第七話 ななちゃん、くのいちの修行の巻
ななちゃんが学校にやって来た翌日。
今日は朝から、ろく、なな、はちの三人で、くのいちになる為の授業です。
しかもお外で実地訓練を行います。
「ななでちゅ! しゃんしゃいでちゅ!」
ななちゃんの自己紹介は、かなちゃんに教えてもらったこの一種類だけです。
「立派なくのいちになるために、これから一緒に頑張りましょうね」
「はいでちゅ!」
実技の担当は、笹島翠先生が受け持ち、忍道具を扱った楽しい授業なので、生徒にも大人気なのです。
ろく、なな、はちの三人は、横一列に並ぶと、そんな翠先生の授業を、真剣に聞いています。
「今日は“撒菱”を使った授業をしますよ。撒菱を知ってる子はいるかしら?」
“撒菱とは、追っ手の足をくい止める為に撒く、忍道具の一つである──”
「みどりしぇんしぇい。しょれあぶないでちゅ」
翠先生が手に持つ撒菱を、捨てるような仕草を見せながら、注意するななちゃん。
「そうよ。ななちゃん正解。そうやって、投げて使う物なの」
「えっ! ななちゃんしゅごいでしゅ!」
まさかの正解を出したななちゃんに、はちちゃんが手を叩いて称えます。
「ろく、こわぁいでしゅ……」
怖がり屋さんのろくちゃんは、両手で目を隠し、怯えた声で訴えます。
その様子を見た翠先生は……。
「それじゃあ、撒菱の代わりに、三人でも安全な物で練習しましょう」
周囲を見渡し、代用品を探すことになりました。
「あっ! これにしゅるでちゅ」
ななちゃんが手に取った物。それは──
「わぁ! ななちゃん、おっきいの“まちゅぼっこり”ねぇ」
“まちゅぼっこり、つまり、松ぼっくりのことである──”
授業はもはや、誰が一番大きい松ぼっくりを探せるかの時間となり、翠先生もそれを止めることはしなかった。
「あぁぁ……可愛いわぁ。平和ねぇ」
三人はそれぞれのとっておきを持ち寄ると、輪っかになってしゃがみ、比べっこを始めました。
「みどりしぇんしぇい。だれのいっちばぁん、おおちいでちゅか?」
どれも甲乙付け難い立派な松ぼっくりに、翠先生が出した答えは……。
「一番はねぇ……翠先生でしたぁ!」
そう言うと、翠先生は三人の前に、一番大きな松ぼっくりを出しました。
「みどりしぇんしぇいが、いっちばぁんでちゅ!」
ななちゃんが結果を認め──
「おっきいでしゅ! おかおくらい、あるでしゅ!」
信じられないという表情をしたはちちゃんが驚き──
「ろく、こわぁいでしゅ……うえぇぇん!」
松ぼっくりのあまりの大きさに怖がり、泣き出すろくちゃん──
そんなこんなで初授業は終わり、果たして、ちゃんとくのいちへの道を歩んでいるのか疑問ではありますが、三人が楽しんでいたので、これでよしと思った翠先生でした──