第七話 危機で急遽代役を選ぶ
ガーデンホール、トイレ前。
「安藤レイナはまだ来ないの!?」大会スタッフの一人が頭をかきながら尋ねた。「もうすぐ出番なのに!」
「ちょっとしたミスで、前の試合がまだ終わってないんだ!」別のスタッフがスマホを見ながら焦ったように答えた。
「時間がもう足りないよ! 舞子。」
「まさか前回みたいに三十分も遅れて再開するわけにはいかないでしょ!」舞子が言った。
「じゃあどうしろっていうの? まさか俺が上がれと?」
「無理だよ、乃亜。あんたとレイナは体格が違いすぎる! せめて体型が近い人を一時的に代わりに立てるしかない!」舞子が言った。
その時、マリハがトイレから出てきて、手の水滴を軽く振り払い、ポケットからハンカチを取り出して指を拭いた。彼女は洗面台の鏡で自分の姿を確認した――前髪が少し乱れていたので、指で整え、ドアを開けて廊下に出た。
二人のスタッフが突然、廊下の突き当たりにいるマリハに気づいた。
若い――
女性――
身長も大体合う――
そして何より――彼女は今日ゆったりとしたトレーニングウェアを着ていて、遠目に見ると、まるで控え選手のように見えた。
「見つけた!」乃亜の目が輝いた。
二人は顔を見合わせ、互いに同じ考えを持っていることを確かめた。
次の瞬間、二人はほとんど小走りでマリハに駆け寄った。
「あの、すみません、お邪魔します!」舞子が先に声をかけた。
マリハは突然呼び止められ、反射的に立ち止まった。
「お名前をお聞きしてもよろしいですか?」
「え?」マリハは一瞬戸惑った。「清優……マリハです。」
「清優さん!」乃亜がまるで命綱を掴んだかのように言った。「プロレスはできますか?」
「え?」
マリハは完全に戸惑ってしまった。
彼女はただトイレに出てきただけなのに、なぜ突然こんな質問をされなければならないのか?
「で……できるかな?」彼女は少し曖昧に答えた。「いくつか試合を見たことがあって、ルールは大体分かりますけど、ちゃんとしたトレーニングは受けたことがなくて……」
乃亜はすぐに舞子の方を向いた。
「どうする?」
「本当に時間がないんだ。」乃亜は焦って手をもみもみした。
舞子は歯を食いしばり、ついに決心した。
「こうするしかない。レイナに連絡して、できるだけ早く来てもらう。来るまで、先に清優さんに一時的に代わってもらうしかない。」
「レイナが来たら交代?」
「そう。」
「そうするしかないな。」
二人の会話を聞いて、マリハはようやく事の次第を大体理解した。
しかし理解すればするほど、彼女はますます呆然とした。
自分はただ試合を見に来ただけなのに。
それがなぜかプロレスラーの控えとして急遽呼ばれることになるなんて?
この展開はあまりにも理不尽ではないか!
「清優さん!」乃亜が両手を合わせて、必死に懇願した。「お願いです! 二十分だけ! 二十分だけ持ちこたえてください!」
マリハは口を開けたまま、頭の中は混乱していた。
しかし、彼女がちゃんと断ることを考える間もなく――
二人はすでに左右から彼女を挟み、半ば押すように半ば引くように、楽屋の更衣室の方へと歩き出していた。




