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第一話 ななちゃん、出立の日の巻
昔々──
とある長屋に暮らす姉妹がおりました。
名を“かな”と“なな”といい、姉のかなは気立てがよく面倒見もよいと、同じ長屋仲間の間では有名でありました。
妹のななはというと、齢3歳。
一人でわらじを履くのもひと苦労なお年頃。
そして今日は、そんな妹のななの晴れの日なのです。
「かなしゃん。ななのじゅんび、でちまちたか?」
「出来たよぉ。じゃあそろそろ行こっか」
いったいどこへ行くのかと言えば──
「なな、きょうから、くのいちしゃんの、がっこいくでちゅよねぇ?」
ななちゃんがこれからお世話になるくのいち学校は、かなちゃんが講師として働く場所。
今は長屋から通勤しているかなちゃんですが、ななちゃんを一人にしておくことを心配して、入学させることにしたのでした。
「かなしゃんと、いっちょでちゅ」
優秀なかなちゃんだからこそ、学校側も許しを出してくれたようです。
だってななちゃんはまだ──
「ななでちゅ。しゃんしゃいでちゅ」
そう、3歳なのですから。




