第三十二話 新しい名前、新しい舞台
「彼女たちはもうチーム再編の計画を諦めたようです。最近はこれといった動きも見られませんし、以前の準備も止まっています。」
「よし……これが十万円だ。引き続き監視して、逐一報告しろ!」
「……」
「どうした……まさか命の金はいらないのか……」
「彼女たちはあなたにとってもう役に立たないんでしょう? なぜまだ監視する必要があるんです?」
「なぜ? 動機なんて必要ない。誰かが巻き込まれ、誰かが消耗させられ、誰かが入れ替えられる――それは全てシステムが正常に動作した結果に過ぎない。」
乾金蔵は狡猾な表情を浮かべ、彼の本当の意図は全く見えなかった。
「ごく普通のことだろ、藤崎雪。今のお前は俺の手駒だ、だから俺についてくるしかない。」
「でも……」
「お前は俺がずっと表舞台に立たせてやる。」
その女の冷厳な言葉に、藤崎雪はもう一言も発せなかった。彼女は全く反論する勇気がなく、最初に部屋に入ってきた時のあの英気はどこにもなかった。
「岩島夢……まだ覚えているか?」
藤崎雪はうなずいた。
その女はそれ以上続けなかった。
傍らの幕が突然落ち、一枚の写真が現れた。若い女が椅子に縛られ、体中傷だらけだった。
「彼女は知りすぎたようだ。」
もう一枚の目を覆いたくなる写真が現れた――それは「死体」だった。
藤崎雪は写真を見た瞬間、強い生理的嫌悪感を覚えた。その死体の額の弾痕を見て、彼女は一瞬片手で自分の額を覆い、もう片方の手で口を覆い、繰り返しこらえて吐き出すのを避けた。
「早く行け、俺のカーペットの上で吐くなよ……」
その生理的嫌悪感は意志の力で押さえつけるのが難しく、彼女はすでに完全に一つの駒となっていた。
藤崎雪が部屋を走り出た後、その女は冷笑した。
「佐々木真紀……今度のお前は一体誰なんだ?」
「乃亜はどこ?」」
会議室で、葵は簡単に今後の計画を説明しようとしていた。
舞子が顔を上げて言った。
「昨夜飲んでる時、葵さんが新しいロゴを作りに行かせたって言ってましたよ。」
葵はそこに立ち、昨夜何を言ったか必死に思い出そうとしたが、全ての記憶を掘り返しても、いつそんなことを言ったか思い出せなかった。
「これからは酒を控えよう。酒は仕事の邪魔をするからね。」葵は一瞬固まり、額に手を当て、それから付け加えた。「……飲みながら仕事の話もしないように。」
「じゃあ、乃亜が戻ったらまた話すわ。」葵は咳払いを一つし、SANOVIAの最初の会議を始めた。
葵は二つの書類を机の上に置いた。一つは旧三沢Studioの抹消証明書、もう一つはSANOVIAの登記資料だった。
「三沢Studioはもう抹消しました。今日から、この名前は二度と公の記録に現れません。」
彼女はSANOVIAの登記資料を開き、二人の前に押し出した。
「私たちを監視している連中は、三沢Studioの全てをもう知っています。世論に潰された二人のタレント、元の会社に売られた一人のマネージャー、一度壊されたスタジオ。これらの情報はすでに彼らの視野に固定されています。」
「だからSANOVIAは私たちの新しい殻です。表面的にはIP企画とコンテンツ開発を行い、対外的にはクリエイティブ会社。内部的には、それはあなたたち二人のマネジメント会社で、あなたたちに関する全ての業務は、全てSANOVIAのルートを通します。」
「そうなると、私たち二人はもう公のイメージがあるんですけど。」泉の口調には一抹の懸念があった。「ネットの連中は私たちの顔を知っています。名前を変えて何が解決するんですか?」
葵はうなずいた。
「だから越谷さんと相談したの。Project Zはまずレスラー選抜戦を開きます。公開選抜だけど、選抜過程は非公開。あなたたちは素人として参加し、マスクを被って上がります。」
