15:ダンジョンマスター頼みごとをする
「「「えええええ!? 街について来るだって!?」」」
あれから3日程経ったその日、冒険者パーティー青き翼の4人は、傷も体力もすっかりと回復し、街への帰還を切り出してきた。
そんな中オレは、帰還する彼らと共に、街に行くことを希望したのだ。
異世界の街並みは、ぜひこの目に納めたいと思っている。
それにオレには彼らの代表に会って、ぜひ提案したいことがあったのだ。
そのためにオレは、彼らの住む街に行く必要があったのだ。
「つったって・・・・リヒトはダンジョンマスターだろ? このダンジョンから俺達の街までは歩いて一日くらいの距離があるぜ? リヒトはそんなにダンジョンから離れて大丈夫なのかい?」
オレがダンジョンから離れた際のリスクについては、すでに検証してあるのだ。
ダンジョンマスターでも変わり種であるオレは、ダンジョンから自由に出ることが可能だ。
ただしある程度までオレが、ダンジョンから離れると、ダンジョンがその機能を失うことを確認している。
ダンジョンの機能の一つとして上げられるのが、常にダンジョン内を明るく保つ、光源の存在だ。
オレのダンジョン内には発光する苔があり、その苔がダンジョン内にあるオレの魔力を吸収して発光しているのだ。
オレがダンジョンから遠く離れると、その魔力の供給がされなくなり、苔が発光しなくなり、真っ暗闇となる。
オレはダンジョン内の全ての様子を、感知することが出来るのだが、その際にはその感覚も失われることを確認済みだ。
どうやらオレはダンジョンの電池のような役割もしており、遠く離れることで、そのエネルギー供給が出来なくなるようだ。
またダンジョンがエネルギー供給源を失うと、徐々に崩壊が始まることも確認している。
つまりオレがダンジョンを長く離れれば、このダンジョンはその機能は勿論、その存在すらも維持できなくなるのだ。
このダンジョンには住み慣れた畳部屋もあるし、出来れば崩壊させるようなことはしたくない。
「それでは主様の分体を創ってみられてはいかがでしょうか?」
そう提案してきたのはアルカードだ。
「分体?」
「わたくしには以前お仕えしていたダンジョンマスターの記憶がありまして・・・・その方が自らの分体を創り出し、いくつものダンジョンを管理されていたのを思い出したのです」
アルカードに前世の、それもダンジョンマスターに仕えていた記憶があるのは驚きだ。
ただそんな事実を知っているということは、アルカードはダンジョンマスターの、かなり近い位置にいたことになる。
つまりアルカードは前世でも、ダンジョンマスターの側近のようなことをしていたのだろう。
どうやら前世の記憶があるのは、オレだけではないようだ。
「なるほど・・・・これか?」
さっそくステータスウィンドウを調べると、それらしき項目を発見した。
それは本来ダンジョンが広大になりすぎた時に、認識しきれない場所を、任せるための機能のようだ。
さっそく試して見ると、オレから球体が分離した。
そしてオレはその球体に、見覚えがあった。
それはオレがこの世界に初めて生を受けた時の姿に酷似していたのだ。
つまり目の前のそれは、生まれたてのダンジョンマスターでもあるのではないだろうか?
