11:ダンジョンマスター、冒険者と出会う
「主見えました。すでに囲まれています・・・」
ナデシコが指し示す方を見ると、既に冒険者と見られる3人が、オークの群に囲まれていた。
そのうち一人は、すでに地面に倒れており、その安否が気になるところだ。
「悪いけどオレだけ先行するよ!」
そう言うとオレは翼を広げ、スライム3人娘を置いて飛び立った。
そしてオークの群に背後から飛びかかる。
すでに天使の姿を晒しちゃっているが、もう正体を隠している場合ではない・・・・そう思ったのだ。
「セイントセイバー!!」
オレは帯剣している剣を抜き放ち、魔法剣セイントセイバーを発動する。
するとオレの剣が光を放ち、まるで剣の長さを増すように、光のオーラが伸びていく。
このオーラが触れた者は、剣と同様に斬り裂かれてしまうのだ。
「ぶぎ・・・!」「ぶご・・・!」「ぶぎゃ・・・!」
そしてオレは次々とオークを斬り伏せていった。
首が飛び、肉片や血液がはじけ飛び、オークはなすすべもなく地面に倒れていく。
続けて3人が背にしていた大木を、旋回するように飛び、その周囲にいたオーク共を、次々と斬り伏せていった。
その間わずか数10秒といったところだろうか?
30体にもなるオークの群は、瞬く間に全滅したのだ。
「間一髪でしたね?」
オレはそう彼らに声を掛けると、唖然としている彼らの頭上から、徐々に地面に降り立った。
「あんたはいったい何もんだ? 神とか天使とか・・・・そういった類の何かなのか?」
するとリーダーらしきスキンヘッドの男が、唖然とした様子で、オレにそう尋ねて来た。
「そんなことよりすぐにその青年を治療しましょう。オレ・・・回復魔法が使えますので・・・・」
オレは先ほどから気になっていた、倒れている青年を指さし、そう提案する。
「あ、ああ! そうしてくれるとこちらとしても助かる・・・!」
呆然としていたスキンヘッドの男は、何かを思い出したように再起動し、その提案を受け入れた。
あまりのことで、思考が追いついていなかったようだ。
青年は頭からの出血はあったものの、傷を塞ぐことで、すぐにその出血は止まった。
頭部の傷はだいたい癒したが、脳に異常が出ないか心配だ。
しばらくの経過観察は必要だろう。
「助けてもらった上に、仲間を治療してもらってすまねえが、俺達先立つ物がねえんだ。高額なお布施とかは、ちょっと払えねえけど・・・・」
治療が終わると、スキンヘッドの男は、オレにそんなことを言いつつ、財布らしき巾着袋を差し出してきた。
どうやら治療費のつもりのようだ。
「いやいや・・・・オレどこぞの宗教家とかではないんで・・・・お布施とかはちょっと・・・・」
「主・・・大丈夫ですか?」「主、先行はよくないです」
オレがお布施を断っていると、ようやくスライム3人娘・・・いや、ナデシコとデイジーがやってきた。
ガーベラはいったいどこに行ってしまったのだろうか?
もしかしてついてこられなかったのか?
「彼女らは?」
するとダイソンが遅れてやってきた、スライム娘たちについて尋ねて来る。
「彼女らはオレのメイドです。ここらで一緒に暮らしているもので・・・・」
「こんな森でですかい!?」
「はあ・・・まあ・・・・」
すると彼らは驚愕したように目を見合わせた。
どうやらこういった森に住むのは、あまり一般的ではないようだ。
まあ実際にオレが住んでいるのは、森じゃなくて、その地下にあるダンジョンだけどな。
「ガーベラはどうしたんだ?」
「ガーベラは人間の、もう一人の仲間を迎えに行きました・・・・」
もう一人の仲間・・・・?
