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魔王と勇者について

町人の男性に案内されて、宿となる小屋に着いた。

中に入ると小さな机と柔らかそうなベッド、そして用途不明な置物が目に入った。


「これは…… 何かの装置ですか?」

その置物は縦長の筒状で、上部に大きな穴、下の方には前後に2つ引き出しのようなものがついている。

「はい、そちらは"スライム搾り機"でございます。上の穴からスライムゼリーを入れると、前の容器には綺麗な水、後ろには残りの部分、即ちスライムパウダーが溜まるようになっています。」


(スライムゼリーから飲み水を作れるのか…… 日照りで近くの水場が干上がっても、スライムが多いこの地域ならそれなりに水を確保できるということか)

「凄い装置ですね。スライムから水を得られるなんて考えたこともありませんでした。」

この過酷な世界で生きるための知恵の結晶ともいえる装置だろう。これを作った人はどんな人なのかが気になってきた。


「本当に素晴らしいですよね! これは大賢者様が我々の町を救うために発明して下さったものなんです! 水不足も緩和でき、スライムパウダーという新たな特産品も生み出すことができて…… 失礼、ちょっと熱くなってしまいました。」

聞くより先に答えが返って来た。大賢者、確かに少なくとも町1つを知恵で救っている。

今の印象では賢者というよりは発明家という気もする。


「勇者様も慣れない土地に来てお疲れでしょう。ごゆっくり」

男性は気をつかって小屋を出ていった。そして俺は、大賢者のことを1回忘れてやるべきことを思い出す。


「女神様、聞きたいことがあるんですが……」

「はい、何でしょうか……」

元気のない声で返事が返ってきた。これから質問する内容を察しているのだろうか。


「まず、この世界に魔王が10体もいるというのは本当なんですか? 」

「はい……魔王が10体存在するというのは本当です。そのことを伝えずに転生させてしまいました。ごめんなさい。伝えてしまえば、断られてしまうと思ってしまって……」

確かに事前に10体と伝えられていたら、断っていただろう。自分も同じ立場なら同じことをするかもしれないと思うが……


「とにかく1体だけでも倒してもらいたかったのです。残りの魔王をどうするかについてはあなたの意志で決めて下さい」

転生の時に魔王を討伐すると誓った以上、1体は討伐する必要があるがそれ以外は強制しないということだろう。

「事情は分かりました。転生時の約束通りここの魔王は必ず倒します。……ただ、残りの魔王については、ここの魔王を討伐してから考えさせて下さい」

流石に全部討伐すると言えるほどの自信はなかった。ただ、今から完全に諦めたくもなかった。


「ありがとうございます! そう言っていただけるだけでも嬉しいです。もちろんできる限りのサポートはするつもりです。私の力で蘇生は無制限に行えますし、特別なスキルでまだ説明できていなかった<スキルクリエイター>があれば必ず魔王を討伐できると信じています。」

(無限蘇生…… 心強いような恐ろしいような…… 理論上諦めなければ魔王にいつか勝てるかもしれないということか。そしてもう1つ、スキルクリエイターってことは色々スキルを作れそうだけど、これは結構凄いんじゃないか? 結構いけるような気がしてきた)


「スキルクリエイターというと、色々スキルを覚えたりできるということでしょうか?」

「はい、いくらかの素材さえ集めれば、本来様々な修行などを経て獲得するスキルも即座に取得することができます。これによって短期間で強くなることができると思います。」

(新しいスキルを作るというよりは、素材さえ集めればどんな職業のスキルでも獲得できると考えた方が良さそうだな。まぁ、新しいスキルを考えろと言われても思いつかないし、これがちょうどいい)


「それは凄いですね! 後で色々試してみようと思います。もう一つ聞きたかったことがあって、勇者とカーバンクルにはどのような関係があるのでしょうか?」

(頭に宝石がついた小動物ぐらにしか思ってなかったけど…… 結構凄い生き物なのか?)

「はい…… それについてですが…… まず、2種類の勇者について解説した方が分かりやすいと思いますのでそこから始めますね。」

また少し元気のない声から話が始まったということは、何か悪い知らせがありそうだ。


「簡単に言ってしまうと、カーバンクルがいるかいないかで分けられるのですが、いる方については、魔王を倒す力、対魔王力がカーバンクル依存となっていて、さらにその力を最大4人までに分け与えることができます。その代わり、勇者単体の強さとしては、もう1つのタイプより低くなっています。」

「いない方、つまりあなたのタイプについてですが…… 対魔王力があなた自身に宿っています。そして、勇者の力で強靭な肉体と強い魔力、そして全ての武器を扱える適正を持ち合わせています。まさに万能の力ですが、しかし…… 対魔王力を分配できないため、魔王とは一対一で戦うことになります……」


「えぇーー! ソロで戦わないといけないんですか!? てっきりパーティを組めると思っていたんですが……」

「確かに、魔王相手は1人ですが……それ以外に関してはあなたは1人ではありません。私もできる限り助言をしようと思いますので……」


思った以上に大きいデメリットの気もするが…… めげてはいられない。ひとまずこの町の冒険者ギルドに行ってみることにした。



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