8 幻覚症状(3)
8 幻覚症状(3)
この日も前回と同様突然寒気がして体中震えが来た私は又看護婦さんに寒い寒いと伝え妻が使っていた毛布を掛けて頂く、亦顔面蒼白に陥り歯がガチガチと鳴り、止める事が出来ない状態が続き看護婦さんの動きが慌しくなっている様子を覚えています。点滴、注射、血圧、氷の準備等、婦長さんの的確なる指示が聞えていたが、又耳がツンーとして、静寂な世界に入りました。
私は壁側に腕を伸ばし手の平は卵を握る位に曲げてたが、気が付くとその手先を触っている二本の手の感触があり、私の曲げている指一本々々を握り、伸ばし押え全て伸ばした時点で、手の平を合わせ絡めてきたのです。この忙しい時に看護婦さんは何をしているのか…と驚きましたがそこには看護婦さんが入るスペースはなく、又重みも感じず腕先の暖かさのある感触でした。
「さあ行こうか」と私の左耳に囁いて来たのです。私は促され歩きだしました。
着いた所は鳥取県の砂丘の様な所に立ち小高い丘を見上げていた。上には何時ものグループが居て、その中の1人が「オォイー早く来いよー」と声を掛けてきた。
私は「分かった直ぐに登るから待っていて呉れ」と叫び登りかけましたが長靴を履いている状態なので指先に力が入らず細かい砂に身体が沈み、蟻地獄に入った状態でき登る事が出来ずもがき苦しんでいました。
考えて見ると何時もあの連中がいる、私があのグループの中へ加わると、私は死んでしまうのではないか?と疑問を抱いたので「登れないので先に行って呉れ」と叫びました。
すると「分かった先に行くから早く来る様に!」と聞えて来た。
此処でも周囲は静かで明るい日差しが皆の背中に注ぎ砂山を揃って立ち去る姿が見えていた。
その姿が消え失せると同時に私は又母親のいる台地にいたのです。是で三度、私は是は現実だ!夢、幻で、無い事に自信を持ちました。
私は思考力に異常はなく、全て正常に働いていると確信を持ったので…今回も前回同様、視界が広く静寂の世界が続いている。私は何時蘇生するか、不安なので、聞きたい事を端的に質問をした。
「お袋!此処に閻魔大王がいるのか?」すると「神吾か?早く此処から帰れ!閻魔大王はいないよ…世話人は居たけど…そこに居る人に聞いてみたら」その様に云ったので、辺りを見渡すと赤い橋の麓に薄青色の作業服を来た男性が佇でおり前回は気が付かなかったが、こんな所に人がいたのか?又この場所から川面は見えず川音も聞えないが太鼓橋の下は深い谷川があると思った。
私は其の人に手を上げ「閻魔」と云い掛けると承知したのか少し笑みを見せ、同時に私は視野一杯の大きなTVの前にいました。
画面では何の装飾品もない殺風景な部屋が写っています。そこには卓球台程の机が有り、八人の男達が、二人づつ向かい合って座り、話合っているのが見えます。然し何か不安定なので良く見ると、椅子が無く皆宙に浮いており、全ての人々に足が無い事が分かりました。
服装は紺色の柔道着に似たものを着用し襟元と袖口に白い凧糸で稲妻の様な模様が見えます。
不思議な事にその机の上には帳簿類、本等、筆記具類は一ツも見当たりません、唯、会話のみで声は聞えてきません…私は此処にいる男達が平凡な男に見え、閻魔大王に比べ恐いイメージが全然無く期待外れをしました。
次に『地獄は有りますか』と尋ねると、今度は少し手を上げ分かったと云う様に頷きました。
すると画面が変りメロン程の大きさでオレンジ色の果実が5~6個残っている梨の木らしき前に二人の男性が現れてきた。
上半身裸の男に別の男が木に登り残りの果物を取るようにと声を掛けているのが見えます。
此方の会話は聞き取れます。上半身裸の男は『分かった』といって木に登り小枝の間に手を入れ果実もぎ取ろうとすると、下の男が木の幹に手を掛け力を加えて大きく揺すり作業の邪魔をしていた。
枝のアチコチに槍の穂先に似た鋭い棘があって木の上の男の身体に突き刺さり血が流れ落ち痛い痛いと騒いでいます。それでも我慢をして5~6個の果実を取り終え木から降りてきた。
すると不思議な事に今迄傷口から噴出していた血が見る間に止まり傷口も綺麗に治っていくのが見えます。裸体の男が「ああ是で八百年間果実を取らなくて良いので助かる」と云っていた。
すると「何を喜んでいるのか?後ろを見ろ!」と別の男が声を掛けてきた。
すると其処にある木は、蕾を付け始めており、此れを見て「エー又果実が…」と驚き嘆いていた。
