09:ダンジョンマスター、正体がバレる
【従魔の憩いの宿】の主人、ランドルに案内され、オレは宿の裏の空き地にやってきた。
勿論オレの後ろには、ミノさんとナデシコが控えている。
「ここならゴミ処理場とやらを造っても構わないぞ」
オレが1キログラムの塩と引き換えに、提案したゴミ処理場は、どうやらそこに造ることになりそうだ。
そこは周囲を民家の裏手に囲まれ、まるで人気のない狭い庭だ。
オレの部屋からは少し遠いが、地下を通して、ここまでダンジョンの領域を伸ばせば問題はない。
「それじゃあ早速ゴミ処理場とやらを造ってみせてもらおうか?」
そこにはなぜか、冒険者ギルド長のアガートも見学に来ていて、偉そうにしきっている。
「それでは初めさせていただきます・・・・」
オレはその空き地に、ゴミ処理場を造ることになった。
そのゴミ処理場は、ダンジョン化させた場所にゴミを置くことで、ダンジョンに吸収させ、ゴミ処理を行う場所だ。
それによってオレは、ゴミからダンジョンポイントを得ることが出来て、さらに街人はゴミを処理することが出来る、まさにウィンウィンのゴミ処理場なのだ。
オレはその空き地の一角に、四角い縦穴を開けると、アイテム製作モードを起動して、その縦穴にあう大きさの、石製の縦長の箱を造った。
その石製の箱は、頭頂部に扉がついており、そこからゴミを捨てられるようになっている。
その石製の箱を、頭頂部だけ出す形にして、四角い穴に納めるのだ。
後はその石製の箱をダンジョン化すれば、ダンジョン式ゴミ処理場の完成だ。
「それは土魔法か? 無詠唱な上にかなり高度な操作に見えたが?」
「え、ええ・・・・そんなところです・・・・」
本当はダンジョンマスターの力で造ったのだが、そこは誤魔化しておく。
「ほう? これはどういう原理でゴミを魔力に変えるんだ?」
そう言えばオレは、ゴミを魔力に変える実験と称して、このゴミ処理場を提案した記憶がある。
ただオレはダンジョンマスターの力については、理解しているわけではない。
「そ、それは秘匿事項ですので・・・・」
研究には、もらせない秘密などがあるはずだ。
オレはそれを秘匿事項で、誤魔化すことにした。
「ほう・・・・秘匿事項ね・・・・?」
するとアガートは疑うような目で、オレを見ながらそう口にした。
いったいなんだと言うのだろうか?
「おおおい! お前ら出てこい!」
するとアガートは、そこで突然後方に向けて、そう声を上げたのだ。
いったい誰を呼んだのだろうか?
「あれ? お前達は・・・・」
そこに現れたのは、青き翼のメンバーだった。
「すまねえリヒト・・・・」
そして出て来るや否や、リーダーのダイソンは、そう言ってオレに頭を下げたのだ。
「はあ?」
その様子にオレは、頭をかしげながらも不安を覚えた。
これはもしかして・・・・オレの正体がバレたのか?
「そいつらは悪くねえ・・・・俺が色々問い詰めて強引に聞き出したんだ」
「いったい何を?」
「お前・・・・ダンジョンマスターだろ?」
そうアガートがオレの耳元で小さく呟くと、それが聞こえていたのか、ミノさんとナデシコの気配が豹変した。
2人はアガートに対する警戒を強め、いつでも攻撃を仕掛けられるように構えたのだ。
「そう身構えるこたあねえ・・・・。俺はリヒトをどうこうする気はねえんだ。もっともどうこうしようたって、この街にいる戦力じゃあお前クラスのダンジョンマスターには対抗できねえしな・・・・」
「いったいいつから?」
「初めにあった時だ・・・・」
「なんだと? いったいどうやって?」
オレがダンジョンマスターであることを見破るには、まずオレが人間でないことを、見抜く必要がある。
オレが人間でない証拠である翼と天使の輪は、隠蔽魔法によって完全に隠されているし、今のオレはどう見たって人間にしか見えないはずだ。
いったいどうやって、オレの正体を見破ったというのだろうか?
「俺には相手の内包魔力を見る手段がある」
「なんだって!?」
魔力視とかいう類のものだろうか?
相手の魔力量を見破るような・・・・
「リヒトの魔力は・・・・それこそ人もモンスターも遥かに凌駕するような、桁違いの魔力だった。俺は冒険者時代にダンジョンマスターと何度かやりあったことがあるんだが・・・・そのダンジョンマスターの魔力が、今のリヒトに匹敵するくらいだったんだ」
どうやら俺は初めから、魔力量で目立ってしまっていたようだ。
この世界でダンジョンマスターであることを隠すのは、難しいことなのだろう。
それこそ魔力量を誤魔化すアイテムでもないと、オレの正体を隠すのは無理なのだろう。
だとしたらいくら姿を隠蔽しても、無駄だったということになる。
これはこの異世界の人間に対する、オレのリサーチ不足と、言わざるを得ない。
ダンジョンを出る前に、もっと慎重に、異世界の人間について知るべきだったのかもしれない。
「で? オレの正体を知ったあなたは・・・・いったいどうするつもりですか? オレをこの街から追い出すつもりでも?」
いや・・・・オレを追い出すつもりなら、とっく行動に移していたはずだ。。
いったいアガートという男は、何を企んでいるのだろうか?
「いや・・・そんなつもりは毛頭ない・・・・。お前が悪い奴でないことは、その人となりを見てわかっているしな・・・・」
その言葉を聞いて少し安心した。
その言葉からオレは、はっきりと敵対の意思がないことを、感じ取れたからだ。
まあ・・・まだ罠の可能性も捨てきれないが・・・・
「だが会ってもらいたい人物がいる・・・・」
「会ってもらいたい人物? いったい誰に?」
勇者・・・もしくはプレイヤーなる存在でもこの異世界にはいるのか?
「この土地の領主だ」
「はあ!?」
そのどちらでもなかった。
ダンジョンマスターとは、熟練冒険者がレイドを組んで、やっと対抗できる程の、危険な存在だと聞いている。
そんな危険な存在を、なぜ領主という最も守るべき立場の人間に、会わせるというのだろうか?
オレはそのアガートの言葉が信じられず、驚愕で目を丸くしていた。
機会の巡り合わせとは、わからないものだ。
オレは以前からある交渉のために、この街の領主には会いたいと思っていた。
それが今推し進めている、ゴミ処理場の件に他ならない。
どうやらオレは、この街でもっとも会いたかった人物、領主に会う機会を得たようだ。
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