特別枠で女王-2
時はだいぶ遡るけど、この世界に二人の神が産み落とされたんだ。
彼らは兄弟でね。その兄弟の兄がね、国を作り幾つもの種族を作ったんだ。
人間、鬼、天使、エルフ、悪魔、人魚など他にもいたけど、7割は壊滅したよ。
それが『第一次部族戦争』。その戦争を生き抜いたのが、人間、鬼、天使、エルフ、もう一つは謎なんだけどね。
そしてそこから差別とか領土争いが勃発したんだ。
まあ、今の人類の状況はギリギリだけどね。
「なーるほど、そういうことか」
「そういう訳なんだ。だから涙! 君に勝負を申し込む!! もし僕が勝ったら特別枠で女王になってもらう」
「ほお……この私に勝負を申し込むとはいい度胸してるじゃん。いいよ、何のゲーム?」
「チェスだよ。これでも僕はチェスが得意なんだ。昔からお父様とずーっとやってたんだから!」
「あっそ」
リドリーさんが当たり前のようにチェス盤と駒を持ってくる。
………さて、ゲーム開始。
。。。
ゲーム開始から40秒で決着がついた。
もちろん、私の勝ちで。
「せめて1分。せめて1分はゲームしようよ…」
「あれれー? 勝つと思ったんだけどなー?」
「負けてるじゃんか…」
相当悔しかったのか、シャルロット王子の目が病んでいるような目になっていた。
「しょうがないけど、勝負は勝負。君を女王にすることは諦めーーー」
「別に女王になってもいいけど」
「…………へ?」
「断る理由はないし。天下統一の近道だしな」
なぜか、三人は顔を見合わせた。
そして、
「リドリー」
「はい、王子。明日の朝までには準備を終われせることは可能です」
「よし。というわけで新女王のセレモニーは明日の朝で」
手際が早いな、コノヤロー。
いや、待て待て。朝だと?
「無理無理無理。朝は無理」
「え? なぜ?」
「分かるか? 引きこもりにとってお天道様の光は天敵なんだよ。大っ嫌いなんだけど」
「引きこもり? 何だいそれは?」
こいつ、引きこもりを知らないのか。
……ありえん。
「じゃあ、今からでもいいよ」
「やっぱ、明日の朝で結構」
朝、起きれるかな。
。。。
「リドリー! 涙はまだ見つからないのかい!?」
「はい、全力で探しているのですが…」
「どうしよう……あと10分で始まるのに!」
シャルロットは頭を抱えながら悩む。
なんせ、セレモニーはあと10分で始まる。
だが、一行に涙は見つからない。
「そういえば、心辺りがある」
挙手する紫。
意外だったのか、その場にいた全員が目を丸くした。
「へえ、芯咲君がねえ。で、どうぞ」
「昨日、社員用の冷蔵庫に大量にあったタマプリンがあったんだが、今朝になって全て消えていたんだ」
「それって前に箱買いしたプリンのこと?」
「ああ、推測するに一夜で無くなったと思われるな」
「そういえば涙ちゃん、プリン大好きだったよね。というか、あの子どこで寝たの?」
「知らん。勝手にいなくなったからな」
そして、紫はため息を吐き
「憶測だが、駄菓子屋にいると思う」
「え? やっぱり芯咲君もそう思う?」
「ああ、プリンを買いに行ったついでに寝泊まりさせてもらったんだろうな」
。。。
「おい、お前。こんなところで寝てていいんか?」
「……眩しい。カーテン閉めて…」
「起きろ、朝や」
「起きれない。朝嫌い。私は夜行性」
呆れた顔で三戸さんはカーテンを開ける。
昨日の夜中、プリンを買いに行ったついでに寝泊まりさせてもらったのだ。
この駄菓子屋はレンガ造りだけど中には畳があった。
落ち着く他にない訳だ。
「涙、ホンマに起きろ」
「やだー! 布団さんは私を剥がしてくれないのだから!!」
「剥がしてくれないのはお前だろ…」
と、駄々をこねていると誰かが来たみたいだ。
……あいつらか。
「どんどんどどんどんどぉぉぉぉーん!!!」
「ふごぉっっ!!」
まさかの駿が私にダイブ。
内蔵出てくるかと思った…。
「駿! 降りろ! 死ぬ! 死ぬぞボケ!!」
「いやいや、イケメンお兄さんのモーニングコールだよ?」
「か弱い女子にダイブするモーニングコールなんて嬉しくねーよ!」