02:ダンジョンマスターと街の城壁
「おお! ようやく見えてきたぜ!」
御者を務めるダイソンが指さす先に、街の城壁が見えて来た。
荷馬車に乗り、街道を進むオレ達の眼前に、街のものと思われる、巨大な城壁が徐々に姿を見せた。
その日オレは、リベラックの街にやってきた。
リベラックの街は、オレのダンジョンから西の方角に位置し、馬車で一日程進んだ場所にあった。
その街は人口2万人程で、この国においてはそれなりに大きな街のようだ。
高くそびえ立つ城壁に囲まれたその街は、大きく雄大で、とても壮観に見える。
街道にそって進み、リベラックの街に近付くと、徐々に城門が見えて来た。
城門を見ると、冒険者や荷馬車に商品を乗せた商人が、城門の前に並び、衛兵のチェックを受けているようだった。
「あれは銅貨か?」
そのチェックが終わるといくつか銅貨を支払い、城門を潜ることが出来るようだ。
「・・・・通行税だ。本来は一人3カレス、従魔にも同じく3カレスかかる」
ちなみにカレスというのは、この国のお金の単位だ。
カレスは異世界共通語で円を意味する言葉で、通貨が円いことがその由来だとか、博識なバーバラが語ってくれたのを思い出す。
「すみません・・・・。そのうち返しますので・・・・」
ダイソンが通行税を支払うために、巾着袋をまさぐりはじめると、オレはそう言ってダイソンに謝罪した。
実は通行税のことは前もって打ち合わせしてあり、全て青き翼の支払いということで、話がついていたのだ。
ところがいざ支払ってもらうとなると心苦しい。
「いやいい・・・・。命を助けられた礼にしたら安すぎるくらいだ」
「そこの奴ら止まれ!!」
すると数人の衛兵が槍をこちらにむけ、何やら警戒した様子で、立ちふさがって来た。
もしかしてオレ達がモンスターであることがバレたのか?
いや・・・・そんなはずはない。
現在オレは隠蔽の魔法で、完璧に頭の輪っかも、背中の翼も隠しているのだ。
天使であるオレは目立たないようにと、隠蔽の魔法で完璧に人間の姿に見えるように偽装している。
ナデシコにいたっては完璧な擬態をしているし、その少女の姿からスライムだと見分けるのは非常に困難だろう。
この街まで案内してくれた青き翼のメンバーの、お墨付きもいただいている。
とくに青き翼のメンバーであるバーバラは、その知識も幅広く、隠蔽や擬態を見破る手段も熟知ている魔術師でもある。
そんな彼女の厳しい目で見ても、今のオレ達の隠蔽は、見破れないとのことだった。
「ぶもも・・・すまない主・・・・。おいのせいだな」
そうだ・・・・。今回のメンバーの中には、ミノさんがいたのだ。
ミノさんは身長3メートルはある程巨大なミノタウロスだ。
その筋肉も異常なほど盛り上り、超大柄な体躯となっている。
衛兵が恐れても仕方がない。
「警戒を解いてくれ! こいつは従魔なんだ!」
「おお!? ダイソンか!?」
ダイソンが声を上げると衛兵が注目する。
どうやらダイソンは衛兵にも顔が効くようだ。
「お前ミノタウロスを従魔にしたのか!? ミノタウロスはダンジョンでも中腹以降に出現する恐ろしいモンスターだ! それを従魔にするなんて前代未聞のことだぞ!」
「いや・・・・俺のじゃなくて、ミノタウロスの主人はそこにいるリヒトなんだ・・・・」
「ど・・・どうも」
オレが軽く挨拶すると、今度は衛兵の目が、一斉にオレの方を向いた。
「ダイソン・・・・そちらのお嬢さんはどこの家のご令嬢だ?」
ご令嬢とはもしかして、オレのことだろうか?
こんな流れ前にもあったな・・・・
「そんな従魔を連れているくらいだ。さぞかし名のある家の者ではないのか?」
実はダンジョンマスターだと、正直に告げたら、さぞかし驚かれることだろう。
それを正直に告げる気はないが、どこぞのご令嬢という誤解は解いておきたい。
まあダイソンに任せておけば、その誤解も直にとけるだろう。
ダイソンの会話の流れは、すでに打ち合わせしてあり、オレの身分の設定も決められているのだ。
「いや、こいつらはそんなんじゃなく・・・・旅の商人みたいなもんだ。ちなみにこいつは男だ」
「なんだと!? そのなりで男かお前!?」
オレの性別を知ると、なぜか皆驚く。
オレは自分を中性な容姿だと思っていたが、もしかして女性よりなのだろうか?
オレの髪は長いし、短く切れば男に見えるのかな?
いや・・・・髪は切ってもすぐに同じ長さに生え揃うんだなこれが・・・・
だいたいオレの容姿の元である、破滅の天使がこんななりだし、もうこの容姿は固定されている気がする。
ちなみにオレが商人という設定は、前もって青き翼のメンバーと、話し合って決めたことだ。
それが正体を隠すには、一番無難な設定のようだ。
まあへたに貴族や冒険者と身分を偽れば、簡単に調べられてボロが出るだろうな。
「とりあえず街で従魔と行動を共にするなら、従魔登録をしてもらう必要がある。街に入ったらすぐそこにある冒険者ギルドに立ち寄り、必ず従魔登録を済ませてくれ」
いったいそれにはいくら費用が掛かるのだろうか・・・・・
まあ今回はダイソンが支払ってくれる予定にはなってはいるが、どうもそれが心苦しい。
「悪いなダイソン・・・・金は足りそうか?」
「さっきも言ったが、これは恩返しだから気にすんな」
ダイソンがそう言うと、青き翼のメンバー全員が頷き、ダイソンも軽くウィンクをして微笑んだ。
おっさんのウィンクは、少しきもいと思ったのは内緒だ。
そんなわけでオレ達は、無事にリベラックの街に、入ることが出来たのだ。
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