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絶食88日間 ガンからの生還  作者: 御影神吾
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7 幻覚症状、(2)

7、幻覚症状、(2)


頻繁に襲う吐血、それを補う輸血と化学薬品の投入で、気力及び体力に疲れが、出た頃であった。

午後三時頃だったでしょうか私は昼寝をしていたら、突然の寒さで目が覚め、頭と顔面から熱が奪われていくように感じたが、暫くすれば落着くだろうと其の侭我慢をしていたが治まる事無くむしろ体中が寒くなり顔面に痙攣が起こり、カチカチと歯の噛み合う音と身震いが起こりだしたのでナースコールボタンを押す。すると看護婦さんが直ちに来て「どうしました?」と声を掛けると同時に「悪寒ですね」と言って同僚を呼び手当てをはじめた。


私は寒い寒いと言って傍にある毛布を掛けて下さいと伝え、体温が目に見えて下って行く感じを強く受け止めた。傍では次に熱が上がるので氷の準備とか、注射とか二~三人の看護婦さんの声が聞こえ前の部屋から氷の砕く音が響いていた。


暫くすると聞き覚えのある宮岡看護婦さんの声が聞え、130…128…126…124…120…118…116…114…112…110…不通の速度で数字をカウントしており、私は血圧の高い数値をカウントしている?然し早い速度で低下している状況に不安を抱き乍ら聞いていると、ついに100を割り、94…この声を聞いた瞬間、私は又以前の様に耳がツーン…として何も聞えなくなり、暫くして「さあ行こうか!」と左耳に女性の声が聞えてきた。


「分かった!」と云って私は立ち上がったが左足の脛の上部に激痛が走りよろけながら傍の人の足にしがみ着き顔を埋めながら「ご免一寸待って!痛みが治まる迄・・」と声を掛けたが、足を預けた侭の女性は黙っていた。私は今もその足が筋肉質で温もりのある足であった事を覚えています。


暫く空白があって次に私が居るのは、毀れ日の射す杉林の森の中腹から、伽藍を見下ろしていた。

伽藍は古めかしい三重の塔が一基有るのみ、他の建設物はなく、庭木は伸び放題の落葉樹と数本の杉の大木が茂っており人々の出入りは殆ど無い状態だった。


これらを囲む塀は木製で重厚な造り、全てが栗色漆塗り瓦葺で造られており、高さは2m位、逆T字路の道路に沿って立っていた。


広さは手前底辺が80m余り、奥行き40m程でしょうか?矩形で結ばれていた。又左側の塀中央には武家屋敷の門構えに似た門があり鉄鋲の並ぶ門が、ハの字に開きその門前には以前と同じ人々が私を待っており「早く降りて来いよ!待っているから」と聞き覚えのある声がした。


私は又かと思い道路迄降りて建物の入口に進むと、私を見捨てるように皆が背を向け動き出し、瞬時内側から吸い込まれる様な状態で伽藍の中へ入って行った。


私が門に近付くと突然、扉がバタンと閉ったので、私は慌てて扉を叩き大声で「開けて呉れ!」と叫んだが、なんの返答も無く辺りは物音一ツせず静寂そのものでした。 


その場所が脳裏から消え去ると、私は再び見覚えのある台地の前に立っていたのです。

何故此処に居るのだろう?…此処は本当に実存する場所なのか?今迄の一連の行動等を考えれば正に驚愕の連続でした。


だがこの不思議な世界を観る事で、少しでも疑問の解明に踏み込めればと興味を抱いたのも事実です。今回も面前の景色は、前回と殆ど一諸で、人又は動物の動きは全く無く、静寂の世界です。


『お袋!そこで何をしているの?!』と声を掛けると、


母親は「お前も、日々ご先祖を守り、今の内に、人の為に尽くしておくように」と言葉が返ってきた。


「お袋地獄はあるのか?!」と聞くと、


「地獄は見たことが無い!前の雲の下が地獄と思うが、何時もあの様に雲が湧いており、下は見えない」と声が返ってきた。


私はその入道雲を見て雲の頂点が丁度私の目の高さだから、一万m前後の下には亡者がいる地獄があるのでは?と色々想像をし、今も目先の雲は雷鳴に輝き、色彩豊な眺めと常時形を変え見方に依れば恐怖心を煽る激しい雲の動きと広大な雲海を眺めその様に思いました。


どれ程の時間が過ぎたのか?廊下を歩く人の足音と看護婦さん達の話し声が聞えてきた。


気が付くと着ていたパジャマが変っていたので話を聞くと高熱が出て襟元が汗で濡れたので着替えさせたと聞かされたが…私は今回も何も知らない状態でした。


            南無大師遍照尊。合掌  南無大師遍照尊。合掌


9月 7日(木)点滴4本、鼻腔の管より薬投入、名古屋から義弟夫婦見舞いあり、主治医に会って今迄の病状を詳しく聴き書き止め帰る。妻泊まる。


9月 8日(金)点滴7本、輸血1本、採血(40cc)抗生物質反応大、注射3本。

先般ガリウム検査の結果、悪性リンパ腫と診断され一回目の抗がん剤が投用された。


今迄とは違った点滴液が抗がん剤注入の準備液として投用され、14時頃白色、朱色の抗癌剤各々(400CC)が注入され一時間程で完了、関連している点滴薬の投入の全てが20時頃迄に終わり、少し気だるい感じがした程度で、体調に変化が無いので安心しました。


