第十五話 ななちゃん、はじめてのお花見の巻
四月頃、少しでも楽しい気分になってもらえたらという気持ちで綴っていたのですが、新型コロナウィルスで緊急事態宣言が施行され大変な時期でしたので「お花見」をテーマにしていたので更新を自粛をしていました。色々と緩和され始めたのと、ななちゃんの誕生日ということで更新をさせていただきました。
今日はななちゃんが学校にやって来て、初めてのお休みの日です──
ろく、なな、はちの三人は、朝からお外をお散歩しながら、ありさんの巣を覗きこむことに夢中のようで──
「ななしゃん。みえましゅか?」
「なぁんにも、みえないでちゅ」
「ろく、ありしゃんこわぁい」
そんな三人の耳に、先輩お姉さん達の声が聞こえてきました。
「お団子屋さんでお団子買って、お花見でもしようか」
「いいわね。私きれいなところ知ってるから、そこでしよう」
お花見──
聞いたこともしたこともない三人は、顔を見合わせます。
「……おはなみ……ちよっか」
ななちゃんがポロっと口にした一言に、はちちゃんも続けて……。
「でも、おだんごいる、いってたでしゅ」
そんなこと言ってはいないが、お団子が必要であると認識したようです。
「おだんご、ちゅくってもらうでしゅ」
ろくちゃんの提案に、なな、はちは拍手をして賛成の意を伝えます。
「おばしゃん、おだんごくだちゃい、だいしゃくしぇん! はじまりぃぃ!」
ななちゃんの掛け声と共に、三人はありさんの巣のことを忘れ、駆け足で食堂へと向かいました。
「おばしゃん。おはよでちゅ」
昼食の仕込みをしていた食堂のおばさんは、やって来たろく、なな、はちを見るなり、あらかじめ作っておいたお団子を取り出しました。
「三人もお花見のお団子もらいにきたんでしょ? ちょうど三本あるから、これを持ってお行き」
昨日からお団子の予約が多かったので、おばさんは気を利かせて取っておいてくれたのでした。
「おばしゃん、ありがとでちゅ」
お団子を受け取ったななちゃんは、頭を下げ、きちんとお礼を伝えます。
「おばしゃんの、おだんご、だいしゅき」
「あらぁ、はちちゃん。お世辞でもうれしいわ」
そう、おばさんの言うとおりお世辞なのです。
なぜって、三人はこの後初めておばさんのお団子を食べるのですから。
「おばしゃん。おはなみ、なにしゅるでしゅか?」
ろくの唐突な質問に、そういえば何をするんだっけと、宙を見上げるおばさん。
「しょうやって、おはなしゃん、みるでしゅか?」
「えっ? あっ、そうそう。お花を見ながらお団子を食べたりするんだよ」
これで“お花見”の謎も解け、あとは“お花”を見つけてお団子を食べるだけです。
三人はおばさんに一度ずつ抱きつくと、にこにこ笑顔で食堂をあとにしました。
「おはなみちゅけまちゅよ」
「おはなぁ! どこでしゅかぁ! おへんじしゅるでしゅ!」
すると、ろくちゃんが……。
「あっ! おはなぁ!」
その言葉に、すかさず懐からお団子を取り出すと、見つけたお花を覗きこみました。
「“”ちゅぢゅみぐしゃ”でちゅ」
鼓草とは、たんぽぽの事である──
足元に咲く小さな鼓草は、三人のように三つが集まり、元気に咲いています。
「これぇ、おだんごしゃんみたいでしゅ」
はちはそう言うと、持っていたお団子を鼓草へと近づけました。
その時でした──
「あっ! ありしゃん! おだんごしゃんにのぼてちたぁぁ! はちのおだんごぉぉ!」
しかたなく串からひとつお団子を切り離すと……。
「しゃよなら、はちのおだんごぉぉ」
「はちしゃん。ろく、しゃんこのおだんご、おおいのことだから、こうかんちてくだしゃい」
感動的で微笑ましい光景を前に、ひとりお団子を食べるななでありました。
「おいちでちゅ。おはなみだいしゅきでちゅ」




