第ニ話 ななちゃん、道中は険しいの巻
くのいち学校の敷地を囲む塀に沿って歩くななちゃんとかなちゃん。
ななちゃんの目には、世界が魅力的に映っているらしく──
「かなしゃん、いしぃ」
「うん。かわいい石さんだね」
「かなしゃん、はっぱぁ」
「わぁ、綺麗な葉っぱさんだね」
こんな調子ですから中々進まず、しかし、かなちゃんは決して急かすような言葉を口にしません。
石と葉っぱを、持っていた風呂敷の中に入れ、ななちゃんは満足そうなご様子。
「おみやげでちゅ」
「今の石と葉っぱ?」
「はいでちゅ。おともだちにあげるでちゅ」
未だ見ぬお友達にお土産を用意したことで、ななちゃんは一路、学校の門を目指すのでありました。
「かなしゃん。がっこまで、はしるでちゅ。ひぃ、ふぅ、みぃ、はいっ!」
やる気になったななちゃんは、なかなかの韋駄天ぶりを発揮し、門まで目と鼻の先となったその時でした──
「あっ! ななっ!」
ザザザァァっと、見事なまでに転んだななちゃん。
「……うっ……うわぁぁん! いたいでちゅ! かなしゃんだっこぉぉ!」
チラリとかなちゃんに視線を送るものの、ななちゃんが抱き上げられることはありませんでした。
「なな。一人で起きてごらん。くのいちさんになるんでしょ?」
その一言にななちゃんの涙は止まり……。
「なな、くのいちしゃんなるでちた。いたくないでちゅ」
起き上がったななちゃんは、涙と鼻水を拭いてもらうと、学校の門の前に立ちました。
「ななでちゅ。あけてくだちゃい!」
内側から閂が外されると、ゆっくりと開く扉。
たどり着いたくのいち学校で、これからななちゃんの新たな生活が始まります──