第三話 ななちゃん、謎の二人組の巻
長屋暮らしのななちゃんは、見える範囲の全てが学校の敷地であることに驚いています。
「しゅっごぉぉいでちゅ! かなしゃん? がっこ、おっちいでちゅねぇ」
「今日からここが、ななのお家だからね」
「ななの……おうちぃぃ!」
瞳をキラキラと輝かせながら、興奮気味のななちゃん。
「じゃあ早速、ななのお部屋に行こうか。迷子にならないように、おてて繋ごうね」
しかし、ななちゃんは両手を後ろに回し、お顔をぶんぶんと横に振りながら、こんなことを言うのです。
「くのいちしゃんは、おねえしゃんだから、おててちゅながないでちゅ」
「それは失礼しました。ななお姉さん」
“ななお姉さん”──
その言葉に完全に上機嫌のななちゃんでしたが、やはり3歳の女の子、手は繋ぎませんが、かなちゃんの服の裾をしっかり握り、迷子にならない準備は万全です。
トコトコと、かなちゃんの横にピッタリと寄り添いながら歩いて行くと──
「あそこが、ななのお部屋よ」
そこには今まで住んでいた長屋とは違い、茅葺き屋根の一軒家がありました。
「あっ! な……な……ってかいてまちゅ。でもぉ……」
ななちゃんの疑問は、“なな”と書かれたその隣に、もう“二つ”名前が書かれていることでした──
「かなしゃん。あれぇ」
「うん。実はね……」
するとその時──
「まってたでちゅ!」
「いらっちゃいでちゅ!」
部屋の引き戸が突然開き、二つの人影が現れました──