表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
57/59

スキルの差

こちらと同じ姿と強さになった0号と戦うことになったが、今まで人と戦った経験はほぼ無い。

とはいえ、思い出すまで戦えばよいだけで、さらに自分と同格と考えればそこまで気負う必要はないだろう。


(思い出すためにやるっていうならワンパターンな戦法よりも色々試してみたほうが良いかもしれないな)


丁度それなりに距離も空いていたため、まずは思い切って弓を使うことにした。

手始めに矢を数発普通に撃ってみる。


「おお、早速練習した弓を使うのか。パワーも精度もなかなかいいね!」


そう言いながらも0号は剣でこちらの矢を次々と剣で弾いて落としている。

自分と同じ能力と言われているものの、こうも簡単に防がれると向こうの方が強そうに見える。


「それならこっちも弓で行こうか」


0号がお返しとばかりにこちらに矢を放ってきた。

せっかく同格対決ということならこっちもはじき返してやろうと思い剣を構える。


だが、思うようには行かなかった。

あまりこの状況に慣れていないせいか、いや、それだけではなかった。

自分で撃つ矢より相手の矢のほうが僅かに速い。それどころか弾くだけで腕が痺れるほど一発が重い。


「君も弾けるのか。いいね! でもこれはどうかな?」


何とか攻撃を捌き切ったと思った矢先、0号は斜め上に向かって矢を放つ。

遥か上空に飛んで行った矢は軌道の頂点に達すると無数に分裂した。

多数の敵を矢の雨で一掃できる弓使いのスキル、アローレインだ。


「えっ、ちょっと…… そんなスキル持ってないんだけど!?」


慌てて飛びのいたおかげでなんとかハリネズミになることは避けられた。

しかし、俺が習得していないはずのスキルを使用して来たのはどういう仕組みだろうか。


「やっぱりみんな習得してないスキルは使えないと思ってるよね。ジョブシステムは簡単にスキルが使えて便利な反面、そう思い込むのが欠点だね。」


「実は、誰でも覚えてないスキルを使える?」


「理論上はね。スキルはただ記録通りに体を動かす操り糸みたいなもの。だから体の動かし方とか技の原理が分かっていればスキルを持ってなくても再現できるってこと」

「例えば、弓の撃ち方と簡易複製魔法の使い方を理解していれば…… ほら! こんな風に! 何回でも出せる!」


スキルを覚えていなくても使える。この事実にはとても驚いたが矢の雨の中では立ち止まっていられない。

とりあえず脚力強化で回避に集中する。


「まぁ無理に覚えてないスキルを使えとは言わないけど、それで勝機を潰すのは勿体ないって思うわけ。」

「ところで、スキルは誰が記録してると思う? 体術系は僕が担当してるんだ。自分でやってるから大抵のスキルは出せるし、威力も最大限出せる。」


急に矢の雨が止んだ。様子を伺うために振り向いた時、ゼロ距離真正面に0号が見えた。

剣の軌道を見極めようと集中して動きを見ようとしたが、その手に剣は握られていなかった。


激しい轟音と共に、体が急斜面の車輪のように無軌道に転がっていく。

直接確認はできなかったが、恐らく殴られたのだろう。


「ああ、腕が痺れる。君のパワーもかなりすごいはずだけど、流石にオリハルコンは傷つかないな。どう、立てるかい?」


少しふらつくがまだ余裕はある。

確かに基本的な能力は対等だが、スキルの熟練度はあちらの方が上だ。単なる力押しでは勝てない。


「まだ全然大丈夫です!」


「そうか、やっぱり君も頑丈だね。それじゃあどんどん行こう!」


ようやく近距離戦が始まった。

今まで驚かされ続けてきたが、今度はこちらから驚かせる番だ。


予想通り単純なぶつかり合いでは徐々に押されていく。

ステップで死角から攻めようとしても、予備動作で分かっているのかすぐに対処される。


(何か隙を作る方法は…… 一か八かあれを使ってみるか……)


全力でスキル<発光>を使ってみると、全身から凄まじい閃光が放たれた。不思議と眩しく感じないが、どうも相手には有効だったようだ。

ここでもう一つの近接武器、ハンマーを最速で振るう。溜める暇はなかったが、少なくとも剣よりは良いダメージになるはずだ。


狙い通りハンマーはしっかりと胴に入り、さっきのお返しとばかりに吹き飛ばすことができた。


「発光なんて普通は手に入らないよ。いい攻撃だ。段々調子が上がってきたね」


全力ではないとはいえ、あのハンマーの一撃を受けてすぐに立ち上がるのは0号の気力がすごいのか俺が思ったより頑丈なのか。

ダメージがどれ程かは分からないが、最初よりはテンションが上がっていそうに見える。

根拠はないがこの調子で良い感じの戦いを続けて行けば、テンションが高まって頭も冴えて何か思い出せる予感がする。


一旦仕切り直してからは剣、魔法、弓と距離を変え、武器を変え激しい攻防戦が続いた。

依然としてやや押され気味だが、ずっとこうしていても状況は悪くなるばかりだがどうにも勝ちきれない。


(このままじゃまずい。 でも焦るのはもっとダメだ。この状況を切り抜けるにはこちらも完全にスキルを使いこなせないと……)


一旦心を落ち着かせて、ゆっくり丁寧に腕に魔力を巡らせる。

筋肉と骨の端から端までしっかりと隙間なく満たすようなイメージで、そして巡った力をグッと膨らませるイメージを心に描く。


「おっ、君もスキルの使い方をどんどん掴んで来ているみたいだね。いいぞ!」


腕力強化をかけ直してからは徐々に力負けしなくなっていった。

魔力の消費も従来と変わらず、しかしより高いパワーを保ち続けられているのが分かる。


(これはかなり良いぞ! 今ならもっと……)


剣同士の打ち合いの中でもう一度精神を落ち着けて集中する。

そして、腕に流した魔力を一気に爆発させ、渾身の一撃を叩き込む。


激しい閃光と衝突音がして、気づけば0号の剣は弾かれて床に転がっていた。

0号も転がった剣の方を見たが、拾わずにこちらに向き直った。


「すごいな。自力で新しいスキルを使えるようになったのか。とんでもないな。」

「僕ももう少しで思い出せる。強烈なひと押しがあれば…… これで最後にしよう! 僕は動かない。君は今出せる最高の一撃をぶつけてくれ!」


「えっ…… 本当に大丈夫ですか?」


いくら本人にOKを出されても人間の姿をしたものを真っ二つにするというのは少しためらわれる。


「大丈夫、どうにでもなる! さぁ、世界を救うためだと思ってやってくれ!」


確かにここでやらなければ今までの努力が無駄になる。まさにここ一番の大勝負を決めなければならない。


今度は戦闘中じゃない。存分に集中できる。

一回脱力して再度集中。最大限の魔力を巡らせて、力を漲らせる。


(これで最大限か? いや、爆発を入れてもまだ使える魔力はある。残り全ての力をぶつけるには……)


さらに脚力も最大限の強化を行い、残った魔力は全て剣に集中する。

覚悟を決めて踏み込み、剣を振り下ろす。全ての力をどこにも漏らさないよう、余さずぶつけられるよう、全身に力を込めて叩き込む。


その最中剣は青く光り輝き、0号に当たった瞬間、辺りはすっかり青に包まれてどうなっているかすっかり分からなくなった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