【背後に忍び寄った者の正体】
一体どういうことだ?何かがおかしい。何かが・・・。三階にワタシ達は、同じ部屋であるこの部屋に音が鳴って、すぐにこの部屋に来た。ワタシと兄上がこの部屋に来るまでの廊下は一方通行。しかし、この部屋に来るまで、誰ともすれ違っていない。一体、誰がこの部屋を荒らしたというのであろう・・・と、時雨は、そう考えていた。
【???】
「なんだい!?お前達には、見えないのかい?てっきり、泡沫の弟子なら、もう少し出来がいいと思ったが・・・。」
その声は、三人のすぐ後ろから聞こえて来た。まったく気配もなく近づいたその男は、右目を隠し、黒くうねった髪を持つ、20代前半くらいの男だった。
【時雨】
(まったく、気配に気がつかなかった。それに、なぜ師匠のことを・・・この人は一体・・・?)
【葦荒修造】
「俺は、葦荒修造。風魔の上忍だ。さぁ、戦火の狼の弟子達よ、この部屋を荒らした犯人を見極めるが良い。」
【時雨】
「・・・見極める!?」
その時、時雨は、泡沫の言葉を思い出した。
・・・見えぬ物を見、ねじ曲げられた物を本来あるべき姿に戻す・・・。
手で印を結び、目に気を集中させる・・・そして、この世ではなく、この世の狭間を見るような感覚・・・。
【葦荒】
「よし、目を開けろ。」
勢いよく目を開く、すると、青白く光る玉が部屋のすみを漂っている。
【時雨】
「あれは・・・一体!?」
【氷雨】
「えっ!?何を言ってるんだ?」
兄上には、見えていないらしい・・・。
【葦荒】
「よーし、よーし、時雨。そのままあの青白い球の中心を見るようにして、眼球に気を貯めてみな。」
青白く光る球の中心を見る。全身の気を目に集中させる。
【葦荒】
「力み過ぎだ。もっと、楽に気の流れに身を任せな。」
【時雨】
「すぅー!!はぁーーー」
ゆっくりと、息を吸って気の流れを感じる。そして、ゆっくりと、その光の球を見る。
すると、その光の球は、みるみるうちに形を変え、やがて・・・。
【時雨】
「・・・女の人だ。舞子の衣装を着ている。あれ・・・。でも・・・あの人・・・。」
視界が霞む。だんだんと黒い闇が自分の視界を覆った。
バタン。時雨は、その場に倒れこんでしまった。
【葦荒】
「はい、よくできました。」
【氷雨】
「お、おい!時雨!、」
氷雨は、倒れた時雨に声をかける。しかし、その二人を尻目に葦荒は言う。
【葦荒】
「こいつとは違ってお前、全然ダメだねぇ。修行をやり直せ。」
【氷雨】
「な!何言ってやがる!!」
背を向けて歩き出してした葦荒は、氷雨の言葉に歩みを止める。しかし氷雨は、葦荒の背から発せられる凄まじい気迫に気圧された。
何も言わずただ立っているだけでも、伝わってくる圧倒的な存在感、威圧感が、自分達との圧倒的な実践経験の差を感じさせた。
聞かずとも分かる、この人は、幾度となく命の駆け引きを繰り返し、圧倒的な強さで目の前に立ちはだかる敵を今日まで倒し続けてきたのだということを。
葦荒は、後ろを向いたまま少しこちらに目を向ける。その眼光は、とても冷たく、氷雨の体をこわばらせた。
【葦荒】
「己の力量も計れねぇやつが、任務なんて、やるんじゃねぇ。命を捨てに行くようなもんだ。」
その言葉を言い残すと、葦荒は、姿を消した。
・・・・・・一方、一階では・・・・・・
・・・一体、どうゆうことだ?と、一平は理解が追い付かない・・・。人の気配なんて、一切しなかった。ましてや、殺気なんて、まったく・・・。
いくら忍びだったとしても、こんなまったく音を立てずに、そして、殺気を感じさせずに、他人の背後をとることができるのだろうか・・・。
月の光に照らされて、自分の喉元に当てられた忍び刀が不気味に輝いた。
【???】
「・・・動くな・・・。」
耳元で囁くような少年の声が聞こえた・・・。一平は、恐る恐る背後の者に声をかける。
【一平】
「お前・・・。何者だ・・・?」
すると、最後の者は答える。
【坂多千年】
「俺は、坂多千年・・・。甲賀の忍びだ・・・。」
声変わりを終えたばかりの少年の声は低く、坂多千年と名乗った・・・。どこかで聞いたことがある名だった・・・。そして、思い出す。泡沫が東の里に来たばかりの頃に話していた、共に火の戦争に参加し、雷鳴の虎と恐れられた泡沫の一番弟子・・・。
そして、泡沫と共に甲賀七人集に数えられ、剣術に関してはその中でも、右に出る者はいなかったと泡沫には聞いていた。
そんな奴がどうしてこんな所に・・・。
すると、その少年は低い声で言った。
【千年】
「俺達は、泡沫を探している。昨日、お前達3人と泡沫らしき人物がこの城近くの旅館に泊まっているとの連絡が入ってな・・・。探したぜ・・・。」
一平は、腰に下げる木刀を抜こうとするが・・・。
【千年】
「やめた方がいい・・・。そんな玩具、引き抜く前にお前の首が、宙を舞う・・・。」
少年は、感情のこもっていない飄々とした口調で言う。普通の少年ではない・・・。肌で感じる圧倒的なまでの、実力差に一平は動けない・・・。
まるで一匹の虎が今にも自分の喉に、鋭く恐ろしい爪を突き刺そうとしているかのようだった。一平は、ふぅーと息を吐いた。
【千年】
「夕暮泡沫のことについて、知っていることを全て吐け・・・。」
知っていること・・・。泡沫について自分の知っていること・・・。それは、厳しいけれど、面倒見がよくて、いざとなったらいつも助けに来てくれる優しいオイラ達の・・・。
一平は、ため息をつく・・・。
【一平】
「師匠について・・・。そんなの、オイラの方が聞きたいってのに・・・。」
一平の言葉に千年は、一瞬動揺したのか、剣が揺らいだ。
【千年】
「お前・・・。あいつの弟子か?」
【一平】
「・・・。分からない・・・。もう、今となっては何も分からない・・・。」
一平は、ため息混じりに答えた。誰かがこちらへ来る気配がした。すると、少年は素早く小声で言った。
【千年】
「・・・。お前、あいつに、裏切られたのかい?」
【一平】
「・・・・・・・・・・・・・・・。」
一平は、なにも答えない・・・。
【千年】
「なら、取引をしよう・・・。俺は、あいつを殺したい。お前はどうだ・・・?あいつのこと、殺したいか?」
【一平】
「・・・・・・・・・・・・・・・。」
一平は、なにも答えない。
【千年】
「あいつのことを殺してぇーなら、俺がお前をあいつを殺せるくらい、強くしてやろう。だから、お前も俺に協力しろ・・・。・・・甲賀に来い・・・。」
そう言い放つと、一瞬のうちに背後にいた少年の気配が消える。一平は、すぐさま後ろを振り向くが少年の姿は無かった・・・。
廊下を誰かが歩いて来る・・・。男の人だ。
【伝三】
「一平さん・・・。どうか、されましたか?一階に何か、変わった様子はございませんでしかた?」
奥方様の世話役の伝三さんだった。
【一平】
「い、いえ・・・。特には・・・。」
泡沫の一番弟子に会ったことは、言わなかった・・・。
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