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エルフの森へ

次の日、宿を出ると入り口にフランが立っていた。


「昨日はちゃんと休めた? 早速素材集めに行きましょう!」


朝から元気いっぱいなフランに連れられて、エルフの森へ足を踏み入れる。

森といえば、この冒険でいくつか訪れているが、この森の雰囲気は何だか他と違う気がする。


空気が澄んでいて清々しい気持ちになるとともに、何か神秘的な力を感じる気がする。

エルフの森はマナで満ちあふれていると言われているが、これがその感覚なのだろうか。

何人かで輪にならないと囲えなさそうな程の木が何本も生えていて、壮大さに圧倒される。


「ここは色んな植物もあるし、何かしらのスキルは取れるんじゃない? とりあえず進んで行きましょう!」


彼女に言われるまま少し進んだところで、急に立ち止まった。


「早速見つけた。幸先がいいわね。あの飛んでる白いやつ、見える?」


小さな声でそう言われたが、ぱっと見では何も見えなかった。

そうして、少し見つめているうちに何か違和感を感じる箇所を見つける。


確かに彼女が言った通り、視線の先には綿毛で覆われたクラゲのような生き物が浮いていた。


「あれはカゼワタリって言う奴で、全身の毛で風の流れを読むことができる。つまり、このモンスターから風読みのスキルが取れるはずよ!」


風読みは名前の通り周囲の風向きや強さを正確に把握できるスキルだ。

弓使いの基本スキルの一つでもあるし、素材1つの可能性も十分にありそうだ。


「ということで、風に影響を与えづらい光、闇、無属性の魔法で遠くから撃つのがベストだけど、できそう?」


「それだったらなんとかなりそうです! 試してみますね。」


実際、今までライトシュートを撃っていたが、風の影響などは考えずともそれなりに当たっていた。

昨日の遠距離特訓を思い出しつつ、少し先読みしてライトシュートを放つ。

そして、光の矢を受けたカゼワタリは綿毛を散らしながら地面に落ちていった。


「一発で成功! 流石ね! 早速スキルを取ってみましょう!」


期待の眼差しで見守られながらスキルクリエイターを使って、風読みスキルを獲得し、早速発動する。

すると、視界がモノクロになり、風向きを表しているであろう矢印が見えるようになった。


「その反応、もう取れたってこと? 結構速いのね。どう? 風が見える感覚は。みんな最初は結構驚くのよね。」


「はい、効果は分かっていても実際に使うとなかなかインパクトがありますね…… とりあえず、これで正確に矢を放てそうですね!」


「そうでしょ? でもそれだけじゃないのよね~。 ということで、あの木に張り付いてる黒いトカゲは見える?」


言われた方を見ると、丁度葉っぱの陰に隠れるように大きなトカゲ型のモンスターが張り付いているのが見えた。


「 早速、あのダートゲッコーを弓で倒してみましょう! 分かりやすい隙もあるし、今のあなたならきっとできる!」


「分かりました! やってみます!」


風読みさえ使いこなせれば、あの大きさのモンスターはそう怖くないはず。

弓の射程圏内に捉えるため慎重に近づき、風読みを使って弓を構える。

そうすると、矢が飛んでいく予測範囲のようなものが見えた。


範囲をダートゲッコーの真ん中合うように構えて放つと、矢は見事に胴体へ命中した。

しかし、気づかれないように射程ギリギリから放ったせいか、致命傷にはなっていないようだった。


(なるほど、次はちゃんと射程と威力のバランスを考えないと……)


仕留め損ねたとなると、当然反撃が待っている。

ダートゲッコーは目にも止まらぬスピードで木の上をするすると動いていく。

そして、急に立ち止まると大きく口を開けて、小さな矢のようなものを複数本吐き出してきた。

この立ち止まってから吐き出すまでの間に仕留める必要がありそうだ。


(待てよ…… 相手が出しているのも矢だとすると……)


試しに矢が吐き出された瞬間に風読みを使って見ると、その矢の着弾地点がぼんやりと見えた。

これなら矢を躱しつつ、即座に反撃することもできそうだ。


先ほどの反省を活かして、射程の半分程の距離で撃てるよう距離を調整する。

そして、最小限の動きで攻撃を躱して、素早く矢を放った。


素早い反撃動作に慣れていないこともあって中心からは逸れてしまったが、矢は肩に突き刺さり、ダートゲッコーは木から落下してきた。

その隙に一旦姿勢を立て直し、もう一度矢を放つと、今度はしっかりと中心を捉えて無事に討伐することができた。


「早速風読みを使いこなせているみたいね! 矢を撃つ時も撃たれるときも便利なのよね! ところで、ダートゲッコーの矢が風の影響をあまり受けていないことに気づいた?」


「確かに、かなり素早く真っ直ぐ飛んできてたような気がしますね」


「そういうスキルが弓使いにもあるってことで、このモンスターを倒してもらったのよ! その名もシャープシュート! 威力はあまり上がらないけど、風の影響を受けづらくなるし、軌道が直線的になる関係で少し射程も伸びる便利なスキルよ!」


