4.現実には、悪役令嬢なんて存在しない
政略的な婚約とは、国に利益をもたらすものであって、個人の感情は存在しない。そして、恋愛によって成り立つものではない政治的な意味合いのもの。
乙女ゲーム『ラブパレ』での悪役令嬢ことウェヌス・ホワイトジャスティス公爵令嬢は、今日も今日とて元婚約者の第三王子ヴィシャス・ギルティ様に苦言を呈しています。ご苦労なことです。
ヴィシャス様からすれば、ウェヌス様はヒステリックに叫んで自分の気分を害する女でしょうが、第三者からすれば痛いところを的確について口撃するという感じです。
私なら、ウェヌス様に注意される前に自分で直すなと思いました。
誰でもきっと、そう思うでしょう。愚従妹マレフィーと逆ハーレムたち以外ですけど...
同僚(女)によるとリアル乙女ゲームをしていた頃のマレフィーは、自作自演の嫌がらせでウェヌス様を嫌がらせの犯人に仕立て上げたようですが、彼女のための逆ハーレムたちは信じても、国の上層部は信じませんでした。それどころか、マレフィーが自作自演した証拠を見つけ出しました。
逆ハーレムは維持できても、国認定の『害悪集団』のレッテルを貼られることは避けることができなかったようです。
逆ハーレムに所属している者たちはというと、マレフィーに首ったけになってから親に見限られたらしい。
その同僚(女)は、マレフィーがしていたリアル乙女ゲームの様子を周辺から取材して、妄想力を駆使して、面白おかしく小説にしたそうです。
タイトルは、『今日もビッチは恋してる!?』。
そういえば、魔術師団団長と竜騎士団団長が、難しい顔をしてこの本を何度も読み返していたというのを思い出しました。
メイドさんたちによると、分かる人にはマレフィーと逆ハーレムたちのことだと分かるらしい。マレフィーが、この本を読んでいたのを城内で見たメイドさんは、マレフィーがこの本のヒロインが自分のことだと気付いた様子はなかったと言っていました。
『ラブパレ』では悪役として、ヒロインに嫌がらせをしていたウェヌス様は、現実では嫌がらせを全くしなかったらしいです。
貴族、しかも公爵令嬢として骨の髄まで貴族としての誇りを染みこませて育てられて彼女はそんなことができないでしょう。
その当たり前が理解できないとは、マレフィーはかなり残念な頭の持主です。そして、逆ハーレムたちも...
マレフィーと逆ハーレムたちの状態を放置して、ウェヌス様が苦言を呈して馬鹿なことを少しでも抑え込んでいるということは、国が彼らを排除しないといけないのかを見定めている途中なのでしょう。
ちなみに、ウェヌス様は国に多大な影響力を持つホワイトジャスティス家の令嬢なので、ヴィシャス様との婚約破棄後は第四王子様と婚約したそうです。