「それではこいつに2億ポイント程預けておこう・・・・」
ポイントはオレの魔力のようなものなので、ある程度はないと、ダンジョンを維持することは出来ない。
2億ポイントもあれば、このダンジョンを維持するには、十分すぎるポイントだろう。
まあオレは過去に120ポイントほどで、維持していた過去があるがな。
「ということでこのダンジョンはこいつに任せて、オレは君達についていくことにするよ」
そしてオレは問題もなくなり、大手を振って再びそう希望した。
「色々見ちゃいけねえものを見た気がするが・・・・リヒトには恩もあることだし、その願いは出来るだけ叶えてやりてえ・・・・。皆の意見はどうだ?」
ダイソンは青き翼のメンバーにも確認する。
「いいんじゃないべつに?」
「私も別に構わない・・・・」
「街を乗っ取られたりしないか、俺はちょっと心配だ・・・・」
ところがデニスだけは、煮え切らない感じだ。
その気持ちもわからなくはない。
街ごとダンジョン化することなど、オレにとっては造作もないことだろう。
そうなればオレが街を乗っとったも同然となる。
まあそんなことはしないがな・・・・
「そうは言うがよデニス・・・・俺達はどのみちリヒトの要求を断ることはできないぜ?」
「そりゃあどうしてだダイソン?」
「俺達を襲った規模のオークの群が、あれだけたあ俺は思っちゃあいねえ・・・・」
「確証があんのかそりゃあ?」
「確証はねえが・・・その可能性がある以上、俺は確実な方法をとりてえのよ」
確かにスライム3人娘の調査によると、ダンジョンの外にある森では、オークが多く目撃されているという。
ダイソンの懸念も、的中している可能性はある。
「それに私達はリヒトには大きな恩がある・・・・」
「そうだよ! デニスは恩知らずだ!」
ダイソンに加え、バーバラとモニカがデニスにさらに追い打ちをかける。
「だあああ! 勝手にしやがれ! どの道俺らじゃあリヒトは止められねえしな・・・・」
こうしてデニスも陥落し、オレの街行きが決定した。
「ならばわたくしも主様についていきます!」
「ムギもついていくわん!」「ココもばう!」
「ぶもも~! 当然わいらもついていくぶも!」「ぶもぶも!!」
「「我らも主と共に・・・・」」
するとモンスター達もオレについて来ると言い出した。
「えっと・・・・モンスターは何人までOKですか?」
「人間に完璧に擬態できる嬢ちゃんら3人はいいとして・・・モンスターは従魔として誤魔化せるが、あまり多いと疑われるかもな?」
「失敬な! わたくしも人間にくらい擬態は可能だ!」
そう言うとアルカードは幻惑魔法を使い、牙を消し、顔色を良くして人間に擬態した。
「アルカードは駄目・・・邪悪な魔力でヴァンパイアなのが丸わかり。街には聖職者も多くいるから、すぐにばれちゃう」
「ぬぬぬ! 人間の娘風情がわたくしの魔力を見破れるだと生意気な!」
「止せアルカード! 悪いけどお前は置いていく・・・・」
「そんなああ・・・・。主様・・・・」
オレの言葉を聞いたアルカードは、地面に崩れ落ちた。
「あとモンスターも連れて行くなら二人までがいい・・・・街では従魔も目立つし、悪目立ちしすぎるのも良くない」
「それはスライム3人娘も含めてということかい?」
「当然・・・・。数が多ければそれだけ擬態が見破られるリスクも増える。問題は出来るだけ少ない方がいい・・・・」
さすが魔術師のバーバラは見識が深いようだ。
ある意味アルカードよりも、的を得た答えを出しているかもしれない。
「それじゃあミノさん! ナデシコ! お前達を連れて行く!」
オレのその答えに、選ばれなかった面々ががっくりするが、こればかりは仕方がない。
ちなみにオレが、ミノさんとナデシコを選んだ理由は、他のメンバーよりも冒険者たちと馴染んでいたからだ。
ミノさんは男連中と、よく仲良く語らいながら酒を飲んでいた。
ミノさんは人との順応性が高いのかもしれない。
ナデシコは冒険者連中に、よく彼らのことを質問し尋ねていた。
どうやら人間に対する好奇心が強いようだ。
ムギとココに関しては、人懐っこく誰とでも仲良く接していたように感じた。
人との順応性に関しては申し分ないだろう。
だがムギとココはモンスターにしては弱いので、街で攫われそうで心配だった。
その他のメンバーに関しては、冒険者たちと一線を引き、距離を開けているように感じた。
あまり人に対して、好印象を抱いていないのかもしれない。
こうしてオレはミノさんとナデシコを連れて、冒険者パーティー青き翼と共に、街に向かうことになったのだ。
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