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僕が初めてその子と会ったのは中学2年生の夏休みで、当時彼女はまだ小学2年生だった。
法事のため親戚が多く父の実家に集まっていたときだ。僕は話し相手になりそうな同じくらいの年の子がいればいいと思ったが、たいていはもう大人と言えるような年齢のいとこたちしかいなかった。
彼らが大人の話をしている中に踏み込んでいくのも気がひけたので、僕は縁側に出てひとり漫画を読んでいた。
比較的都会に住んでいる僕にとって父の実家は田舎すぎた。庭先に蝉やらトンボがやたら侵入してきたりするのはちょっとおもしろかったし、映画にありそうな古き良き田園風景みたいなのも素敵ではあったものの、そんななかで遊ぶのは僕の性にあわなかった。
「京ちゃん」
叔母の声に呼ばれ、僕はしぶしぶ立ち上がった。この広い家には古いけれども立派な部屋がいくつもあった。そのなかで割と特別な機会にしか使われないこぎれいな和室に僕は呼びいれられた。
「おじいちゃんのあのアルバムを探してんだけどね」
僕は前に見たときのことを思い出してアルバムを見つけてあげると、わざわざごめんねと言って叔母は思い出したようにお小遣いの入った小袋をくれた。
それはいいのだが、僕はさっきから叔母につき従っている小さい女の子が気になった。その子は僕が知らない子だった。
「この子ね、京ちゃんの遠い親戚にあたる子なんだけどね」
叔母はなんだか少しばかり不自然な流れで彼女を僕に紹介した。後から思えばこの紹介こそが僕が呼ばれた本当の理由のようだった。
みな忙しいから、と僕は彼女の相手をするよう頼まれた。かといって兄弟のいなかった僕には小さい子とどうやって遊んであげたらいいかわからず、確か漫画とか絵本でごまかしていた気がする。
とにかく僕はそうして彼女と初めて顔を合わせることになったわけだが、僕と彼女とはいずれ結婚をするのだということを聞かされたときには衝撃を受けた。