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森の冒険

食堂に入ると、焼いた肉の香ばしい香りが漂ってきた。周りを見ると、客のほとんどはステーキのようなものを食べているようだった。

(結構ボリュームもありそうだし、これを頼むのがよさそうだな……)


俺はとりあえずステーキを食べることにした。ついでに飲み物も頼んだが、なんとステーキと同じぐらいの値段だった。やはり水不足が関係しているのだろう。よく考えると、メニューに野菜類もほとんどなかった。

(魔王を倒して、早く人々が水や野菜を満足に取れるようにしないとな……)


気を取り直して注文したステーキを食べてみると、じゅわりと口の中に肉の旨味と脂の甘味が広がった。

エッジホッグという魔物の肉らしいが、なかなか旨い。恐らくこの近辺にいる魔物なのだろう。


そしてステーキを味わっていると、真っ黒な人参を輪切りにしたようなものが皿に乗っていることに気づいた。

(なんだこれは…… でも焦げているわけではなさそうだな。 色がまずそうだけど、食べてみよう)

勇気を出して食べてみると、意外にも甘味のある人参の味がした。

(美味しい……! 何だか明日も頑張れそうな気がしてきた)

食堂で美味しいものを食べた後、宿に帰って眠りについた。


――翌日


「よし、今日は森に行ってみよう」

昨日は近くの草原でスライムを討伐していたが、今日は森の方でモンスターを討伐することにした。

覚えたてのヒールと耐久系のパッシブスキルがあれば、死にはしないだろう。


しばらく歩いて森にたどり着いたが、木があるおかげで日差しが遮られ、草原より快適そうだ。

森には大抵危険なモンスターがいる。その一方で森には得られるものはたくさんある。


「ここの木の下にあるのは薬草かな?」

前世で薬草集めをした経験が生きたかもしれない。ただ、これが本当に薬草なのかちょっと自信がない。

「アナライズを使えば、そのアイテムが何かを鑑定することもできますよ。」

突然女神様がアドバイスをくれた。神だけあって、人の悩み事くらいお見通しということだろうか。心臓には悪いがとてもありがたい。

「なるほど、これで間違えて雑草や毒草を持ち帰る心配がなくなりますね。ありがとうございます!」

とりあえず見つけた薬草は間違いなく薬草だということが分かった。


(そういえば、レンジャーのスキルに薬草類を感知できるスキルがあったはずだけど、アナライズで辺りを見渡せば簡単に薬草が見つかるんじゃないか?)

早速、辺りのものをアナライズしようとしたが、目の前が文字だらけで何が何だか分からなくなってしまった。恐らくターゲットを絞らなかったせいで目に見えるもの全ての情報が出てきてしまったのだろう。

(これは別で薬草感知のスキルが欲しくなるな…… いくらか薬草類を採ったらスキルクリエイターを使ってみよう)

まずはこの辺りで薬草を集めることにした。


しばらく薬草を探して、普通の薬草以外に毒消し草と目薬草、そして麻痺消し草を見つけることができた。

(結構いっぱい採れたな。とりあえずアイテムからスキルを検索してみよう)

その場で目を閉じて、まず薬草のスキルから検索する。予想はしていたが、スキル候補はほとんどポーションと同じだった。ただ、1つだけ取得可能なスキルがあった。薬草感知だ。


「おお! こんなに早くこのスキルがゲットできるなんてついてるなぁ」

条件は目薬草とその他薬草類3種類らしい。手持ちの薬草類はなくなってしまうが、このスキルがあればいくらでも取り戻せるだろう。

スキルを取る前に、一旦他の薬草類のスキル候補も見てみたが、他に今取れそうなものはなかった。

薬草感知を選択すると、素材が消えてまた体に光の玉が入ってくる。


目を開いてスキルクリエイターを終了させてから、早速薬草感知を試してみた。

スキル名を念じると、いくらかの草が白く光って見えた。白く光っていた草は、どれも先ほど採った薬草類だった。

(どんな風に感知するのかと思ったら、草が光って見えるのか…… アナライズもそうだけど、探知系スキルを使うと世界の見え方がこんなに変わっているとは思ってもみなかったな……)


薬草類を集めながら森の奥へ進むと、何だか獣臭いことに気が付いた。周囲を警戒していると、草をかき分ける音が聞こえてくる。恐らくモンスターだろう。

慎重に音がする方に歩き始めた。慎重にゆっくりと足を動かして――


パキッ――


小枝を踏んでしまった。なんてついてないんだろうか。

直後、激しい足音と共にこちらに何か突っ込んで来た。慌てて脚力強化して飛びのく。

すると、目の前に顔中牙か角かわからないが尖ったものがたくさん生えた猪が立っていた。


アナライズする間もなく、猪は激しい突進を繰り返している。なんというスタミナだろうか。

(動きは単純だけど、ルニウムスライムほど軽そうには見えないし、真正面から切るのは難しいか…… いや、頑強を取ったんだ。一度試してみる価値はあるだろう。)


覚悟を決めて、真正面から突進を受け止める。牙と剣がぶつかり合い、激しい火花が散る。

「うおおおっ!」

初めてアダマンスライムに体当たりされた時のことを思い出した。あの体当たりもなかなか重かったが、こちらの体当たりもなかなか凄い。少し後ろに押されているが、今回は転ばずにしっかりと立ち続けることができている。


しばらく踏ん張っていると、ついに勢いを失った猪が隙を見せた。

「今だ、マジックエッジ!」

勢い良く剣を振り下ろすと猪は動かなくなった。正面から受け止められなければ、魔法でチクチクと攻撃するしかなかっただろう。やはりスキルクリエイターの力は凄まじい。


倒した猪をアナライズしてみると、エッジホッグという名前の魔物だった。

(これって、昨日食べたやつじゃないか…… このあたりの人々は想像以上に強いかもしれない)

この世界人々の強さについて考えながら、エッジホッグを回収しようとすると、突然小さくて素早いものがエッジホッグの上に飛び乗った。


それは悪魔のような顔が付いた、黒に近い紫の根菜だった。とっさに耳をふさいでみたが、顔の部分はただの模様のようだった。

(マンドラゴラかと思ったけど、その仲間の走り人参的なモンスターかな? とりあえず叫び声で気絶か即死する心配はなさそうだ)


人参がなぜエッジホッグの上に立ったかという疑問はすぐに解消された。みるみるうちに人参が赤紫色に変わり、葉っぱも赤くなっていった。

(こいつ…… 血を吸っているのか! 早く倒さないと俺が次の獲物になりそうだ)

気づいて切りかかろうとした時、既に人参はこちらにとびかかってきて、腕に素早く根を張り巡らせていった。


腕がズキズキと痛みだすが、根が張られていない方の腕で剣を持ち、急いで人参を真っ二つにした。

結果的には大したことのない相手ではあったが、鎧を無視して攻撃できるのはなかなか恐ろしい。

腕に絡まった根はパラパラと全て落ちていった。


とりあえず人参もアナライズをしてみた。デビルキャロット、イメージ通りの名前だった。

(というか、冷静になってみると…… こいつも昨日の夕食に出た人参じゃないか? 初めに食べた人はなかなかのチャレンジャーだな……)


辺りに敵がいないことを確認して腕にヒールをかけると、すぐに痛みが引いていった。これならもう少し探索を続けられそうだ。


その後は、人参と猪をいくらか討伐しつつ、薬草類を集めて町へ帰ったのであった。

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