殺されたってわけだ。側にはあの戦火の狼がいたわけだしな。」


【時雨】

「師匠が、近くに?」


【影丸】

「あぁ。そうさ。」

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