02:ダンジョンマスター、生きるために足掻く
あの日からオレは、ダンジョンを掘り進めることで、なんとか命をつないでいた。
土の中には、ダンジョンポイントとなる小さな虫の死骸や、鉱石が含まれている。
そのダンジョンポイントを、生きるためのエネルギーに変えることで、オレは生き延びて来たのだ。
ダンジョンマスターであるオレだが、今は肉体のないただの球体のため、そうしなければ生き延びることは出来ない。
そして長いこと穴を掘り進めながら、地上の様子を感じ取ることで、ここがどこかの森であることがわかった。
森には見知らぬ植物や、木の実が生えていて、興味がつきなかった。
その森には危険も多いようで、魔物らしき存在を、幾度か感知することがあった。
今のオレには目や鼻、耳はないが、周囲の魔力を感知することで、その様子を理解することが可能なのだ。
「ぐきゃきゃ! ぐきゃきゃ!」「ぐきゃ!」
初めにオレが見付けたのは、緑色の肌をもつ、人型の生き物だった。
耳は尖り醜い顔をしている。その服はまるで原始人のようだ。
知性があるようで、そいつらはまるで会話するように鳴き声を上げていた。
片手には棍棒を持っていて、それがそいつらの武器のようだ。
そしてこの時始めてオレは、自らの持つ鑑定能力に気付いた。
その能力は感知した相手の情報を、ステータスウィンドウで確認できるというものだ。
『ゴブリン・・・・Lv 3、HP9、一個体は弱いが、群れて行動するため危険』
その鑑定能力では、名前や体力レベルなどの、簡単な情報しか得ることは出来ないが、ある程度相手の脅威を知ることは出来た。
他にもウルフ、ビッグマウス、ビッグモール、トレントなどのモンスターに遭遇したが、今のところ地中にいるオレにとって脅威となるのは、ビッグモールとかトレントくらいだ。
ビッグモールは地中を這う巨大なモグラで、幾度か接近されかけたことがある。
こいつの知能は低いようで、他に穴を掘って誘導してやると、簡単に誘いに乗り、そちらの方向に行くので、なんとか対処することはできた。
またトレントは、根っこをこちらの方に伸ばして、その根でオレから生命力を奪おうとしてくる、危険な存在だった。
こいつの対処には苦労したが、トレントは地面を掘って、地盤をゆるくして、体を地面に固定できなくしてやると、自ら移動を開始するのだ。
何度かそれを繰り返してやると、オレの周囲からいなくなった。
現在身動き一つとれない球体のオレは、そんな風に危険なモンスターから、身を守って来たのだ。
そんな日々を送る中、オレはいつしか鉱石が埋蔵されている地点に、行きつくことができた。
それは青白く光る鉱石で、オレにはとても魅力的に見えた。
『ミスリル鉱石?』
どうやらその鉱石は、ファンタジーの定番の、ミスリル鉱石であるようだ。
このミスリル鉱石の発見こそが、オレに大きな幸運をもたらしたのだ。
『50億ポイントだと!?』
そのミスリル鉱石の埋蔵量は、かなりのもので、オレに多大なダンジョンポイントをもたらしてくれた。
5億ポイントがあれば、人間であった時であれば、一生遊んで暮らせるくらいのポイントだっただろう。
ところが今のオレが生き延びていくためには、アバターとよばれる肉体が必要なのだ。
球体であるオレには戦闘能力すらないし、ダンジョンポイント以外の、栄養摂取の手段すらないのだ。
そこでさっそくオレは、ポイントを消費して、アバターを得ることにした。
『よっしゃあ! 天使一択だ!』
他にもノーライフキングやアークデーモン、ドラゴンなど、魅力的なアバターはあったが、容姿的に考えて、オレにはこれしかないと考えたのだ。
天使のアバターであれば、この先現地人に遭遇しても、交渉などが可能だし、人との交流も可能になる。
たとえ無敵の体を得たとしても、一生寂しいのは御免である。
こうしてオレは天使の体を、得ることになったのだ。
「なになに? ・・・・破壊の天使?」
天使のアバターを得ると、その天使の情報を知ることが出来た。
その情報によると、その天使はかつて破壊の天使とよばれていたようだ。
行き過ぎた正義により、多くのモンスターを召喚し、人類を滅亡においやろうとした、ろくでもない天使のようだ。
まあダンジョンマスターになるくらいだし、そんな設定があっても、仕方がないのだろう。
見てくれだけは悪くないのだ・・・・この天使は・・・・
「赤ん坊? スキルは浮遊移動のみ・・・・」
天使 HP 6 Lv1 スキル:浮遊移動
そして実際に天使のアバターを得てみると、何かが違っていた。
オレの今の容姿は、どう見ても赤ん坊だったのだ。
レベルが低いせいだろうか?
