流星と雷光
「やあ! よく来たね! それにしても、また魔神を倒したみたいじゃないか! やっぱり君ならやれると思っていたよ。このタイミングで来たってことは、残りの魔神戦に向けて何か情報が欲しいって感じかな?」
教授の予想は当たっている。一方でこのワクワクした雰囲気からは、情報交換をかなり楽しみにしていたようにも見える。
「よくわかりましたね。もちろん出会った魔神や管理者達についてこっちもお話しますよ。」
「本当かい! すぐお茶を用意するからここに座っていてくれ! ああ、楽しみ過ぎて全然手元が覚束ない!」
予想通りだが、とんでもない食いつきだ。
バタついている教授のもとにホムンクルス、おそらくホムちゃんがやってきてなんとかなだめようとしていた。
どうもホムちゃんが代わりにお茶を用意してくれるらしいので、早速教授に今までのことを話していった。
「やはり君が戦ったのは7号、運命の神だったか! 別名は勝利をもたらす神、かなり戦いが得意だったらしい。 それにも勝ってしまうなんて…… やっぱり君はすごいな!」
「そんなにすごい肩書きがあったんですか!? 自己紹介の時にはディーラーとしか言ってなかったんですけど……」
正直なところ、全然戦闘向きらしくない職業の魔神があそこまで圧倒的に強いのは驚いていたが、この肩書きがあるなら納得できる。
(というか、どの管理者もそこまで戦闘が強い職業じゃなかったかもしれない…… 職業に惑わされてはいけないということか)
「自由を愛する神だったから、肩書に囚われるのも好きじゃないってことなのかな? 支配や束縛を嫌う彼は人類の自由を守るため、人類とともに強大な存在に立ち向かったとされているほどなんだ。」
「そこまでしてくれるタイプの性格だと思ってなかったんですけど、そんな話があるんですね。」
「まあ、そういうエピソードもあるけど、神の中で一番最初に堕落したらしいんだよね…… かなり気まぐれなところは君の話と一致している気がするね。」
「なるほど…… ところで堕落とはどういうものなんですか?」
「ああ、まだ君には話してなかったね。実は邪竜以外にも管理者達を束ねている神のような存在が居たみたいなんだ。そして、管理者達はその指示に従って世界を作っていたんだけど、最終的には全員天界から投げ落とされてしまった。これを堕落と呼んでいるけど、具体的に何故堕落したかは分かっていないんだ。」
「そうして管理者達は全て暗い深淵に投げ込まれて、代わりに今この世界でも信じられている10柱の新しい神々に取替えられてしまったらしいんだ……」
「なるほど…… 管理者達もかなり強いはずですが、彼らを追放するなんてかなりすごい存在だったということですよね? というかそんなことをしたら邪竜も黙っていないんじゃないですか?」
「これは仮説に過ぎないけど、管理者達は追放された後に邪竜に拾われて上位存在になったんだと思うよ。そうしたら追放されたのに魔神の姿も持って今も活動出来ていることに説明がつくような気がするんだ。」
「確かにそれなら納得できそうですね!」
「堕落についてはまだまだ分からないけどね…… 最初は7号、次に5号…… そうだ!丁度君は5号について聞きたかったよね? まず彼から説明しようか!」
「彼は処刑人と呼ばれていて、赤い雷としても表現されることがある。彼は管理者を束ねている神から指令を受け、悪しきものを雷撃で打ち払ったと言われている。」
「処刑人ですか!? 今までの管理者達の職業に比べるとなかなか恐ろしいような気がしますが…… もちろん、かなり強いってことですよね?」
「そうだね、雷を操る記述もあるけど、そもそも本人も雷のように力強く素早いらしい。一瞬でも気を抜いたら終わりということも十分に考えられるね。少なくとも雷への対策はしっかりとした方が良いと思うよ。」
「わかりました、これはかなり厳しい戦いになりそうですね…… あとは1号と8号について何か分かることはありますか?」
「1号は番号からしてリーダーっぽい感じがするし、実際そうらしいけど…… 戦いに参考になりそうな記述が一切ないんだ。生き物を導いたり何か助言をするくらいで、そもそも具体的にどんな能力を持っているかもあまり分かってないんだ。」
「でも、8号の方は結構登場回数が多いぞ! 彼は伝令者、オレンジ色の流星としても表現される機動力が凄そうな管理者だ。大きな弓からたくさんの流れ星を発射して、その瞬きで地上にメッセージを届けたり、自分も流星になって空を飛びまわったりと射程と機動力を兼ね備えた所が手ごわそうだと思うよ。」
「なるほど、話を聞く限り残りの3つなら8号がまだ倒しやすそうな気がしてきました! ありがとうございます!」
「役に立てたみたいで良かったよ! 実際、ホワイトクラウンは少し前から危険なモンスターが出て最高ランクの冒険者以外は一時的に立ち入れなくなってるし、残りの2択なら8号がいいと思っていたよ」
それは初耳だった。確かにそれなら8号を先に攻略するのが良さそうだ。
方針が決まった俺は8、号への対抗手段として遠距離攻撃手段を手に入れるべく一旦エストポルトへ向かってみることにした。