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黒魔法は先が見えない

 モナを撫で終えるとシンがノウンに尋ねる


「ノウンは何て呼んでんだよ。お前のパートナーだろ?」

「あぁ、僕はリアって呼んでるよ」

「……リア?」


 二つ名をどう弄ってもリアという答えを導き出す事は出来ない。


「えっと、私……リアって言います」

「あぁ、そういうこと……二つ名じゃないって事な……あの時に自己紹介を先に終わらせてれば良かったなぁ」


 シンは頭を抱えて円卓に置いてあったおしぼりを手に取り顔を拭く。


「僕は初耳なんだけど……もしかしてリアとシンは顔見知り?」


 リアは落とし物を拾ってくれた事をユウキには伝えて無い。あの時はユウキが女の子になっており鉄の処女が強すぎて忘れていた。


「はい。私の落とし物……『魔法の杖』をシンさんが拾ってくれました。あの時はありがとうございます」


 リアは自然にお礼を伝えるとシンは顔を赤くして目を逸らす。


「……俺もシンでいいから。まぁ、どういたしまして」

「ねぇねぇ、リア。シンは女の子にとっても弱いから虐めてあげてね。ローズの服装も初めはもっと露出が多かったんだけどシンがポンコツだからスーツにして貰ったんだよ」

「おいてめぇ、俺のイメージが変になるだろうがよ」


 ――何となく気付いていた。最初に会った時も苦手そうな反応だったし……。


 二人のやり取りを苦笑いでリアは見守る。


「ったくよぉ。まぁ、リアって呼ぶか。お前らはいいだろ?」


 全員が賛成し初めての自己紹介は無事終わった。


 そして、次の話題へと移る。


 円卓の席はノウンが出入口から一番離れた所に座っており、時計回りに序列毎に座っていた。なので、ノウンの隣にはシンとリアが座っており、ローズの隣にはモナとリアが座っている。


 ローズが興味津々にノウンへ尋ねる。


「ノウンはリアと異界に行ったの?」

「ううん。まだだよ」


 リアはユウキとパートナー契約を終わらせたが、実戦にはまだ出掛けていない。クラス『エース』は単騎でBランクを攻略出来る力の持ち主が集う場所であり、リア自身は全く自覚して無い。


「へぇー、噂の子だから気になるんだけど……」


 噂の子という言葉を聞いてリアとユウキを除く三人がリアを見た。全員が興味津々な視線を向けた為、リアは恥ずかしくなり俯いて円卓へと視線を向けた。


 その後に、ユウキを見る。


「噂って……何です?」

「リアは何も知らなかったね」


 ユウキがそう言って深く息を吐き似合わない神妙な顔つきになって隣を向いた。


「シン……紅茶のお替りを頂けないかな」

「俺がお前に出すと思ってんのか?」

「もー。二人とも喧嘩しないの。私が用意するから」


 そう言ってローズが席を立ち紅茶をユウキの席に置いた。


「シン……砂糖を貰えないかな」

「お前は甘い物を飲み過ぎだ。無糖でいけ」


 ローズが甘いシロップをユウキの席へ持って来た。


「……少しは甘いはずなんだけど」


 ユウキは目を逸らしながら甘い紅茶を更に甘くして一口含む。


「ふぅ……さて、リアがこのクラスに入るに当たって僕達は事前に知らされていた情報がある。それは、リアの魔力量がこの中でもずば抜けているって事だよ。よかったねリアはシンより魔力が二倍以上多いんだよ」

「俺をわざわざ出すな。くっそウザいな……なんでこんな奴が序列一位なんだよ。俺がさっさと超えてやるからな」


 態度悪く両足を組んで伸ばし円卓の上に乗せた。すると、ローズが角砂糖をシンに投げると顔面に当たり弾け飛んだ角砂糖は全てユウキの紅茶へと入っていく。


「げー、シンの変なエキスが僕の紅茶に……」


 角砂糖の襲来と共にシンは礼儀正しく座り直してローズを見ない様にユウキを睨んでいた。


「まぁ、いっか」


 ――えぇ、いいの……。


 リアは角砂糖が溶ける事なくカップの奥底に沈んでいるのが見えた。


「素質は僕達の中でもトップだと思うんだ。だからこそ、僕とパートナーを組んで修行……みたいな感じかな。僕自身もリアの黒魔法を全く分かんないんだけど……そりゃ、少しビリビリしたりロープを燃やして貰ったけどさ」


 ――もしかして、私の実力を今まで計ろうとしていたのかな。


「リアは経験不足で色々と戸惑う事もあるかもしれない」


 ユウキはそう言ってリアを真剣な眼差しで見つめる。


「でも、僕が絶対に守るから安心してね」


 リアは目を大きく見開いた後に頬を赤く染めた。


 ――恥ずかしい……。


「あらあら」


 ローズがそう呟いて口元を隠して笑っている。


「はんっ、リアの経験で……どのランクをクリアした事があるんだ?」


 背筋を伸ばしたシンがリアに問う。


「えっと……Dランクの異界だけ……です」

「そうか。ノウンが居るから死ぬ事は無いと思うが……苦労しそうだな」


 ――やっぱり……大変だよね。


 リアは苦笑いするしかなかった。


「こら、シンはリアを虐めない。僕が居るんだから大丈夫だよ」


 そう言ったユウキが自分の紅茶とシンの紅茶をさりげなく取り替えていた。

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