06:ダンジョンマスター、宿屋に行く
あれから青き翼のメンバーと別れたオレ達は、彼らの紹介である宿に向かった。
その宿は道が少し入り組んだ場所にあったので、見つけるのには苦労したが、彼らから貰った地図をたよりに、なんとかたどり着くことが出来た。
「ようこそ従魔の憩いの宿へ!」
その宿が【従魔の憩いの宿】だ。
従魔の憩いの宿は木造の建物で、従魔専用の小屋を完備した宿だ。
従魔を従えていた元冒険者が立ち上げた宿で、馬や従魔と共に、宿泊することが可能だという。
従魔は冒険者ギルドの従魔小屋で、有料で預かってもくれる。
だがさすがにそこに預けたまま、宿に宿泊するのは預けられた側も寂しいだろうと思い、紹介してもらったのだ。
通常の宿よりは高額のようだが、従魔と一緒に泊まれるのが、この宿の好ましいところだ。
「私はこちらの宿の娘で、ケイシーといいます!」
「オレはリヒトだ。よろしく」
対応してくれたのは、12歳くらいの元気な少女だった。
内装は木造で手狭な感じだが、明るい印象の間取りで、雰囲気は悪くない。
「大きいですね・・・・。ミノタウロスの従魔とは珍しいです!」
ケイシーは従魔に慣れているようで、物怖じなくミノさんを見上げ、興味深げにそう口を開いた。
「おで、ミノサンという・・・・よろしくぶも」
そんなケイシーにミノさんも挨拶を返した。
「おおお! そちらのミノタウロスさんは会話が可能なんですね!? 後で部屋におしゃべりに行ってもいいですか!?」
「主・・・いいか?」
「ああ、別にいいんじゃないか? ていうかそれぐらい自由にしろ!」
ダンジョンマスターであるオレに、自らの行動の確認をとるのは、彼らの本能のようなものだと思う。
だがオレは彼らには、できるだけ自由でいて欲しいと願っている。
「従魔はそちらの一体でいいですか?」
「いや・・・・。こっちのメイドはスーパースライムなんだ・・・・」
「紹介に預かりましたナデシコです・・・・。よろしくお願いします」
オレが紹介すると、ナデシコは片手をスライムに変えて、ぐにゃぐにゃと流動させた。
自らがスーパースライムであることを主張しているのだろう。
「スーパースライムの従魔ですか! こちらもまた珍しい従魔です!」
「騒がしいぞケイシー! さっさと客を案内しないかい!?」
するとカウンターの奥の方から、宿の主人らしき男が出て来た。
男は口ひげを生やして、頭をスキンヘッドにしている。
逞しい体つきで、まさに元冒険者といった風貌だ。
エプロンをしていることから、料理をしていたのではないかと思われる。
「俺はランドルだ! 宿の主人件料理担当でもある!」
男はオレ達の前にやってくると、そう豪快に自己紹介をした。
「ほう? ミノタウロスにスーパースライムの従魔とは珍しいな? ミノタウロスには通常の部屋は無理だが、干し草を敷いた馬小屋になるがいいか?」
ミノさんの身長は3メートルはある。
その上非常に逞しい体つきをしているので、人間の部屋ではかなり手狭になりそうだ。
だが彼だけ馬小屋というのも少し可哀そうな気もするのだが・・・・
「かまわないぶも! その干し草というのが気になるぶも!」
ダンジョンにある畳部屋の畳は、ミノさんのお気に入りだった。
それは歯形が付くくらいに・・・・・
ミノさんは隙あらば畳を食おうとしていたので、干し草も気になっているのだろう。
「人間1名に従魔が2名で・・・・しめて一泊2500カレスになる」
オレは支払いを済ませるために、さっそく冒険者ギルドで貰った巾着袋を開いてみた。
そのずしりと詰まった巾着袋の中には、沢山の硬貨が詰め込まれていた。
その中には銅貨、銀貨、金貨と、さまざまな硬貨が入っている。
2500カレスなら・・・
銅貨が一枚100カレスで、銀貨が一枚で1000カレスだ。
とりあえずいつまでいるかは未定なので、3日分ほど支払っておくことにする。
なので銅貨15枚と銀貨6枚をじゃらりと支払う。
「3日分だが、これで足りるかおやじ?」
「ああ丁度だ・・・・」
オレが硬貨を差し出すと、ランドルはその確認を済ませ、硬貨を受け取った。
「馬小屋に隣接している部屋が空いていたろ? そちらにお客人を案内して差し上げろ」
「任せてお父さん!」
支払いの確認が終わると、さっそくデイジーが部屋へ案内してくれた。
「ここがリヒト達の部屋だよ!」
ケイシーに案内されてやってきた部屋は、窓から馬小屋が見える部屋だった。
ベッドは二つで、狭く簡素な部屋だ。
馬小屋の方にはドアがついていて、そこから馬小屋と行き来できるようになっていた。
「干し草というのはなかなかいいぶも。それに外の空気に触れられて心地いいぶも。おで、この部屋、気に入ったぶも」
部屋に入るとミノさんは、さっそく馬小屋に行き、においをかいだり、上に寝ころんだりして、敷かれている干し草の感触を確かめていた。
どうやらミノさんは干し草が敷かれた、開放的な馬小屋が気に入ったようだ。
ダンジョンの中にも馬小屋のような部屋があれば、ミノさんもタウロさんも、気に入ってくれるかもしれない。
「チップはこれでいいかな?」
青き翼のメンバーから聞いた情報によると、この国にはチップの文化があり、銅貨1~3枚を渡すのが、一般的なようだ。
オレはケイシーにチップを三枚握らせた。
「ありがとう! 私お父さんの手伝いがあるからまた後でね!」
そう一言礼を述べるとデイジーは、父親のいる調理場へと駆けて行った。
「リヒト~! 夕食の時間だよ!」
夕食の時間になると、デイジーが各部屋に声を掛けてまわる。
この宿の食事は一階にある、食堂でいただくのだ。
食堂に行くと、すでにそこには多くの冒険者が集まり、騒がしく食事をしていた。
なおミノさんは先ほど運び込まれた、家畜用の飼料を頂いているので、食堂にはついてこない。
ついてきたのは、人に擬態したナデシコのみだ。
「ポトフにミルクに・・・それに肉か・・・・」
夕食には具の沢山入ったポトフに、飲み物はミルク、意外にも肉が出た。
中世ヨーロッパでは肉が高価で、庶民の口には入りにくかったと記憶している。
ところが出された料理の中に、分厚いステーキがあったのだ。
気の良い冒険者によると、このリベラックの街は冒険者の街であり、狩られたモンスターの肉が大量に持ち込まれるという。
そのため肉には不自由しないという。
ところが調味料が乏しいせいか、ポトフは味が薄く、肉のくさみが消しきれていないのが少し残念に感じた。
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