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婚約シリーズ(仮)

逆ハーレム(偽)に加入することになりました。

作者: あかね


 ……人生設計とはままならないものである。

 僕は、ローリングストーンな気持ちで白目を剥きそうだよ? 他人事ならこう言ったね。


 リア充氏ね。

 もげるがいい。

 このチーレム野郎。


 今、謹んでその言葉を受け入れたい。

 だって、ひどいありさまなんだもの。


 かつて、日本と言う名の異世界からやってきた人は言いました。


「俺、奴隷ハーレム作りたいし、嫁は一杯欲しいし、あ、でも、それ俺だけの特権ね」


 それで、この国を作って、同類にはお優しく前世の記憶を持つ取り替えっ子だけの特権として複数の伴侶を持つことを許す法律ができましたとさ。


 ……僕を追い詰めているのがこの法律だったりする。僕もしっかり取り替えっ子だったのだ。

 不可抗力により、婚約者候補が三人いて友好を深めましょうとかそういうことになっていたんだけど。もちろん、僕としては一人を選ぶつもりだった。嫁複数とか僕にはムリムリ。胃がきりきり言いそうだもの。


 しかし、そうは問屋が卸さない。

 この法律を思い出した人がいて、議会に承認を求めるとかなにやっちゃってんのっ! と絶叫したけど遅い。僕は何時だって遅いらしい。


 ということで、僕は複数の嫁がもてるようになりました。

 わぉ。合法的にはーれむー。

 ……ぜんっぜん嬉しくないのはなぜだろう。僕の人格はそう言うのには向いてないのだ。いや、可愛い女の子に囲まれるのもちやほやされるのも夢ではある。

 しかし、前世の記録がそれを許さない。なにせ、彼女の記録は淡々としているが故に恐ろしい。

 そう言うところまで鈍感ならば楽しくやっていけただろうに。


 世の男どもにそう言いたい。まぁ、学園から去る日にぶちまけてやったけど。男のみの会合を開いて、今までの話を洗いざらい。それで女性不信になるかどうかは知らない。

 ただ、男泣きされたのはやり過ぎだったかも知れない。


 そう、僕は学園を卒業、の前の研修旅行に来ている。そう言う名の現実逃避とも言う。僕は卒業後、家業を継ぐことは決定しているのであちこちの国を回る必要がある。


 姉が別の国の王太子妃であるので、親書を携えて王宮へ上がるのは問題ない。それで、あちこち視察に回る許可を得たので、他の国の学校ってどうなってるのかなと思ったのが悪かった。


 一週間ほど学生として滞在してみてわかったことがある。

 その少女は学園では腫れ物のように扱われていた。高位の男性ばかりが彼女の側におり、彼ら自身が他の者と接する事を禁じ、溺愛しているように見える。

 しかし、笑顔の奥にはなんだか怯えがあった。


 ある人は彼女のことを殿下たちを侍らしてなんなのと憤慨していた。

 ある人は関係ないと言っていた。

 ある人はかわいそうにと言っている。


 そして、金髪碧眼縦ロールのわかりやすいお嬢様だけが噛みついている。主に男どもに。しかし、それらは全て曲解されて少女への攻撃のようにされていた。


 というのが現状らしい。ひどい話だ。主に僕にとって。


 さすがは『加護 機械仕掛けのデウス・エクス・マーキナー』である。

 神様よりご加護という名の尻ぬぐいを命じられていると言っても過言ではない。嫌がらせにもほどがある。

 他にも『加護 黒ヤギさんへのメール(読んだら食べるよ)』という文通もあるので苦情を申し立てたいが今回は役に立ちそうにない。


 僕にちょっかいをかけるのは三姉妹と呼ばれる創世神の一人だ。この国の管轄は別の神で結構、地上にべったりなので注意するようにとわざわざ言われている。


 ……尚、女神と知っていながら神様と表現するのは、僕なりの反抗である。幼い頃に思い描いていた女神様とは別モノを女神と呼びたくない。


 それは置いといて。

 この国は現状歪である。上位貴族の上は30代から下は十代半ばくらいまでの男性がフリーだ。つまり、婚約していない。結婚しているのも少ない。その逆に女性は結婚も婚約もしたくてもできないままに適齢期を終え、平民や下級貴族に嫁いでいく。でなければ、修道院だ。


