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涙の帝国Ⅰ 〜入社試験〜  作者: 下松 紅子
第三章 特別枠で女王
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特別枠で女王-3

駿の後ろからまた何か飛んでくるようなーーー


「涙ぃぃーーっっ!!!」

「ふぎゃぁっ!!!」


シャルロット王子が飛んできた。


「何だ!? 今日は厄日か!?」

「厄日の前に早くセレモニーに行くよ!! 君が新女王になるセレモニーなんだよ?!」

「あー…そういえばそうだったな」

「なんや!? お前が新女王やったんか!?」

「そうだよ!! 涙が新女王になるんだよ!」


そうだった、女王になるんだった…。

…………今更だけど、めんどくさくなってきたな。

今思えば何を言えばいいか決めてないし。第一、私が女王になるなんて国民が認めないし私自身も認めるはずがない。


「王子、見つかりましたか?」

「うん! リドリー! 早く瞬間移動(シフト)だよ!」

「御意。それでは最速で」


そう言ってリドリーさんは目を伏せ、何かを唱え始める。

すると、今いる和室が陽炎のようにぐにゃんと揺らぎだし、甲高い音が耳を突き抜ける。

まるで大きな重力を押し付けられているように体が重たくなる。

どうやらその症状はリドリーさん以外も同じらしい。

いつも澄まし顔をしている駿でさえ、顔を歪める。


「それでは城に向かいます。多少、気分を害されると思いますがご了承ください」

「「「「ご了承できねぇーよっ!!!」」」」

「はは……皆、元気だね…ボクは…ギブ」


何とか声を張り上げる。が、隣ではシャルロット王子がグロッキー。

すると甲高い音が鳴り止み、いつの間にか城の中だった。


「あはは、これは凄いね……芯咲君と涙ちゃんは大丈夫かい?」

「このままバルコニーで演説とか無理…国民の前で汚物を吐くことになるよ…」

「死ぬ…死ぬぞ…もう二度とごめんだ…」


それぞれ顔を見合わせる。

私達三人の意見は同じのようだ。


「それでは民がお待ちですよ」


と、リドリーさんが変わらぬ澄まし顔で促す。

そしてーー


(るい)女王陛下」


……甘美(かんび)な響きだ。



。。。



バルコニーに出れば辺り一面…………人がゴミのようだ。

背中や頬に汗が伝っていく。

だが、一人一人の顔を見るが腑に落ちない顔をしている。

まあ、無理もないか。

だがーー



更生させるのが今の私の仕事だからな。



「諸君、初めまして。新女王である涙だ」


そしてクレームの嵐。


『なぜお前なんかが女王なのだ!』

『小娘に何ができる!?』

『身の程を知れ!』


嗚呼、似ている。

あの時と。


「私にブーイングをするのは構わない。では諸君に聞くが諸君はこのままでいいか?」


うるさすぎる静寂が訪れる。


「私はこの国を数日で全てを把握した。この国は弱すぎる。第一次部族戦争に生き抜いた理由はわからない。だから私はこの国を強く更生する」


だが、これだけでは足りない。


「口では何でも言える。実行し功績を残さないと意味はない。だが、今の諸君には足りないものがある…それは『やる気』だ! どんなことにもやる気は必要になり、物事の始まりになる」


だから、こいつらにはきっかけを与えなければならない。

そして大きく息を吸い込みーー



「他国の奴らと恋はしたくないかぁぁっ!!」



国民は呆気を取られ、口を開ける。

いやあ、こんなに大きな声を出したのは初めてだわ。


「人間というものは常に刺激を求める生き物だ。じゃあ、その刺激とは何か? それは『恋』だ! 確かにこの国の男女で恋するのは否定はしない。だが鬼っ()やイケメンエンジェル、セクシーお姉さんエルフ達とピュアな恋をしてはみたくないか!? また刺激的な恋はしたくないか!?」


すると国民達は何かに目覚めたのか口々に『Yeahァァァァァァァ!!!』と叫び出す。

そう。これこそが人類。

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