第二話 初めて真剣にプロレスを見た
テレビの生放送には間に合わなかったので、数日後にネットで見るしかなかった。
『境界・事件記録簿』は新世代の長寿ドラマで、視聴率は安定しており、老若男女に親しまれている。
マリハがこの作品に出演できるようになったのは、彼女が東京に来たばかりの頃に遡る。
Anthillは老舗の俳優事務所で、これまでに多くの大ヒット映画やドラマの制作に携わってきた。
マリハはオーディションの通知を受け取ると、すぐに東京へ駆けつけ、オーディションは順調に進み、見事Anthillに入所することができた。
Anthillの社長は蟻塚数正という。
中年の男性で、坊主頭、笑うと目が細くなり、話し方はゆっくりと優しい口調で、隣のおじさんのようだ。
いつも机の後ろに座り、手に茶碗を持ち、外見はとても優しそうに見える。ただ、その小さな目には、時折少し気持ちの悪い光が走ることがある――しかしその異変はすぐに彼の温和な笑顔に隠されてしまう。
もう一人、Anthillと深く関わっている人物がいる。それは漆間夕娜という有名女優兼プロデューサーだ。
彼女は同時に企画会社Yunaの社長でもあり、Anthillへの出資だけでなく、『境界・事件記録簿』シリーズを制作する凪Filmの株式も保有している。
そのため、彼女にはAnthillの俳優をこのドラマに出演させる力があった。
芦名ひかる監督はマリハの演技力に目をつけた。マリハの表現はまだ少し未熟で、台詞もほとんどなかったが、監督はこの若い女性を一目で気に入った。
その後、監督はまずマリハ本人に連絡を取り、次に社長の蟻塚数正に連絡し、最終的に協力プランをまとめた――マリハにまず小さな役を少しずつ演じさせ、将来適切な機会を見つけてレギュラーに昇格させるというものだ。
新人としては、マリハはかなり早いペースで成長していた。
しかし、そのまま二年が経過した。
マリハはもちろんこんな風に日々を過ごしたいわけではなかった。だが最近はなかなかオーディションに通らず、一生懸命頑張ってもどうしようもなく、現在の役の幅は限られてしまっていた。
だから彼女は今回のレスラー役に特に力を入れていた。この役を通じて、自分の演技の幅を広げたいと思っていたのだ。
プロレスとは、リングの上で競技形式で行われるパフォーマンスアートであり、ショーの要素を含んだスポーツエンターテインメントだ。
マリハはまだあまり詳しくなかった。せいぜいテレビ番組のコマーシャル時間に、数秒の断片を偶然見かけたことがある程度だった。
マリハは葵から送られてきたメッセージを開き、そこにはいくつかの動画が含まれていた。彼女はそれをあまり大きくない、あまり新しくもない液晶テレビに映し出した――青い画面が一瞬点滅し、再生が始まった。
マリハの目は一瞬も動かずに画面に釘付けになった。
ドン――また鈍い音がした。
彼女は「ひゅっ」と息を呑み、唇を噛んだ。ただの映像なのに、自分の骨が痛むような気がした。胸の奥から何かがこみ上げてきて、呼吸が浅くなった。
頬が熱く火照り、頬骨から耳の先まで熱が走った。
「うぅ……」熱がさらに悪化したのか、それとも別の理由なのか。
マリハは布団の中で丸くなり、頭はぼんやりしていたが、目を閉じても全く眠れなかった。プロレスの映像が、巻き戻しのビデオのように脳内で繰り返し再生された――選手がリングに叩きつけられる鈍い音、跳ね返るロープ、宙を舞う影……一つ一つの瞬間が頭から離れなかった。
彼女は思い切って目を閉じた。ぼんやりとした意識の中で、自分もそのリングの上に立っているような気がした。
頭上からの照明がまぶしくて目を細めると、周囲の観客の叫び声が波のように押し寄せてきた。
足元に広がるのは、青いキャンバスのプロレスリング。ロープは腰の高さに張られ、太いゴム管が黒いテープでしっかりと巻かれている。しかしもっと遠くを見ると、何も見えなかった。観客席は真っ暗な闇の中に消え、最前列のフェンスだけがかすかに光を反射しているだけだ。
照明が強すぎて、リングのこの小さな場所しか見えなかった。向こう側に誰かが立っているようだったが、それもぼんやりとした輪郭だけだ。
「チリンチリン」
ベルの音が響いた。
向こうの人が何か言っているようだった。マリハは目を細めて見たが、おそらく啖呵を切っているのだろう。しかし彼女の頭はあまりにぼんやりしていて、声は水に濡れたように何も聞こえず、耳鳴りと遠くの観客席の騒めきだけが混ざり合っていた。
彼女が反応する間もなく、世界が突然反転した。
大きな手が正面から伸びてきて、五指を広げ、彼女の腰をしっかりと掴んだ。
次の瞬間、彼女は空中に持ち上げられた。向こうの人がまるでぬいぐるみのように彼女を持ち上げ、何の苦もなく掲げた。
「え――」
マリハは悲鳴すら上げられなかった。足が地面を離れ、視界がぐるぐると回り、頭上の照明が顔の上を行き来し、目が開けられないほど眩しかった。リングの青いキャンバスが足元で高速で回転し、ロープと柱が目の前を何度も通り過ぎた――一周、二周、三周、四周。
「ドォオン――!!」
背中全体がリングの真ん中に叩きつけられ、リング全体が震えた。身体は一瞬折りたたまれ、その後跳ね返り、最後にバラバラになってそこに広がった。
彼女の口は開いていたが、声は全く出ず、身体は空っぽになったように、咳をする力さえも残っていなかった。
目の前は真っ暗で、耳鳴りが響くばかりだった。リング上の照明が視界で揺れ、揺れ、次第にぼやけていった。
「チリンチリン」
再び目を開けると、空が明るくなり、目覚まし時計が鳴り止まなかった。
マリハはぼんやりとスマホを探し、指を枕元で何度も滑らせたが、何にも触れなかった。
彼女は辛うじて片目を開けると、視界の中の天井がまだ回っていた。
身体はトラックにでも轢かれたかのように、どの筋肉も痛みを訴えていた。肩から腰、腰から膝まで、骨の隙間からも痛みが滲み出ていた。
彼女は目を閉じて呟きながら、腕をもう一度枕元で探ったが、スマホはどこかに落ちてしまったらしい。
目覚まし時計がようやく止むまで。
マリハはベッドにぐったりと横たわり、深く長い息を吐いた。世界が静かになり、骨の隙間の痛みさえも少し和らいだような気がした。
そして、再び電話のベルが鳴り響いた……