「選抜が終わったら、合格した新人選手は全員SANOVIAと契約します。プロレスラーはProject Z直属になります。こうすれば、あなたたちは自然にSANOVIAに加入できる。」
「おお!」泉は葵の思慮の深さに心から敬服した。「確かにこれなら全てが自然だ。」
「うん、レスリング業務はこれで明確になったから、クリエイティブ会社として、私は自分の人脈を活かせるわ。」
「この二つの業務……互いに連携しているわけではないの?」
マリハは疑問に満ちた顔で尋ねた。明らかにさっき聞いた内容を、まだ完全に理解していなかった。
「もちろん連携していないわ。あなたたち二人の本当の身元は、知る人が少ないほど安全なの。」
「じゃあ……一生ずっと隠し続けるの?」
「いいえ! 全てが終わったら、あなたたちは自然に自分の身元を取り戻せるわ。」
「このサイクル、かなり長くなりそうだね。」
「マリハ、まだ始まったばかりなのに、もう尻込みしてるの?」
「あ、違う!」マリハは慌てて手を振った。「そうじゃなくて、ただ聞いてみただけ。」
泉はそれ以上追及せず、少し沈黙した。
「そういえば、マリハ、あなたの後輩……奈津実とは今も連絡ある?」
「奈ちゃん? 前はよく連絡してたよ。」マリハは一呼吸置き、口調が次第に低くなった。「ただ、事件が起きてから、彼女も巻き込まれるのが怖くて……それで、返信しなくなったの。」
「彼女は今何をしてるの?」
「デザイン関係の仕事をしてるみたい。」
「他の人を巻き込みたくはないんだけど……」
泉は少し間を置き、何かを思い出したようだった。
「確か、彼女前は漫画も描いてたよね?」
「漫画は描いてたけど、なかなか出版社が作品を出してくれなくて、それからは描かなくなったんだ。」
「そうなんだ……」
泉は何か考えるようにうなずいた。
「じゃあまず彼女に連絡してみて、最近時間があるか聞いてみて。もし来てくれるなら、漫画の出版を手伝えるかもしれない。」
「うん、分かった。」
「同時に両方の業務を進めると、手が回らなくならない? それとも……もっと付け入る隙を残すことにならない?」泉が尋ねた。
「今はまだ何とも言えないわ。」葵はしばらく沈黙した。「一歩ずつ進むしかない。不確定要素が多すぎるから。」
「もしそうしなければ、私たちはただ業界に別れを告げるだけ……本当に何も分からないまま去るのは、悔しくないの?」
三沢葵はこの時少し熱くなっていた。彼女が知っている闇は二人が合わせたよりも多いが、それは言えなかった。それらのことを一度口にすれば、業界に残れるかどうかの問題ではなくなる。
会議室は数秒間静まり返り、誰も口を開かなかった。
舞子のスマホが突然鳴った。彼女は画面を一瞥し、すぐに立ち上がり、早足でドアを押して出て行った。ちょうど電話を終えて戻ってきたマリハとすれ違った。
マリハは席に戻った。
「奈ちゃんと連絡したよ。参加できて嬉しいって、すぐ来るって。」
葵はうなずき、泉と出版計画の初期案について、いくつか言葉を交わした。二人はしばらく話し、雰囲気は先ほどより軽くなった。
その後、ドアが再び押し開けられ、舞子が入り口に立ち、手にはまだスマホを握っていた。
「葵さん、少し休みをいただきたいんです。家に帰ります。」
「どうしたの?」
「家族が……病気で。」
「深刻? お金が必要? こっちのことは気にしないで、必要ならいつでも言って。」
「いいえいいえ。」舞子は手を振った。「ちょっと見に帰るだけです、大したことじゃないので。」
「本当にいいの?」
「本当にいいんです。」
葵は彼女を一瞥し、それ以上追及しなかった。
「行ってらっしゃい、気をつけてね。」
