「鳥の城の戦」
「虎次郎」
「はい」
「鳥の城が落ちた理由、分かったそうじゃな」
「はい。少し詳しい報告が入りました」
「どうやって落とした?」
「兵糧攻めでございます」
「でも、鳥の城は大きな城じゃろ?」
「はい」
「兵も多かったはず」
「そうです」
「それなのに?」
「兵糧が尽きました」
「……」
「戦う前に、食べるものがなくなったそうです」
「どうしてそんなことに?」
「秋の収穫前だったことが大きかったようです」
「なるほど」
「そこを陸の国が狙いました」
「どうやって?」
「まず、商人を使ったそうです」
「商人?」
「都で米が足りなくなっている、という話を持ちかけたとか」
「本当に足りなかったのか?」
「いえ」
「嘘か」
「陸の国が流した話だったようです」
「それで?」
「相場の十倍で米を買う、と」
「十倍?」
「はい」
「それは売るじゃろ」
「城主もそう考えたのでしょう」
「もうすぐ収穫じゃから、今ある米を売っても大丈夫だと?」
「そのようです」
「……」
「かなり売ったそうです」
「全部?」
「かなりの量を」
「それはまずいな」
「はい」
「でも、商人だけでは城は落とせぬじゃろ」
「そこで陸の国の兵が動きました」
「大軍で?」
「逆です」
「少ない?」
「かなり少ない兵だったそうです」
「そんな兵で何をした?」
「商人や民間人に紛れて、鳥の城まで入り込んだそうです」
「兵が?」
「はい」
「城の近くまで?」
「はい」
「そして?」
「外から兵糧を運び込ませず」
「うむ」
「中では、先ほどの米を売ってしまった」
「……」
「結果として、城の中の食糧が減っていきました」
「戦う前から?」
「はい」
「それで兵糧攻めか」
「はい」
「少ない兵でも?」
「少ないからこそ、気づかれなかったのでしょう」
「なるほど」
「虎次郎」
「はい」
「陸の国、ずる賢いな」
「かなり」
「大軍を連れてきて、城を囲んだわけではない」
「はい」
「米を買って」
「はい」
「人に紛れて入り込んで」
「はい」
「気づいたら、食べるものがなくなっていた」
「そのようです」
「……」
「姫様?」
「怖いのう」
「はい」
「刀で斬られるより、米がなくなるほうが怖い」
「兵にとっては、どちらも怖いかと」
「そうじゃな」
「今回の件は、戦そのものよりも、米のほうが勝敗を決めました」
「米か……」
「はい」
「前に、兵糧を増やそうと言ったじゃろ?」
「はい」
「やっぱり大事じゃな」
「はい」
「でも」
「はい?」
「米を守ることも大事じゃ」
「その通りです」
「それに」
「はい」
「変な商人にも気をつけねばならん」
「そこも重要です」
「十倍で買うと言われたら?」
「普通なら喜びます」
「私なら?」
「姫様なら……」
「うむ」
「団子を十倍で買うと言われても売らないでしょう」
「なぜじゃ?」
「全部食べてしまいますから」
「……」
「姫様?」
「それは商人のほうが困るな」
「はい」
「では、団子は守られた」
「何からでございます?」
「知らん」
「……」
「でも、米はちゃんと守ろう」
「承知しました」
「食べるものを守るのも、国を守ることじゃな」
「はい」
「鳥の城の話、覚えておこう」
「私もそう思います」
「それから」
「はい?」
「十倍の団子の話が来ても」
「はい」
「虎次郎には教えぬ」
「なぜでございます?」
「全部買ってしまいそうじゃから」
「買いません」
「本当か?」
「本当でございます」
「……なら、安心じゃ」
「何がでございますか?」
「団子が売り切れずに済む」
「そこを心配されていたのですか」