「風読みと合わせれば百発百中ですね! 早速見てみます!」


彼女の予想通り、シャープシュートを取得することができた。

ただ、残った素材にもう少し足せば取得できそうなスキルがあることに気づいた。


「シャープシュート取れました! それで、もう一つ麻痺属性の素材があればパライズシュートが取れそうなんですけど……」


「ダートゲッコーの矢には麻酔の効果があるからそのせいかしら? 麻痺素材ならシビレダケでもパライズフラワーでもここなら簡単に手に入るわ! 次の目的地に行く途中に拾って行きましょ!」


麻酔といえば、麻痺と睡眠の複合属性の場合が多い。

あの矢を受けたら眠ってしまう危険はあったが、思わぬ収穫だ。


シビレダケを拾って、パライズシュートも習得しながら森の奥に進んで行く。

奥はより木々が生い茂り、薄暗くなってきていた。


「この傷を見て、近くにジャベリンホーンがいるはずよ。」


辺りの地面や木には大きなひっかき傷のようなものが付いていた。

名前から考えて、大きな角をこすり付けたのだろう。


慎重に進んでいると、木の陰から槍のような大きな角を持つ、馬のようなモンスターが現れた。

さらに頭から胴体にかけて骨の鎧で覆われていた。


「出たわね! 見ての通り、骨のあるところには矢が通らないわ! 側面か真正面からシャープシュートを使うのがオススメよ」


横を取るために慎重に近づこうとしたが、今度はこちらが矢を放つ前に気づかれてしまったようだった。

ジャベリンホーンはこちらを向くと、なんとそのまま片方の角を発射してきた。

なんとか躱すとさらにもう一本も発射して来て、それも躱すことはできたが大きく体勢を崩された。


これはまずいと思ったが、ジャベリンホーンも飛ばした角を魔法で引き寄せるのに時間がかかっていたため幸い追撃はなかった。

こちらも体勢を立て直してジャベリンホーンに向き直る。


すると、今度は頭を低くしたかと思うと、素早く突進して来た。

慌てて剣に持ち替えて受け流すと、そのまま角を振り回して激しいラッシュを繰り出してきた。

なんとか捌くと一度距離を取り、仕切り直しとなったが、近接戦ではリーチの長い角がかなり厄介そうだ。


今度は突進を避けて、側面からシャープシュートを放つ。

そうすると、今度は角を体の横に浮遊させ、矢を防がれてしまった。


(これじゃ大ダメージは望めそうにないな…… そうと決まればこれだ!)


もう一度突進を躱して、敢えて真ん中から逸れた場所をパライズシュートで攻撃する。

ほとんどダメージはなさそうだが、わずかに動きが鈍くなったようだった。

もう一発撃つと、さっきよりもしっかりと命中し、突進の勢いのまま崩れ落ちた。


浮かせていた角も地面に落ちており、もう邪魔されるものはなくなった。

側面からしっかり狙ってシャープシュートを放つと、矢は胴体を貫通し、そのまま反対側の地面に刺さった。


「すごい、パライズシュートまで使いこなせてるなんて、なかなかセンスがあるわね! あの力強い角攻撃、なかなか手強いでしょ? 私の見立てではパワーシュートとか高火力な技が取れそうだと思ってるけど、どう?」


取得可能なスキルを見ると、ジャベリンの名の通り槍の投擲に関するスキルが多く並んでいた。

その中で、パワーシュートが取得可能であることを見つけた。


「パワーシュート、ありました! 」


「良かった! これで一人前の弓使いと言えるくらいのスキルは取れたわね! 正直、ノイズバードを倒すならシャープシュートで十分だけど、魔王に挑むならパワーシュートがなくっちゃね!」


「そういうことだったんですね。ありがとうございます」


「ひとまず、今日はもう日が暮れそうだし、戻りましょう! ノイズバードは完全に夜になると狂暴化する。群れで襲い掛かって来るからかなり危険よ! また明るいときに討伐しに来ましょう」


フランと分かれて宿に戻ると、慣れない戦いで疲れたこともあり、その日はすぐに眠ってしまった。


気づけばまた白い空間にいた。

いつものように女神様の呼びかけが聞こえるが、不思議なことに姿が見えない。

不思議に思っていると、急に目の前が暗くなった、というより目隠しをされたようだった。


一体何が起こっているのだろうか。

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