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03:ダンジョンマスターと異世界の街並み

「なんだあのモンスターは!?」


「誰の従魔だ!?」「でかいぞ!」


 街に入ると巨体のミノさんが、一際注目を集めた。

 冒険者が近くにいるので、従魔として見られているらしく、怯えて逃げたりする者はいないが、それでも近づく者はいない。


 街にミノタウロスが入れば、こんな反応が当たり前なのだろう。


 オレ達のやってきたその街は、リベラックの街とよばれ、人口2万人程の、ここらではそこそこ大きな街のようだ。

 冒険者がその人口のほとんどを占めており、冒険者に支えられている街として知られている。

 この街の近辺にリウォブルムのダンジョンや、いまだ探索しきれていない、広大なギェルゲの森があるため、この街を訪れる冒険者は後を絶たないとか。

 ちなみにオレのダンジョンは、ギェルゲの森に位置し、その場所はわりと入り口の方らしい。

 リウォブルムのダンジョンは、この街から北に位置しており、国境付近に存在するようだ。

 そのダンジョンはかなり広大で、深層部に到達した者は未だにいないという。

 200年以上の歴史を持つダンジョンで、いつか行ってみたい場所の一つでもある。


 オレはキラキラした目で、その初めての異世界の街、リベラックの街を見渡していた。


 その街の様子は、さながら西部劇の街並みのようにも見えた。

 木造や石造の建築物が立ち並び、地面には不規則に石畳が敷かれていた。


「おお!! 城が見える!!」


「でかい建物ぶも!」「面白い形ですね・・・」


 遠くを見渡すと、その先には大きな城が見えていた。

 それは石造りの城で、堅牢な造りに見えた。

 その異世界の城には、オレも感激したが、ミノさんもナデシコも、興味津々のようだ。

 ぜひ他の皆にも、見せてあげたい風景だ。


「あれは領主ジョゼフ・フォンブリューヌ伯爵の城だな・・・」


 ダイソンはその城を眺めながら、そうオレ達に説明した。


「だが俺達が今用事があるのは、あの冒険者ギルドだがな・・・・」


 ダイソンの指さす方を見ると、まさに西部劇の酒場といった感じの、ウエスタンドアのついた木造の建物が見えた。

 その建物の看板を見ると、確かに異世界語で、冒険者ギルドと書かれていた。


「おう! リアム!」


「ひっ! 化け物!」


 ダイソンが冒険者ギルドの前にいる制服の青年に声を掛けると、青年はミノさんに驚いてしりもちをついた。


「こいつはリアムってんだ。見ての通り臆病な男だ」


 するとダイソンが怯えている男の紹介をしてきた。

 

「これからこいつの従魔登録をしようってのに、そんなんで本当に大丈夫なのかい?」


 するとダイソンが呆れたように、リアムに向けてそう口にする。

 そんなリアムという青年は、パクパク口を動かすだけで返答する気配はない。

  

「うちの職員をあまり虐めんじゃねえぞダイソン! そんな従魔がやってくりゃあ誰だって怯えらあ!」


 すると冒険者ギルドの奥の方から、大柄のぼさぼさ頭の男が出て来た。


「ギルド長!」


 どうやらダイソンによると、その目の前の大柄の男が、冒険者ギルド長のようだ。


「オイのせいで迷惑かけたな・・・・」


「うお! そのミノタウロスしゃべれんのかい!? そっちの方が驚いたわ!」


 ミノさんが言葉を発し、謝罪すると、ギルド長はしりもちをつかんばかりに驚愕した。

 どうやらしゃべるミノタウロスは、相当に珍しい存在のようだ。


「そいつはそこのリヒトの従魔だ」


「リヒトです。こっちがメイドのナデシコで、そっちが従魔のミノさんです」


 ダイソンが親指で、オレを指し示して紹介すると、オレも挨拶と仲間の紹介をする。


「よろしくお願いします」「よろしくぶも!」


 続けてナデシコとミノさんが挨拶をした。


「俺はアガートってんだ。ここの冒険者ギルド長をやっている」


 そして挨拶が終わると、アガートは顎をさすりつつ、オレとナデシコをまじまじと見だした。

 何か特殊な魔力を、その目に感じる。

 魔眼か何かだろうか?