まあ銀髪で容姿が整っているので、成長すればイケメンになることは確実だろう。
今からその成長が楽しみだ。
ところが得た能力が、浮遊移動のみとか、戦闘力皆無な、ざこざこ状態であった。
「そうだ! せっかく体を得たことだし、自衛のための武器を造ろう!」
オレには武器に関する知識はないが、ある手段を使い、武器の製作が可能なのだ。
それが以前使用を見送った、アイテム製作モードだ。
ポイントが潤沢である今、武器でも造って、装備しておけば赤ん坊のオレでも、身を護るくらいはできるかもしれない。
「この3Dのモデル製作ツールみたいなので造るんだな・・・・」
アイテム製作モードを開くと、3Dのモデル製作ツールのような画面が開いた。
そして自由自在に武器の形状を造ることができた。
「よし! 勇者の短剣完成だ!」
オレが最初に造った武器は、厨二心くすぐる勇者の短剣だった。
まあ見た目だけのただの鉄製の剣だがな・・・・
なぜ短剣にしたかというと、小さな赤ん坊のオレでは、普通の剣では扱いにくいと思ったからだ。
「ぐあ! 重っんも! 振り回せるかこんなん!」
ところが勇者の短剣は思いの他重く、非力な赤ん坊のオレには、持ち上げることすらできなかった。
どうやら今のオレには、小さな短剣すら、扱うことができないようだ。
まあ球体の状態の時は、穴を掘るだけで置物状態だったし、移動できるようになっただけましだと諦めよう・・・・
ついでに性別を確認したが、ダンジョンマスターであるためか、生殖器のようなものはなかったよ。
それが一番残念である・・・・
だがまあオレは、意識的には前世と同じ男であるし、これからも男として生きていくつもりだがね。
そこだけは譲れない! 例え性別がなくとも・・・・
「そうだ! ようやく体を得たことだし、さっそく何かを口にしてみよう!」
とは言え今のオレは赤ん坊だ。
歯も生えそろっていないし、口にできる物と言えば、ミルクかジュースくらいしかない。
確か粉ミルクくらいなら、赤ん坊だった甥のために、買ったこともあるので、問題なく創造が可能だ。
「えっと・・・・粉ミルクと・・・・」
そこでオレはまずミルクから、口にしてみることにした。
「それから水と、それを温めるコンロと・・・・哺乳瓶も必要だな・・・・」
ところが粉ミルクだけでは、とても飲むことが出来ない。
そこで粉ミルクを飲める状態にするために、必要なものを、ポイントを消費して創造していく。
ミネラルウォーターやガスコンロ、それから哺乳瓶も、オレの創造リストを見ていくと、その中に画像付きで表記されていた。
それはまるでネットスーパーの商品リストのようだ。
まあその全てが、前世で買った記憶のあるものばかりだがな。
「こりゃあ無理だな・・・・」
ところが赤ん坊の非力で小さな手では、ペットボトルの蓋は開けられないわ、ガスコンロの栓は回せないわで、とてもミルクなど作ることは出来なかった。
打ちひしがれるオレだが、ふとあることに思い至る。
ダンジョンマスターとは、モンスターを召喚して、ダンジョンを徘徊させることができたはずだ。
ならオレにもモンスターを召喚する能力はあるのではないだろうか?
「あった! モンスター召喚リスト!」
ステータスウィンドウ調べて見ると、確かにモンスター召喚リストなるものが存在した。
オレに出来ないなら、モンスターを召喚して、ミルクを作らせてしまえばいいのだ。
そう思い至ったオレは、さっそくモンスター召喚リストを睨みつけ、どのモンスターを召喚するかを思案した。
お読みくださりありがとうございます。
このダンジョンマスターに共感を持ってくださった方・・・・
この物語を少しでも面白いと感じてくださった方・・・・
ブックマークと
★★★★★の評価をお願いします!
ご意見や感想もお待ちしております!