舞子は返事をし、振り返って出て行った。廊下の足音が次第に遠ざかった。
ちょうどロゴを作り終えて戻ってきた乃亜ともすれ違い、彼女はその巨大なロゴを抱えたまま会議室に入ってきた。
「舞子が今出て行ったよ、どうしたの?」
葵が答えようとした時、顔を上げて乃亜がその巨大なロゴを抱えている姿を見て、突然言葉を止めた。
泉はそれを見て、まず微かに笑い、それから顔をそらして唇を噛んで笑いをこらえた。
マリハの笑いは比較的控えめだったが、笑いをこらえようとしても全くこらえきれず、口元がどんどん上がっていった。
「え? 一体何が起きたの?」
七月下旬の東京、空気にはまだ真夏特有の蒸し暑さが残っていた。
その女の子はそんな天気を全く気にしていなかった。
彼女は体に沿った白い半袖トップスを着て、襟元と袖口には小さな装飾が施され、下は薄い色のハイウエストミニスカート、スカートの裾が歩くたびに軽く揺れ、細長い脚が覗いていた。腰には細い装飾ベルトを締め、手首にはいくつかの重ね付けしたアクセサリーを着け、全体から気ままさと主張の強さが漂うギャルの雰囲気だった。
最も目立つのは足元の黒いミドルブーツで、真夏なのに彼女は天気を全く気にせず、ブーツで全体のスタイルをしっかりと支えていた。ブーツの筒がふくらはぎに沿って上に伸び、ミニスカートと鮮やかな視覚的コントラストを形成していた。
彼女は薄茶色に染めた長い髪をしており、毛先は少しカールし、前髪は丁寧に整えられ、耳には小さなイヤリングが揺れていた。顔のメイクも普通の女の子より明らかに大胆で、アイメイクは目の輪郭を強調し、まつげはカールし、唇にはツヤ感のあるリップグロスを塗っていた。
肩には小さなショルダーバッグを無造作に掛け、スマホは手に持っていた。
彼女は歩くのに少しも遠慮がなく、ミニスカート、ブーツ、やや誇張されたアクセサリーで、人混みの中でひときわ目立っていた。
東京七月末の三十度以上の暑さの中でも、彼女はこの服を着こなしていた。暑い夏は彼女のおしゃれを追求する気持ちに全く影響を与えられなかった。
「ハロー~お姉さま!」
女の子はエレベーターから飛び出すと、甲高い声で挨拶した。
しかしエレベーターホールはオフィスからまだ少し距離があり、逆にロゴを取り付けていた乃亜を驚かせた。
「あら! 大変失礼しました、ちょっと興奮しすぎました。ここはSANOVIAですか?」
「はい。」乃亜はちょうどロゴを壁に掛け終え、振り返って女の子を指さし、それから梯子を降りた。「どなたをお探しですか?」
「万里葉お姉さま!」
「は?」乃亜は目の前の不速の客に多少の警戒心を抱いた。
「ちょっと待ってください。」そう言って梯子を折りたたみ、道具室に戻した。
数秒も経たないうちに、乃亜は女の子を連れてオフィスに入った。
マリハが迎えに出た。
「お姉さま! あら、三沢先輩。」
「奈ちゃん! おお、この服……どこかで見たことあるような!」」
「これはレトロ流行ギャルスタイルですよ!」女の子は微笑みながらマリハを見た。「当年のギャルアイドル頂点、堀口奈々が着ていた同款の服です!」
その言葉を聞いて、マリハは一瞬にして本当の「堀口奈々」に視線を落とし、口元の笑みを抑えきれなかった。
葵の頬が微かに赤らみ、視線が泳ぎ始めた。
乃亜と奈津実は年が近く、当時堀口奈々のライブ配信を見ていた時期もあったので、二人はすぐに意気投合した。
泉はアイドルのライブ配信などにあまり興味がなかったので、全く分からなかった。
「奈ちゃん! SANOVIAへようこそ。」
「皆さん、初めまして! 八月一日奈津実です、よろしくお願いします!」
「ちなみに、八月一日奈津実は彼女の本名ですよ。」




