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2(オマケ)
その日の夕方、蜻蛉は目を覚ました。元旦の、夕方だ。
昨夜からずっと炬燵に入りっぱなしだったからか、身体が酷く暑くなっていた。早く出ようと、腕を支えに上半身を起こ__そうとしたのだ。が、それは叶わなかった。
彼の横には、彼と腕が繋がったまま寝ている少女__玉の姿があった。
蜻蛉の腕に巻き付くように丸まって寝ている少女のそれは、まるで猫のよう。
彼女の表情は、いつものような上辺だけの、または全て見透かしたような薄ら笑いではなく、安心しきったような、彼女にしては珍しい笑い方で寝ていた。
それを見た蜻蛉は一言。
「……とうとう初めて奪っちまった……?」
奇しくも、それは玉が今朝言った言葉と似通っていた。まあ、彼は本気ではそんな事思っていないのだが。
普段は人に触れるなんて吐き気を催す程嫌だ。しかし、寝起きだから、それともめでたい日だからか。そこまでの嫌悪感を抱きはしなかった。
そして、彼はこう続ける。
「ま、いっか……。たまには」