01:プロローグ~異世界転生は土の中で・・・・
気付くと、土の中にいた・・・・
それはオレが土砂崩れなどの事故にあって、生き埋めになったとか、そういった危機的状況ではないことだけは言っておく。
普通土の中にいれば、目に光が届かなくなり、周囲は暗闇に包まれるはずだ。
ところが妙なことに、周囲の様子は、はっきりとまるで手に取るように、理解することができたのだ。
それは肉眼ではなく、まるで周囲の空気を感じ取っているかのような不思議な感覚だった。
『今のオレ・・・・どうなってんだ?』
気になったオレは、自分自身の今現在の状態を、感じ取ってみることにした。
まず今のオレには手足がない。
口も無ければ、目も耳も存在しなかったのだ。
それは球体・・・・ただ一つの球体と言っていい存在だった。
『え? なんだこりゃあ? いったいどうなって・・・?』
ところが不思議と心は落ち着いていた。
それはまるで、それがさも当たり前のような、そんな感覚すら沸き上がって来る。
そして今のオレの存在意義は、ただ地面を掘り進めるということだけだ。
地面をまるで迷路のように掘り進め、広大なダンジョンを建造していく・・・・
そう・・・・オレはダンジョンマスターに、転生していたのだ。
前世のオレは日本という、平和な国で暮らしていた記憶がある。
ただそこでは、会社員として、ひたすらに働かされた。
残業は当たり前、休日出勤は当たり前の、それこそ馬車馬のように働かされた。
そんな毎日を送っていたオレは、いつしか死を迎えることになった。
働きすぎだ・・・・過労死だったようだ・・・・
来世では、まったりスローライフを満喫したいものだ・・・・
そう思っていた矢先、オレはダンジョンマスターになっていたのだ。
手足もないし動けないので、穴を掘るのも念力のような力だ。
ぶっちゃけ働かなくてもいい体を、手に入れてと言ってもいい。
これはこれで・・・・ある意味願いが叶ったと言ってもいいのか?
でも何かが違う気がする。
これじゃあその辺の石ころと、何も変わらない。
せめて人間のような体は欲しい。
でないと何一つ楽しめない。
食べたい物も食べられないし、遊ぶどころか、他人と関わることすら出来ない。
ダンジョンマスターといえば、広大な迷宮を創り出し、財宝や宝箱、または罠やモンスターなどが存在する、異世界では定番の存在だ。
冒険者を財宝や宝箱で誘い込み、罠やモンスターで殺してダンジョンの養分としてしまうという、恐ろしい逸話のある存在でもある。
ところが今のオレは、冒険者というよりは、掘り進めた土に含まれた、小さな虫の死骸や、鉱石を吸収して、養分・・・いや、ポイントに変えているような感じだ。
そのポイントは何に使うか?
当然オレが存在を維持するための、エネルギーにも使われるし、他の何かにも使えそうな感じもする。
『ステータスウィンドウ?』
そんな時ある項目が表示されているのに気付いた。
それがステータスウィンドウだ。
その中にオレの今まで貯えた、ポイントが表示されていたのだ。
そのポイントは、ダンジョンポイントとよばれるもらしい。
『120ポイント・・・・』
それが多いのか少ないのかは、今のオレにはわからない。
そしてオレの創り出せる物の、数々に驚かされた。
『カップラーメン、ポテチ、アイテム製作モード・・・・』
どうやらオレは、前世で記憶している全ての物を、ダンジョンポイントで創り出せてしまうようだ。
またなにやら、アイテム製作モードのようなものもあるが、よくわからないので後回しだ。
『ポテチ 200ポイント・・・・』
そして120ポイント足らずでは、ポテチすら創り出せない事実を知る。
どうやらオレの所持するポイントは少ないようだ。
しかもそのポイントの大半が、オレがその日存在するための、ポイントとして消費されてしまうのだ。
このままではジリ貧だ。
もしポイントが、しばらく入らないなんて事態に陥れば、じきにオレの存在自体が消えて、再びこの世からおさらばしてしまうだろう。
ただポイントがなくても、存在を維持する方法はある。
それは体を手に入れることだ。
体さえあればポイントがなくても、生命維持が可能になるのだ。
ダンジョンマスターの体はアバターのようなもので、いくつか用意されているようだった。
種族によってエネルギーの補給の仕方は様々だが、人間型であれば、普通の食べ物だけでも、生き残れるようになるらしい。
それに再び食べる喜びを味わえるなら、それに越したことはない。
だがその体を手に入れるためには、ポイントが必要だ。
そしてそのどれもお高いのだ。
ノーライフキング 16000ポイント
エンシェントドラゴン 21000ポイント
アークデーモン 18000ポイント
ワールドトレント 10000ポイント
魔王 18000ポイント
天使 19000ポイント
オレが気になっているアバターは天使だ。
天使が一番人間に近い容姿をしているし、もし現地人と出会うことになれば、会話だってできそうだ。
やはり現地人とのファーストコンタクトには、美しい容姿も必要だと思うのだ。
それに天使の姿なら、ポテチやカップラーメンを創造して、再び食べることだってできるし、現地のグルメだって堪能できる。
ところがこのまま、ちまちまとポイントを集めていても、いつまでも集まる気がしてこない。
それどころか、そのうち危険な生物にでも遭遇すれば、命はないだろう。
なぜなら手足のない今のオレは、戦う手段をもっていないのだから・・・
せっかく再び生を受けたというのに、こんな状態で、この世を去るのは御免だ。
果たしてオレが、アバターを得る未来は、やって来るのだろうか?
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