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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。

金の為に生き、金の為に死ぬ

作者: 蔵樹りん
掲載日:2025/11/26

 一人の男がいた。

 そいつの外見やら経歴なんかはどうでもいい。

 ただ、かねを欲しがっていた。金の為に生きていると言っても過言ではないやつでな。金があれば幸せになれると思ってたのさ。

 株やら、不動産やら、FXやら、仮想通貨やら、貴金属やら、かねになりそうなものに色々と手を出してな。

 普通はそこで失敗するもんだが、思ったよりも才覚があったらしい。

 やがて、ひと財産を築くことが出来た。

 働くのをやめて気ままに観光地をぶらついたり、金に物を言わせて女をとっかえひっかえしたりと、世の人がうらやむような生活を送れるようになった。

 そこで満足してりゃあ良かったんだがな。


 まだ足りない。もっと欲しい。もっと欲しい……。


 ひとしきり遊んで次にやりたいことも思い浮かばなくなった頃、そいつはそんな考えに取りつかれてしまったんだ。

 もっとも、金を求める奴は皆、大抵がそんな思考になるらしいぜ。

 今までの資産すべてを新たな投資に注ぎ込むようになった。

 これまでのように、お金をどんどん増やしてさらに上に行けると思ったんだろう。それにもっとお金が増えたら、また新しくやりたいことが生まれるとも思ったのかもしれない。

 失敗するなんて考えもしなかったんだろうな。何しろ、実際に大金を得た経験があるわけだし。

 だからいつの間にか、自分が頂上から降り始めていることに気づかなかったんだ。


 お金が溶ける、という言葉を聞いたことはないか?

 そんな言葉が思い浮かぶくらい、そいつはすごい勢いで金を失っていった。人ひとりが一生働いてようやく得るくらいの金をな。

 人間追い込まれると、大バクチで取り返そうと考えるようになる。

 もちろん、そんなバクチは失敗するのがオチだ。今回は残念ながらそいつもオチ通りの結果になった。

 起死回生の、全てを賭けた投資……いや、ギャンブルと言うべきか。とにかくそれにも失敗し、再起不能と言えるほどの損失を出してしまった。


 夢の時間は終わりだ。

 金はそいつの全てだった。失った時、もう本当に何も残ってなかった。スキルも、人脈も、家も、家族も。

 もはや最高潮だった時のように、遊びほうけることも出来ない。もちろん女が寄ってくることもない。

 やがて日雇いのバイトで食いつなぐようになる。

 金を手に入れる前、若かりし頃の自分に逆戻りだ。しかし、若さだけは失われている。

 もうすべてを諦めていたのか、それともまだチャンスを狙っていたのか、今となっては分からない。


 最後は物取りに刺されて死んだ。

 られた財布には数百円しか入ってなかった。

 結局、数百円の為に死んだということさ。

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