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涙の帝国Ⅰ 〜入社試験〜  作者: 下松 紅子
第三章 特別枠で女王
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特別枠で女王

後日談という名のオチ。

あの後、事務所に手紙が届いた。まさかのお城からの招待状。シンデレラかよ。


「マリッジブルーか、シャルロット王子」

「あはは……ほんとブルーな気分だよ………」


ーーーーでも王子様はたいぶブルーだった。

そして今、絵本の中に出てくるような城の中にいる。しかも床は大理石とレッドカーペット。

目の前には初めて会った時みたいな夜逃げの格好とは違いシワのなく王が羽織るような紅いマントに紅い宝石がついた王冠を頭に乗せたシャルロット王子。

横にはあの時と変わらずリドリーさんは赤い燕尾服に金髪。

こうして見ると王子様なんだと分かる。


「ですが王子、碧の帝国(あおのくに)からの暗殺は我々が企んだことではありません。むしろそれを利用させてもらっただけですよ」

「それがダメなんだよ!!」


シャルロット王子が必死に抗議する。


「君も災難だったね……」

「あ…うん」

「そういえば何だけど、君の名前聞いていなかったね」

「ああ、名前は………涙だ」


とシャルロット王子がへえ、と頷く。

むず痒いな…。


「その名前ねー、僕が付けたんだよぉー!」

「「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁ!!!」」

「これはこれは緋山様。わざわざ、窓から這いつくばって登るという愚かな行動をせずとも言ってくれれば通しましたものを」


私とシャルロット王子はジェットコースターに乗った時(実際には乗ったことはない)みたいな叫びに対しリドリーさんは冷静(むしろ、当たり前のよう)だった。

若干、リドリーさんの言葉に(とげ)があるがまったくその通りだった。

駿は窓から現れた。しかも王室は約ビルの10階ぐらいの高さの場所にある。

リドリーさん(いわ)く、どうやらよじ登って来たらしいがーーー。


「いや、登ってきてないね」

「おおっ、よくわかったね」

「こんなに高い場所に登ってくれば嫌でも汗を流すはず。そんな爽やかな笑顔できないし」

「ピンポン。そう僕はここまで登ってきてないんだなあ」

「この世界特有の魔法か」

「さっすがー! わかってるう」


まあ、何の魔法を使ったかは謎だけど。


「ともかく、前回の件に関しては感謝するよ。リドリーさん」

「いえいえ、人類のカスに礼を言われるほど大したことはしてませんから」

「人類のカス…」


どうやらリドリーさんはツンデレではなくツンドラらしい。


「それはそうとして、涙。君に三つほど質問があるんだ」

「いいよ、何でも答えてやる」

「まず、なぜあの碧の帝国(あおのくに)の暗殺者にトランプの傷を確認させようとしたんだい? もしあの時に気づいたら君は殺されていたんだよ? よりによって怒りやすい鬼族なのに」


シャルロット王子の質問に対し、私は薄く笑った。


「別に気づかれたってどうもしないさ。殺されたら殺されたで終わり」

「終わりって…」

「それに私、ゲームに関しては負けたことがないんだよ。更に私は『間違えない』から。全てにおいて」

「……なるほど。君が勝った理由がわかったよ。その『根拠のない絶対的自信』だね」

「根拠のない自信はゲームをする時に必要だからな」


駿がさすが、とでも言いたげに笑う。

だって私は自分しか信じないし。


「次に君はこの世界の人じゃないよね」

「へえ…バカだけど見る目はあるんだな」

「失礼だね! これでも目は()けているんだよ」


単なるバカではなかった。


「最後に【これぐらい最悪だった更生した甲斐が得られるじゃん。】ってどういう意味?」

「うんとまあ、私がこの世界に来た理由がこの世界の天下統一? なんだよね」

「だとしてもどうやってきたんだい? 魔界から?」

「違う。この世界には表と裏があってこの世界はその裏なんだよ。私は逆の世界、つまり表の世界からきたんだよ」

「おおっ。なるほどなるほど」


本当に理解してるのか?


「じゃあ、話を戻すけど君はこの国、紅の帝国(あかのくに)を元に戻してくれるかい?」

「元に戻す? 戻すも何もこの国は前からこんな感じじゃないのか?」

「そうでもなかったんだ。この国は」


苦笑しながらシャルロット王子は言った。

すると後ろから、


「それに関しては僕が説明しよう」

「駿が?」

「なんだよ、その疑いの目は!」


駿はおほん、とわざとらしい咳払いをする。

そして駿の説明が始まる。

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