01:プロローグ~冒険者の国
とある異世界にオルガン王国という国があった。
フェリクス・オルガノ王の納めるその国は、世界でも有数の冒険者の国である。
それはオルガン王国が、多くのダンジョンや危険地帯を抱え、多くの冒険者を必要とするからだ。
それゆえモンスターの氾濫の発生率も多く、冒険者の死亡率が、最も高い国でもあった。
逆に冒険者にとってそれは、大金を稼ぐ機会が多いとも言えた。
ゆえにいくら悪評が立とうと、オルガン王国に向かう冒険者は、後を立たなかった。
オルガン王国のベルジュラック領には、リベラックという街がある。
リベラックの街から歩いて3日北に進むと、リウォブルムのダンジョンがあり、1日東に進むとギェルゲの森があった。
いずれも冒険者にとっては、大金を稼ぐには、うってつけの場所であった。
またリベラックの街があるベルジュラック領は、ルモーナ帝国とも面している。
ルモーナ帝国とは実質停戦状態となっているが、ちょくちょく小競り合いも起こっており、油断ならない領地でもある。
高い城壁に囲まれたその街には、領主ジョゼフ・フォンブリューヌ伯爵の城もあり、領地の重要な拠点としての役割もあった。
そんな中リベラックの街は、ある問題を抱えていた。
その問題というのが、街の人々が頻繁に出す、大量のゴミである。
狩られるモンスターが多いため、その素材や食料は大量に出回るが、同時にそれがゴミの発生源にもなり得るのだ。
ゴミは街や、街のすぐ外に投棄すると、臭いや衛生的な問題が発生するため、徒歩で一日程かかる場所にある、ギェルゲの森の奥深くに、投棄することになっていた。
ところがギェルゲの森には、多くのモンスターが出没し、ゴミを捨てるのも命がけである。
当然そのゴミは冒険者が依頼を受け、運搬するのだが、その需要も多いため高収入で、人気のクエストでもあった。
ところがそのクエストが、街の財政を圧迫する要因にもなっていた。
また最近になって森のモンスターが急増し、そのクエストでの冒険者の死亡率も高くなり、それが問題となり始めていた。
「今は冒険者に任せておるが・・・・ゆくゆくゴミの問題は、違う方法を模索せねばなるまい・・・・」
領主ジョゼフ・フォンブリューヌ伯爵は、今日もそのゴミの問題を議題に上げ、頭を悩ませていた。
ジョゼフ伯爵は、鍛え抜かれた逞しい体つきをしており、短く刈られた角刈りの頭と、ピンと跳ねた口ひげが特徴の中年の男だ。
妻にはジュリア第一婦人がおり、長男で後継ぎであるフランツは現在王都の学院に通っており、同じく次男のイーサンは王家に仕えるべく、騎士を目指し王都で騎士見習いをしている。
現在城で一緒に暮らしている子供は、幼いリアナという娘だけでる。
「ダンジョンはゴミを吸収すると聞いたことがあります。ならばリウォブルムのダンジョンに持っていくというのも一つの手ではないでしょうか?」
ジョゼフ伯爵に仕える文官ミルスがそう提案する。
ミルスは痩せ型で、小柄な青年である。
そのため戦闘には向かないが、知識は多く、文官としての能力は高く評価されていた。
ただ若いせいか、時々思慮に欠ける部分があるのが難点である。
「ダンジョンは駄目だ・・・・。ゴミを捨てればなぜかそこにモンスターが集まるんだ。するとゴミ運搬者への死亡率も跳ね上がる。捨てるならまだギェルゲの森の方がましだ」
そう反対意見を述べるのは、街の冒険者ギルド長のアガートだ。
アガートは長身で大柄であり、癖のあるぼさぼさ頭が特徴の男だ。
元Aランク冒険者である彼は、その実力を高く評価されて、この街の冒険者ギルド長に任命されている。
年齢はまだ中年とまではいかないが、そのガサツな性格のせいか、いまだに妻子はいない。
冒険者としての二つ名は【槍の鬼人】で、その二つ名の通り、卓越した槍の技術を持っている。
「それはダンジョンの入り口に捨ててもですか?」
「それは止めた方がいいだろう。それはモンスターの氾濫の引き金になりかねない行為だ」
ダンジョンの外にモンスターが出ることは滅多にない。
ところが一度モンスターがダンジョンの外に出れば、それをきっかけに次々とモンスターが、ダンジョン外に出ていくという現象が、引き起こされる事例が報告されている。
それは人為的にモンスターの氾濫を、引き起こすことが可能ということだ。
この国で恐れられている災害の一つに火災がある。
異世界のこの国にとっても、火災は多くの財産や命を奪う、恐ろしい災害なのだ。
そのためその火災が人為的に引き起こされた場合、その犯人には当然恐ろしい処刑が待ち受けている。
そしてモンスターの氾濫は、火災以上に最悪な災害に位置付けられている。
当然それが人為的であった場合その犯人には、放火以上の重い処刑が待っているだろう。
「はあ・・・・。どこぞに話のわかるダンジョンマスターでもおらんものかな? さすればゴミの問題も解決するのだがな・・・・」
ため息交じりに苦笑し、そう冗談を口にするのはジョゼフ伯爵だ。
「そんなダンジョンマスターがいれば、ゴミ問題どころか、もっと多くの問題が解決するでしょうな。それは絵空事ではあるでしょうが・・・・」
交渉可能なダンジョンマスターがいるならば、ゴミをダンジョンに捨てても、そこにモンスターを集めるようなまねはしないだろう。
またモンスターの氾濫が起きても、すぐに止めてくれるはずだ。
それで街のゴミ問題は、いっきに解決する。
またダンジョンマスターには、ダンジョンに宝箱を設置する能力もあり、その宝箱にはまれに強力な装備や、有用な道具が入っていることもあった。
そんな装備や道具をダンジョンマスターとやりとり出来れば、領地の戦力も増し、経済も非常に潤うことだろう。
彼らにとってそれは絵空事ではあるが、その例外がこの異世界のどこかに、誕生している事例もなくはない。
それがあのダンジョンマスター、リヒトであることは言うまでもない事実だ。
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