「ヒヒンと鳴いています・・・・」
ああ・・・荷馬車を引いていたとかいう馬か・・・・
どうやらスライム娘たちは、冒険者と一緒に荷馬車を引いていた馬も、彼らの仲間と判断し、救助に向かった模様。
まあガーベラなら単独でも、ここらのモンスターに、遅れはとらないだろう。
「怪我人もおられるようですし・・・どうです? ここは一つオレの住処に来ませんか?」
オレがそう提案すると、彼らは一度目を合わせ懐疑的な顔をした。
そしてしばらくひそひそと相談し合う。
次に諦めたように頷き、こちらに向き直った。
どうやら彼らの中で、考えはまとまったようだ。
「お願いします・・・・天使さん?」
そしてスキンヘッドの男は、そう了承した後に、まるでオレの名前を尋ねるように、そう口にした。
オレの提案を了承してくれて安心したが、彼らにオレの名前を伝えていなかったことを思い出す。
「ああ・・・オレのことは・・・・」
え? オレの今の名前って主? いやいや・・・主は名前ではない・・・・
それじゃあ前世の名前でも名乗りますか?
ところがその名前がはっきりと思い出せないのだ。
佐藤とか小林とか、前世ではよくありがちな、そんな苗字だった気もする。
今までただ主とだけ呼ばれていたため、そんなことは思いもよらなかった。
だが思い出したところで、今のオレは前世のオレではない。
生まれ変わってダンジョンマスターになっているのだ。
ステータスを見ても、名前の欄はなく、ただ種族名だけが天使と書かれているだけだ。
たしかオレの天使の設定が、世界を滅ぼしかけた破滅の天使だった。
なら前世でいうルシファーみたいな存在だ。
ルシファーはラテン語で確か・・・光をもたらす者だったか?
じゃあ単純に光で・・・・せめてドイツ語とかにしてリヒトとでも名乗りますか・・・・
「・・・オレはリヒトだ!」
オレは今しがた思いついたその名を口にした。
ちょっと厨二臭い名前だったか・・・・?
「主の名前・・・決まりました」「それは大事件ね」
するとオレの名前が今しがた決まったことを、スライム娘2人が暴露してくる。
オレはそれがなんだか恥ずかしくなって赤面した。
「そ・・・そうかい・・・・よろしくな」
オレはなぜだか、気まずそうに差し出してくる、スキンヘッドの男の手を握り返した。
「俺は冒険者パーティー青き翼のリーダーのダイソンだ」
「同じくモニカだよ!」
「私はバーバラ・・・・ついでに寝ているのがデニスだよ」
そして冒険者たちが、それぞれ名乗りを上げると、続けてダイソンが小さく挙手をして口を開いた。
何か相談事があるようだ。
「実は森の入り口に馬と荷馬車を置いてきたんだが・・・・」
「その馬ならほら・・・・あそこに・・・・」
すると丁度そのタイミングで、ガーベラが冒険者のものらしき、荷馬車を引いた馬を連れて来た。
「悪いな・・・・馬や荷馬車まで・・・・。でもよく俺達が馬を連れて来ていることがわかったな?」
確かに馬と荷馬車の存在については、ガーベラの報告で耳にしていた。
だがそれは、ガーベラが分体であるスライムにより、離れた位置から得た情報だ。
そんな位置にいる馬や荷馬車の情報を、オレ達が知り得るのはおかしなことだ。
ダイソンはそれを不可解に感じたようだ。
だがまあ・・・・この場合この世界では、だいたいがあの言葉で誤魔化せる。
「そういう探知魔法があるんですよ・・・・」
まあ単純に魔法のせいにするんだがな。
「なるほど・・・・。うちのバーバラも似たような探知魔法を使っていたし、嬢ちゃん達がそういった魔法を使えても不思議はないですね・・・・」
ん? 嬢ちゃん?
スライム3人娘のことを言っているのか?
こうしてオレ達は、冒険者パーティー青き翼のメンバーと、荷馬車を引いた馬を連れて、オレ達の住居であるダンジョンへの帰路についたのだ。
お読みくださりありがとうございます。
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え? 今まで名前なかったの!? と思った方・・・・
名前? リヒトでいいんじゃね? と思った方・・・・
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