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 千夏のお見舞いに行ったことで、自分の祖母がサトミと幼なじみだったことを知った唯香は、その後サトミとばったり町で会わないか願って、放課後、色んな所を歩きまわっていた。

 探そうとすればするほど、上手くサトミと出会えない。

 週末の土日は、祖母のハルカも交えて車で町内を走ってみたが、そんな簡単に行かなかった。

 一通り町を一周し、人が集まりそうな場所にあるお店に入っては、サトミが来なかったか、知ってる限りの特徴を言うも、皆同じように首を横にふるだけだった。

 写真もなく、言葉だけで説明をしても、よくわからない人が殆どで、聞いても意味がなかった。

 それでも、もしかしたら接触してる可能性も考え、唯香は諦めたくなかった。

 人が集まりそうなところは、この小さな町では限られている。

 この町で大きな電化ショップやスーパーなど、めぼしい所は一通り回った。

 今まで通りに、偶然が発動してばったりと町の中で会えると思っていたが、故意に探せば探すほど、サトミから遠ざかって行くように思えてならなかった。

 思うように会えずに疲れてしまい、暫く駐車場で車を停めて、休憩していた。

 運転席でハンドルを握りながら、ハルカは溜息を吐いた。

「もしかしたら、遠い所に出かけてるのかも。それだったら、こんなところをうろちょろしても無理よ」

「おばあちゃん、諦めちゃだめ。絶対上手くいくから!」

 唯香は自分にも言い聞かすつもりで、強く叫んだ。

「おばちゃん、どこにいるんだろう」

 貴光も車の窓の外を見ながら考え込んだ。

 ぐずぐずしてたら、サトミはアメリカに行ってしまう。

 その前に絶対会わなければならなかった。

 自分の祖母とサトミを仲直りさせてあげたい。

 唯香は諦められなかった。

「サトミさんの好きそうな場所は覚えてないの、おばあちゃん」

「サトミちゃんは、私の知ってるサトミちゃんじゃなくなってる。それに、あまりにも長い年月が経ち過ぎて、全くわからないわ」

「ダメ元でも、中学時代の友達に聞いてみてよ。もしかしたら家の住所がわかるかもしれない」

「すでに電話して訊いてみたわ。だけど、知らないって。だってサトミちゃんと仲いい人じゃなかったし、そんな人から、他にサトミちゃんの事知ってる人も見つからなかった」

 手掛かりがなくて、唯香は溜息を吐いた。

「もういいわ、唯香。千夏ちゃんに聞けばアメリカの住所はわかるんでしょ。だったら、手紙書くわ」

「手紙だけ書いても、意味ないと思う。却ってサトミさん、今頃何? って驚くだけよ」

「唯香たちを助けてくれた事を書けば、サトミちゃんだってわかってくれると思う」

「でも、サトミさん、もう日本に戻ってこないんだよ。会えないんだよ。やっぱりサトミさんが日本にいるうちに会わないと。ここまで偶然が重なってるんだから、絶対おばあちゃんに最後は繋がるんだって。おばあちゃんだけが会えないなんて、そんなのおかしいじゃない」

 唯香は信じてやまなかった。

「おばあちゃんが、心からそうだって信じなければ、奇跡は起こらないじゃないの」

「唯香……」

「おばあちゃん、僕、セレンピッピーの神様がいると思うよ」

「貴光、それ、セレンディピティだから」

 唯香は訂正した。

「それそれ! 僕絶対、おばちゃんに会えると思う」

 無邪気な貴光に、ハルカは癒された。

 自分が諦めたら、孫たちに示しがつかない。

「そうね、会えるわよね。私の孫がサトミちゃんに助けてもらったんだもの。会って、お礼言わなくっちゃ」

 ハルカは車のエンジンを掛けた。

 サトミはまだこの町にいる。

 会えることを信じて、再び車を走らせた。

 

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