 この国のおかしな状況というのがこのべったりの神が選ぶ聖女が原因というのは誰もがうっすらわかっている。

 来年くらいに聖女様が役目を次代に譲渡し、還俗する。

 還俗した元聖女を巡る争奪戦がこれから起こる予定。で、彼女との婚姻に問題のない年齢の男が全部、フリーだという。


 男女共にストレスフルな状況だ。

 そんな状況で、ある一人の女生徒に適齢期の優良物件が群がっていたらそりゃ面白くないだろう。それはわかる。いわゆる逆ハーってヤツかと僕も最初は見てたんだ。


 でも、なんかこう、違和感があったんだ。

 それで情報を集めた結果、僕は空を見上げたね。

 ああ、空青いわぁ。


 彼女の祖父は騎士として名を馳せているものの爵位は騎士のみ。辺境に領地を持っていたけど、騎士の地位というのは一代かぎりで娘しかいない場合には婿を探すしかない。騒動の結果、騎士の爵位を持った父が婿入りしてなんとか領地を継いだという経緯がある。

 尚、これは醜聞の類に属する。

 で、その母親の娘ならばこうなってもしかたないよね? 悪女の娘も悪女でしょ? という空気感のもと生きている。その実、本人は結構真面目で礼儀正しい人と言われていたようだ。ただ、本人を知らずに決めつけている人もいるようでご同情もうしあげるとしか。


 そして、その空気感を利用してストレス解消しているのが、彼女の周りにいる男たちだったりした。

 地位が上から順に第三王子(末子)、公爵家子息(宰相の息子)、辺境伯子息(教師)、男爵家子息(将軍の息子)である。他、第三王子の護衛が見て見ぬ振りをしていた。我が身可愛い気持ちはわからんでもないが、コレが今後国家を運営するとかヤダとか思わないのかね?


 皆、そこそこ顔が良くて、地位があって、それなりに優秀である。

 皆、還俗する聖女の相手候補の有力候補であり、実家からのプレッシャーも相当あると思う。それに聖女を嫁に貰うならば、そんな女遊びもしていられないし、真っ当な人間であることを強いられている。

 さらには一人しか選ばれないのだから、お互いより優れていることを常にアピールしなくてはいけない。


 ……なんというか、不毛だ。これ、終わった後協力体制出来るのか?


 というわけで、そんな状況の男が、誰かに恋などするだろうか?

 大体、それなりに教育された人がそう簡単に恋などしないものである。むしろ、どこかでブレーキがかかって醒めるものであろう。


 そもそも恋している相手に好かれようという意志は全く感じない。

 全く持って配慮というものを感じないと言えば良いのか。彼女が困っているのを知っていてよりひどい方に持っていこうとする悪意さえ感じる。

 他の人間が近づこうものならば、相手を害すると脅して彼女に追っ払わせるとかなんなんだ。

 それだけでなく、男性同士を比べてどちらがよいかとか聞いてみたり、わざと予定を合わせてどちらを選ぶか試したり。


 どうにもたちが悪い。

 これが本当に好きな相手だったらまあ、嫉妬とか? 少しは生ぬるい目で見てあげるが、ぜんっぜん、さっぱり、これっぽっちも、好意などなさそうだ。

 なにせ、裏では、身持ちが堅いとか、すぐに落ちるかとおもったとか、でも、中々持ちこたえてるのが楽しいとか言ってるようだし。


 弱い者いじめ。


 今現在ではそう思っているのが、学校内の八割くらい。そのうち助けたいんだけどと思っているのが三割ほどいる。ただ、皆、これらの男たちよりは階級が下。当たり前と言えば当たり前なんだけどね。王族が一人いれば、意見するのも命がけだったりする。

 巧妙に箝口令を敷いて学校外に情報を漏らしにくくしているのもイヤな話だ。


 さて、この状態は放っておけば来年まで続くだろう。そして、最終処理はどうするのかと言えば、卒業近くにこの少女を呼び出して、皆の前で彼らをたぶらかした罪を問うらしい。


 悪女の娘は悪女であった。だから、たぶらかされた我々は悪くないと。


 ……ほんっとーにひどい話だ。

 死ねばいいのに。と、久しぶりに思った。

 情報提供者の縦ロールのご令嬢リュカは、ほんっとにね、と力強くお答えしてくれました。

 リュカ嬢が提供してくれた情報の裏を取りつつさらに情報を集めていたら、恐いことが判明した。

 逆ハー少女、シュン嬢というのだが、祖母が前聖女のご友人。それも幼なじみという。現在もお元気な前聖女が、もし、某この国にべったりの神様に愚痴ったら恐いことになる。なぜって、前科があるからだ。この国の人間には。


 詳細は不明だが、シュン嬢の母の件でちょっとあったらしい。次はないとちゃんと宣言されていたというから恐い者知らずとしか言いようがない。


 ……というか知らないんだよね。若いって恐い。


 とりあえず、他国のことなので黒ヤギメールで神様に連絡しといた。別に、長く続いた国であっても滅んでいけない道理はないし、そもそも、一つの国にべったりと神様が居座るのがおかしいものだ。結構一杯居るとはいえ、各国家に一柱置けるほどいないんだから露骨な格差が生まれる。誰も神様に喧嘩売りたいとは思わないし。