私は先程男が八百年と言ったのを聞いて地獄は下天で戦国武将、織田信長が出陣前に謡い舞う「敦盛」の詩を思い浮かべた「人間五拾年、下天の内に比ぶれば夢幻の如くなり」…此処に出てくる、下天の一年間の時間の長さは、地球時間の八百年程だと何かの本で読んだ記憶があり驚き聞いていた。
どれ程の時間が過ぎたのか?私は看護婦さん達の話し声と寒さに気が付き我に返った。
頭、腹部の氷が、熱を奪い、慌てて其の氷を取り除いて呉れ、平常心に戻りました。
私は延べ三度不思議な体験をしたが、時間の経過に供ない記憶が薄れて行く心配があるので整理をしておきます。
気絶について、生身の人間が失神するのは、耐え切れない肉体の苦痛又は、視覚、聴覚等、精神的恐怖の要素から心理的に不安定な状態が続く場合に起こる…
私の場合は何れも悪寒又は高熱の進行中に起こり苦痛とか恐怖を感じていない時点で、何故失神したのか?言い換えれば人間は簡単に気絶する動物なのか、疑問を抱いております。
体内はミクロの世界、悪玉と善玉による激しい戦い、又は数多い薬品の投入により化学反応等によって、細胞組織等に生じた拒絶反応等のせいかも知れません。
1、私は三度共、自力で蘇生しました。
私の名前を呼ぶ声はなく、平常心になっても看護婦さん達からの話も聞かれず?其の時点で私がどんな状態だったのか確認しなかった事を後悔しています。殆どの方が強烈な呼び声で蘇生したと聞いていますが?
2、私が部屋から連れ出される前に左耳元で「さあ行こうか」と囁かれ、取りすがった足、からめた手、両方とも現実では不可能です。足の場合看護婦さんがベッドの上に立っているか、私が床で寝いる状態でないと、縋り付く事は不可能です。
3、指先の件は、ベッドと壁の間隔が10cm位で人が入れない状態でしたので、生身の人間の仕業でない、お互いの手の平を向かい合わせにするには、私が肘を立て90度以上左外側に回転するか、私に向かい合って絡めるしか方法は無く、左手に点滴をしている現状では常識的に考えられない、それとに外圧、又は体重等の重みの感覚はありませんでした。
然るに私の考えでは、生前、身内、友人、知人から手足を摩られ、又は絡まれ最後の悲しい別れ、病気又は事故で亡くなった人々の仕業だろうと考えています。
4、幻覚症状に出てくるグループの人々は私の知らない方々で、色々考えた結果この個室で亡くなった人だろうと思っています。
恨み、辛み、悲しみ、未練を残しこのベットで何人の人が亡くなったか?浮かばれない仏様もいる事でしょう。それと幻覚症状に出てくる全ての人々に足は無く、靴を履いていませんでした。
移動するとき、風が吹けば木の葉が、からまって飛び散る様に瞬時に移動していた。
5、母と会話の時、机に向かって座っているけど何処か不安定で良く見ると椅子が無く、宙に浮いていると思い、三度共日傘から出ないのでおかしいなーと思ったが?足元まで着物で隠れていたので立って居る時は分かりませんでした。
それと頂上に向かって伸びている絨毯の中央に、歩いて擦り切れた後は見当たりません絨毯の端々は同じ色です。じゃあ絨毯は必要なのか?誰が歩くの、疑問もあります。
6、頂上の方々に、遺族が尋ねて来たとき、あの方々は、今私の母親がいる位置へ移動するのか、エスカレーターみたいに…ここに来て望遠鏡みたいに遠く迄見えるので移動する必要は無いのか?
7、数十万人以上の人々が居るのに誰も歩いてなく、又一羽のカラスが飛んでいないのも不思議。
8、樹木から数個の果実を取っていたがその果実が消えていた。どの場面でも話は良く聞え、応答出来るが、それ以外の音は全て聞えない。
9、人工物を列記してみました。建築物・ベッド・机・パラソル・絨毯・橋・止まり木・被服・背負袋
飲み物などは誰が持ち込むのでしょう?修理管理するのはたれか?
10、私の見た、あの世は地獄の一部と、天国の女の園と見受けたが、他の人の話では、花が咲き乱れ蝶〃が舞う美しい場所に先祖様がいたと聞いたことがあるので、これ以外に、優雅な極楽浄土があるものと思っています。
11、私の見た台地は何処までも平面で丸みが無く、又どの場所でも風に触れる感触がなかった。
12、私は今迄に二回火の玉を目撃した体験はあるが、体質上、霊感、霊視など無関係で、この体験以後も霊感など感じない体質です。