 オレ達を分析しているようにも見える。

 正体がバレたりしないだろうな・・・・


「なるほどねえ・・・・。そっちのメイドの方にも驚いたが・・・その嬢ちゃんの魔力は底が知れねえな・・・・」


 どうやらオレ達の正体は、バレずに済んだようだ。

 でも魔力だけは計られてしまったかも・・・・

 アガートの目は相手の魔力を、推し量ることが出来るのだろう。


 あと勘違いしているアガートに、これだけは言っておく必要がある。


「えっと・・・・。オレいちおう男なんで・・・・」


「なにぃ!?」


 そしてオレの言葉に驚かれるのは、もはや定番の光景となりつつある。

 よほど周囲にはオレが、女に見えているようだ。


 冒険者ギルドの建物内に入ると、カウンター付近にあるテーブル席に案内された。

 すぐそこの壁には、依頼内容の書いてある紙が無数に張り出され、そこが何らかの手続きをする場所だとわかった。


「それじゃあ従魔登録について説明しておく。まずは・・・・」


 どうやら従魔登録の説明については、ギルド長のアガート自らがしてくれるようだ。

 アガートは従魔登録の紙をひらひらとふりながら、得意げに説明を始める。

 普通はそういった手続きは、職員がするものだと思うのだが・・・・


「ギルド長困ります! その説明は私が・・・・!」


 アガートが説明を切り出そうとすると、カウンターの方から制服の女性が一人、こちらに向けて駆けて来た。


「いいのか? ミノタウロスがいるのに怖くないのか?」


 どうやらアガートの行動は、職員を気遣ってのものだったようだ。

 このおっさん見た目と裏腹に、気配りが出来るタイプのようだ。


「リアムと一緒にしないでください!」


 そうアガートに憤ると、制服の女性はこちらに、にこやかな様子で向き直った。

 この女性は見た目と裏腹に、肝が据わっているようだ。

 まあさっきのリアムは、まだ怯えた様子でこちらを見ているし、彼にはこの手続きは無理だろう。

 なんであの人冒険者ギルド職員になったんだろう?


「私は冒険者ギルドで職員をしているメリーヌと申します。従魔登録の手続きについては、私が務めさせていただきます」


 彼女は俗にいうギルド嬢とかいう人なのだろうか?


 そう挨拶するとメリーヌは、従魔契約についての説明を始めた。


 メリーヌによると従魔契約には、二種類あるという。

 一つ目は契約魔術で縛る、お互いの体のどこかに、文様が浮かび上がるタイプの契約だ。

 これは奴隷契約にも近く、相手はこちらの命令に、まず逆らえないという。

 痛みやその命を握ることで、モンスターを絶対服従させるものだ。

 ところがこの契約方法は、お互いの同意がなければ、まず成功しないらしい。

 なので契約魔術で縛るためには、対象のモンスターを弱らせる必要があるという。


 二つ目はモンスターとの親交を深め、信頼によって成り立つ従魔契約だ。

 当然この方法では、文様などは浮かび上がらないが、慈悲的な意味合いで、好印象を持たれやすい。

 ただモンスターの気分次第で、破壌する可能性のある不安定な従魔契約なので、その主人は従魔よりも、戦闘力が高いことが推奨されている。

 また従魔登録の際に、従魔との信頼関係を見極めるための、試験も受ける必要が出てくるのが難点だ。


「それではさっそくですがリヒトさんには、従魔登録に必要な試験を受けてもらいます」


 当然オレの従魔契約も、後者と見られるので、その試験を避けることは出来ない。


「そんな試験は必要ないぶも! わいは主に絶対の忠誠を誓っているぶも!」


「当然それは私もです・・・・」


 するとそこでミノさんとナデシコが、そんなメリーヌに憤り、試験の拒否を始めた。

 彼らはオレとの信頼を否定された気がして、その試験を理解できないのかもしれない。


「なんでそのメイドまで抗議に加わっているんだ?」


 そしてその講義に、人間の少女に見えるナデシコが加わっていることに、アガートが呆れつつ疑問を抱く。


 これ・・・ナデシコの正体がバレる流れではないだろうか・・・・


 オレはヒヤヒヤしながら、その場の仲裁に入った。


お読みくださりありがとうございます。


このダンジョンマスターに共感を持ってくださった方・・・・

この物語を少しでも面白いと感じてくださった方・・・・


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