 ……除く、取り替えっ子。時々、バトルジャンキーがいるらしいよ。


 そもそも神様などあちこちふらふらして居るのがよいのであって、一国に居続けるなんてバカかと。そりゃ、気に入りそうな娘さんだって貢ぐし、良い言葉だけ聞かせるだろう。普通に嫁げなかった娘さんの怒りを思い知るが良い。


 前世の記録が女性だったもので感情移入先がやや女性よりなのは自覚している。……まあ、普通にイケメンが嫌いなのもあるんだけど。それはやっぱり、ろくでもない顔の良い男に振り回されたことがあるからだ。現在は他国の王様なんだけど。


 色々カウントダウンが始まる中、僕がしたことと言えば。


「シュン嬢、ご機嫌いかがですか?」


 にっこり笑顔で朝から大変困り顔の彼女を救出する。

 そう。取り巻きに加わることだった。


 今までも彼女の窮状を憂い、介入しようとした人はいたそうだけど権力者の圧力には逆らえず退場となったそうだ。退学までは行かなかったのは心優しきシュン嬢がかばったおかげだけど。

 え、僕が大丈夫なわけ? そりゃ、他国の王太子妃の弟で、国内内外で有名な商会の跡取りで、なおかつ取り替えっ子だから、だけど。僕に何かしたら国際問題と経済問題と有用な知識をもたらされなくなる問題が発生する。

 まあ、最初は脅されたけどね。

 我々の花を奪う気かとか、王家の者と知っての態度かとか、商人風情が生意気とか。

 腹が立ったので、実家に連絡して彼らの家を取引禁止にした。


「別に商人風情が扱うものなんて興味ないでしょう?」


 さすがにコレには黙ったね。


 さて、僕の記録を活用してのものは主に美容と衣装の商品に特化している。流行に乗りたい女性には大変ご好評をいただいている。

 ということは、流行の商品を手に入れられなくなる母親の怒りを買うということだ。ついでに女の姉妹がいれば軽蔑されるに違いない。


 お家からは抗議は受けたけど、これこれこう言うコト言われたんだけど、お宅の息子さんの教育どうなってんの? と言えばなっがーい謝罪文が届いた。彼らには母親の説教が待ち受けているに違いない。親はわりとまともなんだけど、やっぱり環境が悪かったのかな。


 王妃様には呼び出しという名のお茶会に呼ばれ、こらって怒られたけど。王家と取引禁止する気は無かったんだけど、なんかこう、うちの女性陣がお怒りだったようでやっちゃった☆とか言ってた。何故だろう、すこぶる良い笑顔の姉と伯母と母の顔が見えた。

 さすがに国家間の問題になりかねないのでそこは戻したけど、王子とその母と姉妹は対象外にすることは許容してもらえた。王妃様もあー、みたいな顔したので、後宮でも問題があるのねと。


「おはようございます」


 明らかにほっとした顔で対応されるとなんだか楽しくなっちゃうんだけど。彼女の好意は独り占めみたいな。某縦ロール令嬢が冷たい目で見てくるので表情には出さないけど。


「ああ、この間あげた髪留め使ってくれたんだ。どう? まだまだ試作品なんだけど、使用感とか聞きたいからこっちにおいで?」


 さりげなくなんて高等技術、僕にはムリなので露骨に彼女の手を取り連れ出そうとする。そうするとやっぱり、進路をふさがれたりする。


「我々が話をしていたのだ。連れて行く許可を与えてはいないが?」


「別についてきてもかまいませんよ。僕としてはここにいては皆の邪魔なのでどこか行きませんかとお伝えしたつもりなんですけどね。殿下たちの立場を考えて、直接伝えるのはどうかなぁと思って配慮したんですが、伝わりませんでした?」


 とぼけた顔で言うのが肝だ。害され難い立場は持っているものの逆上されて刀のサビにされるのは大層困る。偽天然を装うのが一番楽だった。まあ、なんか地味に精神的なダメージを食らったりするけど。

 バカっぽく見えるとかさ。

 変人と思われるとかさ。

 いや、いいんだけど。いいんだけど、ツライ。


「というわけで行きましょう?」


 そう言って僕が笑えば、毒気が抜かれたような顔をする皆様方。偽とはいえ天然は強いな。

 先だってシュン嬢と歩き出せば、彼らはその場に留まったままだった。


「ふむ。巻きますか」


「ふぇ?」


 彼女のぎゅっと手を握って足早に学校内を逃避行。逃げる隙を与える方が悪いのだ。こういうのも楽しいよね。学園ものみたいで。


 そんなわけで、色々介入待ちの間、逆ハーレム(偽)に加入することになりました。


 ……しかし、コレ、婚約者候補たちにばれたら大変怒られるような気がしてならない。さっさと状況の手紙でも送っておくに限る。たぶん、怒られるけど。

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