『惟成の妻、速記の会で内助の功のこと』速記談2096
藤原惟成が蔵人所に奉仕していたころ、桜の下で速記をする会が催され、おのおの一種類を持ち寄る趣向を行うことになった。惟成は、白プレスマンの担当になった。白プレスマンを詰めた重箱二段、芯を盛りつけた外居一台、折櫃に半紙一杯、これらを長櫃におさめて、運搬係に担がせ、花見の会場でこれ見よがしに取り出して見せると、一同歓声を上げた。
その夜、惟成が妻に腕枕をすると、妻の髪の下半分がなかったので、驚いて、どうしたのか尋ねると、太政大臣家の下女と交渉して、中身の入った長櫃と髪の毛とを交換したのだという。妻は、髪がなくなったことを嘆くふうでもなく、笑顔だったという。
教訓:髪の毛の下半分がない状態は、腕枕をする前からわからないものなのか。