「悪性リンパ腫」云々と耳にしたので主治医に「悪性リンパ腫とはガンですか?」すると主治医は、看護婦さんと顔を見合わせ、黙っていたので「告知して下さい、私も其のつもりで治療を受けるので…

と伝えると「そうガンです」と告知された。


「すかさず胃がんですか?」と尋ねると、


「いいえ血液の癌です」


瞬時私は目先が真暗になり、挫折感を覚えたが逆に良い方に取り、是は治ると自信を持ちました。


本当に悪い状態なら本人に告知は無いと思ったので、初期の段階だろうと…可様に感じとりました。


9月 9日(土)点滴4本、採血、輸血終了との事嬉かった。6時間おきの注射のみ、体温37,3度、

氷枕で下熱。名古屋から兄夫婦甥姪達見舞いあり嬉しかった。


9月10日(日)点滴4本、血圧、126、100、体温38度氷にて熱下げる。長男と姪来る、帰りに般若心経を唱えて帰っていった。有難う!


9月11日(月)点滴4本、痰の検査、抗がん剤の副作用が出る白血球減少、胃潰瘍の方は快方に向かい鼻腔のチューブ取り除く鼻がスッキリして嬉しかった


白血球の数1000、健康な人7000~13000前後とか不安あり夜になると体力的疲労と精神的悩みから自殺を考えだす。

悪性ピンパ腫が脳細胞に転移して痴呆症にならないか?又は他の臓器に転移して不治の病で苦しむのか?若しその様な症状が出れば…本館四階から飛び降り…深夜、下の電鉄に飛び込む、駅傍の池に飛び込む…又はこの部屋で縊死等…悩みました。


9月12日(火)点滴8本、白血球600、飲み薬4種類、院内感染予防の為入室者、消毒した後簡

易マスク使用、会社の方六名、見舞いに来られたが、婦長さんの判断で面会謝絶となり申し分けなく思う。鼻腔が赤く腫れ痛くなる。

痴呆の気配はないか?四階からの飛び降り自殺は大勢の人々に迷惑を掛けるので除外…


9月13日(水)点滴4本、黒色排便タール状(50g)程、深夜微熱と歯痛で眠れず。

抗癌剤の副作用が出始め五体のアチコチが痛く不愉快な日々が続く。


愛媛県より兄夫婦の見舞いあり唯、感涙するのみ有難う。これで身内の殆どの方々と顔を合わせ別れの言葉もかけた。心の準備も整いつつある。「不治の病で無様に生きるより、潔い死を」


9月14日(木)点滴4本、深夜痛み止めの注射、涙が良く出て目がしょぼしょぼする。

ベッドでレントゲンを撮る。体温39,3度、氷枕で冷やす。剤薬投入。


9月15日(金)点滴4本、白血球1100、体温39,3度、痰が良く出始める。安定剤、睡眠剤、剤薬2回使用、歯科医往診痛み止め注射。肺異常無し。高熱が続き、パジャマ3回着替える。

頻繁に咳が出て午前3時頃迄眠れず。

個室の壁、天井に飛び散って薄く残る血液の跡、どんなドラマがこの部屋であったのか?その患者の生死は?こんな事を考え又今夜も眠れない…


9月16日(土)点滴4本、体温39,3度高熱続く。剤薬注入。点滴針抜けシーツ、パジャマ取り替える。右鎖骨の下10cm位の所にメスで切り開きナイロン製の点滴針を長さ15cm程胸の血管に埋め込む針は錆付かないのと弾力性に富み痛さも解消され又両手が使えるので精神的に楽になった。

岡山県より息子家族が来た。日焼けした孫の身体を見て頼もしさを抱く。


9月17日(日)点滴4本、貧血気味なので輸血、白血球2700。主治医、外科部長、来院。睡眠

不足の為注射背にする。


9月18日(月)点滴4本、体温38,4度。採血、白血球5600、黒色排便50g程。


9月19日(火)点滴5本、採血、体温38,2度。身体全体氷で解熱。喉に『MRSA』院内感染に罹っているとの事、19時30分、CT写す異常無し。黒色便少量あり。


真夜中に幻覚症状起こる。手を上げて、何やら解らぬ事喋っている…球が光っているとか?


9月20日(水)点滴8本、微熱続く、入室者、院内感染予防の為、マスク及び看護婦のスモック着用、

妻もこれを着せられ暑そう…喋るのに苦しそう。昼寝しながら意味不明な事を喋っている。

「1週間に1度マムシを食べている…婆ちゃんが息をしているとか?」

大阪府箕面市より姪の見舞あり花を頂く。                   


9月21日(木)点滴不明、横浜市より妹、明石市から姪の見舞いあり勇気を付けられる。


9月6日より宿泊看病をしていた妻も20日で終わり淋しい気もする。お疲れ様有難う。


9月22日(金)点滴不明、毛髪抜け始める。悪寒が続く又幻覚症状に入る。


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