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涙の帝国Ⅰ 〜入社試験〜  作者: 下松 紅子
第一章 異世界調べ
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異世界調べ-2

「ううう裏って…?」

「…国王の護衛から……暗殺まで…」

「で、でも人殺しは…いくらなんでもバレたらただじゃ済まないと思うけど?」

「……王族から…国家から必要ならば…良いって許可してもらってる…」


それでいいのか、王様よ。

でもラティの話からするとここ、えっと紅の帝国(あかのくに)は王政なのか…。


「別に……ここだけが王政じゃない……碧の帝国(あおのくに)だって…葱の帝国(きのくに)翠の帝国(みどりのくに)黎の帝国(くろのくに)…どこも王政…」


この世界はカラフルな国が多いようで…。

ていうか、今、心を読まれた?

そんなまさか。


「…そのまさか……だったりする…きみも同じ…でしょっ…?」

「…わかるの?」

「…うん…ラティ読めるから…人の心の中……それにこの帝国(くに)は能力を持った人たちが…集まった帝国(くに)だから…怖がる必要ない」


困ったな…。

さっき会った人にここまで知られるなんてね…。

でも。


「…はい…さっぱりした……」

「ありがと」

「……やっぱり…きみ不思議…」

「何が?」

「……何と無く言っただけ…」


ふうん、と力なく言った。



。。。



「で、なんですか。この服は」

「俺を責めるな。その服を選んだのは隣にいるバカだ。せめるならこのバカを責めろ」


スカートの裾を摘み上げ、もう一度確認する。

やっぱり『制服』だ。

私がもっとも嫌いな服の一つ、制服だ。

緋山さんが言うにはこの相談所の制服をらしいけど、ラティは着ていない(ちなみに事務員は緋山さん達を含めて六人しかいないらしい)。どういうことだ。


「不服かい?」

「えぇ…まあ、こっちにも色々あったんで」

「なら着よう」

「問答無用か」


なぜ私が制服を嫌っているのか。理由は単純だ。

学校が檻なら制服は鎖だ。

制服を着ていると学校から逃げられない気がして嫌いなのだ。


「だがそれで我慢してくれ。それしか服がないんだ」

「…わかりました。お風呂にもいれてもらったんで」


ドライヤーで乾かされた白い髪を触りながら言った。

髪ってここまでサラサラになれるんだ。

だが、そのサラサラの髪が頬に当たってくすぐったい。


「それでは聞きたいことが山ほどあるんだ、片っ端から聞いていくぞ。構わないな?」

「どうぞ。なんでもお答えします」

「どうやってこちらの…所謂(いわゆる)、裏の世界に来たんだ?」


ふう、と息を吐きテーブルに置かれたお茶を一口飲む。


「プリンを食べてたらパソコンの向こうから男の子の声が聞こえた。そしたら君はこの世界の人間じゃないとか天下を取ってみないとか言われて、気づいたらここにいたと言うわけ」

「なるほど。その、ぱそこん? とやらは知らないが(にわ)かに信じがたい話だ。だが魔物の代わりに召喚されたのは謎だな…」


まず異世界があるっていう時点で召喚がどうこう言っても幻想が成り立つんだけどね。


「私からも質問。なぜ仕事中に魔物を召喚しようとしたんですか?」

「最初はね、暇だからレンジャーごっこやろうと提案したんだけど二人にに無視されたから悪戯(あそび)で室内に飛び切りデカイ魔物を召喚しようとしたんだよ」

「もう結構です、その先は言わなくてもわかりましたから」


つまり暇を持て余した社員のヤケクソで召喚された訳だ。


「次にこれは何だ? トランプはわかるが」


芯咲さんから差し出されたものは、私と共にこっちに来たものはスマホ(圏外だった)、タブレット(データはぶっ飛んでいなかったのが幸い)、ゲーム機(退屈しのぎには使えそうだ)、トランプ(幼い頃から使っている思入れのある物だ)だった。

よかったぁ、スマホとタブレットがあって。無いとなったら息をするなと言ってるのと同様だしね。


「珍しい器具だね。見たこと無いよ」

「確かにだな。一体、この薄い板で何ができるんだ?」


まさか…だよね。

元の世界と似ているけど少し違う世界なんだよね? ここ。

ないってことないよね?


「携帯電話ってこの世界にはないんですか?」

「けーたいでんわ…? なんだい? それは」

「じゃあ、どう外部と連絡をとっているんですか?」

「外部と連絡をとる時は、文通か弓矢だね」


ひゅん。


開けられていた窓から飛んできたものが壁に突き刺さる。

恐る恐る後ろを振り向くと壁に緋山さんの言うとおり、弓矢が刺さっていた。戦国時代か。


「おお、危ない危ない。さてどんな依頼かな?」


緋山さんが弓矢にくくりつけられていた紙を広げながら読み上げた。

内容はこうだった。



拝啓、桜宮相談所様

この(たび)は緊急事態と判断し、失礼ながら依頼を受けてもらいたいのです。

実は三日ほど前からシャルロット王子が行方知らずとなっております。我々も全力を注いで(たみ)には内密に探しております。

ですので、是非相談所の力をお借りしたいのです。もちろん、依頼料は払います。

何とぞ、よろしくお願い申し上げます。

王専属執事リドリー



「つまりはシャルロット王子を探してくれ、ということか」

「…受けるの? 依頼」

「当たり前だ」


さてと私はこの世界のことについて調べるか。

何事においても状況把握、そして何よりも情報が必要だ。

………さすがに図書館はあるよね?

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