04:ダンジョンマスターと従魔登録
「まあまあ落ち着きなよ二人とも・・・・今日会ったばかりのギルド長が、こちらの事情なんて知るわけがないんだからさ・・・・」
オレは興奮気味に、冒険者ギルド長であるアガートに詰めかける、ミノさんとナデシコに、そうなだめるように言った。
オレ達は現在従魔登録をするために、冒険者ギルドにやってきていた。
するとどうやらそれには、彼らとの信頼関係を試す試験が必要なようで、ミノさんとナデシコが必要ないと抗議しだしたのだ。
「それよりもオレ達の仲良しぶりを見せつけてやろうじゃない?」
「主、それいい案ぶも!」
「そういうことであれば、私もやぶさかではないので引き下がりましょう・・・」
「さっきも聞いたが、なぜそのメイドまで従魔登録の試験に加わるような勢いなんだ?」
アガートはナデシコを、懐疑的な目で見ながらそう口にした。
アガートは人間の少女にしか見えないナデシコが、なぜ従魔であるミノさんと同様に、従魔登録の試験がうんぬんと騒ぐのか、疑問で仕方がないようだ。
ナデシコは人間になりすまし、ばれないようにこの街に潜入させたスーパースライムだ。
それは誰もが、スーパースライムである彼女の完璧な人間への擬態を、見破れないと自信を持っているからに他ならない。
だがこの調子では、いつか自ら正体を明かしかねない・・・・
「青き翼の皆、ちょっと・・・・」
オレは少し離れた場所に、青き翼のメンバーを手招きし、今後のナデシコについての相談をすることにした。
それはこの際だから、ナデシコの正体を明かし、彼女の従魔登録も、してしまってはという相談だ。
その方が後でナデシコの正体がバレて、もめるよりはいいと思ったからだ。
まあさすがに従魔の主人である、オレの正体まで明かすつもりはないが・・・・
「リヒトよう・・・・まさかあの嬢ちゃんの正体を明かす気か?」
「スーパースライムは村一つ壊滅させかねないような怪物・・・・正体を明かせばどうなるかわからない」
「ひえ~! やばいじゃん!」
「でもこの際正体を明かした方が、よくないかな?」
「俺は反対かな・・・・」
オレ達はそう小声で、周囲に聞こえないように話し合う。
ある意味正体がわからないぶん、ミノさんよりもナデシコの方が、危険なのは確かかもしれない。
「おい・・・・何をこそこそと相談していやがる? まさかそのメイドの正体までモンスターだって言わないよな?」
するとこそこそと相談し合うオレ達の様子を見て、アガートがそう尋ねて来た。
「えっと・・・・善良なスーパースライムを街に連れ込むのは問題がありますかね?」
オレは勇気を出して、そうアガートに尋ねてみる。
「「「リヒト」」ちゃん!」
すると青き翼のメンバーが、焦ったようにそう声を上げた。
「・・・・基本どんなモンスターでも、従魔登録さえしていれば、問題はないが・・・・ただ、スーパースライムが従魔契約に応じたという話は聞いたことがない・・・・」
ところがアガートはオレを睨み付け、重々しい口調でそう口にした。
これはちょっとやばい状況か?
そして沈黙が続く・・・・
「だがまあそいつらと仲良くつるんでいるところを見ると、善良なスーパースライムというのは本当のようだな・・・・」
しばらくしてからアガートは、緊張を解いてそう口を開いた。
見るとナデシコは、仲良く女性陣と、怯えたように固まっていた。
どうやら彼女らと仲良くしていたのが功を奏したようだ。
「リヒトよう・・・・何かするなら事前に相談してくれ! 心臓がもたない!」
だがダイソン他青き翼のメンバーは、そんなオレにご立腹だったがね。
「わ、悪い皆・・・・。後で必ず埋め合わせをするから・・・・」
そんな青き翼のメンバーにオレは平謝りした。
「それから試験は合格だ」
「え? いつ試験を?」
どうやら試験は、オレが気付かないうちに終わっていたらしい。
いったいいつの間に試験をしたというのだろうか?
「そもそも従魔登録の試験は、従魔が本当に主人の言うことに従うかどうかの試験だ。そのミノタウロスとスーパースライムは、お前さんの言うことには従っていただろ?」
確かにミノさんとナデシコは、会話の中で、オレの言うことには従っていたと思う。
なら合格で・・・・いいのか?
「それからそこの嬢ちゃんには、本当にスーパースライムであるか、証明してもらっていいか?」
そう言えばアガートには、ナデシコがスーパースライムであることは告げたが、実際に見せてはいなかった。
アガートはこの完璧な擬態を、見破れないので、本当にナデシコがスーパースライムであるのか、信じられないのだろう。
「お安い御用です! ナデシコ!」
「かしこまりました主・・・・」
ナデシコはオレが命じると、擬態を解いてスライムの姿になった。
「ぬあ! 本当に擬態していやがった!」
「・・・・!!」
するとその様子に、見ていたアガートとギルド嬢メリーヌが驚愕する。
リアムなんか再び腰を抜かしていた。
あの人本当に臆病だな・・・・
「で? お前ももしかして・・・・モンスターだったりしないよな?」
続けてアガートはそう圧をかけつつ、オレを睨みつけて来る。
「えっと・・・・。それはどうでしょうか?」
オレはそう言って目を反らし、その言葉を誤魔化した。
まそんなオレは、ダンジョンマスターだがな。
従魔の主人であるオレまでが正体を明かしたら、それこそ従魔の主人がいないという事態に陥りかねない。
信用されているのは人間であって、所詮モンスターはそれに従う従魔なのだ。
仕える人間がいなければ、信用すらされない。
まあオレの見た目は天使だし・・・最悪獣人とかで誤魔化せそうだがな・・・・
そんな中ナデシコは、再びしゅるしゅると人に戻り、皆の注目を集めている。
器用にもメイド服を着用すると同時に、人の姿に擬態するという芸当を見せていた。
「それじゃあミノサンとナデシコには、従魔である目印に、この証を付けてもらう」
アガートが掲げたのは、冒険者ギルドの印の付いた布切れだった。
ナデシコなら腕に巻いておいて、ミノさんには角あたりがいいだろう。
オレはさっそく貰った従魔の証を、ナデシコとミノさんに付けてあげた。
「特別感があって、なんだか嬉しいなおで!」
「私達だけこのようなものを頂いて、なにやら罪悪感があります」
従魔の証を付けてあげると、二人はまんざらでもないようで、笑みを浮かべつつ、それぞれそう口にした。
「で? リヒトは冒険者登録もしておくのか?」
続けてアガートは、オレにそう尋ねて来た。
確かにここは冒険者ギルドであるし、冒険者登録をすることも可能だろう。
ところが冒険者登録にも当然金はかかるはずだ。
だがオレには先立つ物がない・・・・
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