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思わぬ落とし穴

カジノに戻ると、ロッティが駆け寄ってきた。


「君がこのタイミングで戻ってきたってことは、あのキメラを倒したってこと!? 急に現れた無名の凄腕チャレンジャーって噂になってるよ!」


「えっ、さっき倒したばかりなのにもう広まってるんですか?」


「ここはかなり情報が広まるのが速いからね~。それにしても君は結構大胆なんだね。もうちょっと弱い奴を何体か倒してくると思ってたから、このペースなら試合を見に行けるかもと思ってたのに。」


「なるほど、ということは結構調子よかったんですか?」


「それはもう! だって一応間に合ったんだから! ほら! 魔王のせいでちょっと運気が落ちててもやるときはやるのよ!」

そう言って、1万枚分になるメダルを得意げに見せてくれた。


「おお! すごいです! これで石板と交換できます! ありがとうございます!」

彼女がいなければこれから黄色のメダル集めに苦戦していただろう。

偶然声をかけられた俺にも幸運が訪れたというところだろう。


「ねぇせっかく一緒に集めたんだから、石板交換までついて行ってもいい?」


「はい、もちろんです!」


こうして二人で交換所まで来た。

石板を交換したい旨を受付の人に伝える。


「はい、あの石版ですね。こちら貴重なものなのでそこにあるのはダミーなんですよ。本物をお渡ししますので、こちらへどうぞ。」

そう言われて交換所の中に案内された。


「それでは景品をお持ちしますので、少々お待ちください。」

そう言って、受付の人はさらに奥の部屋入っていった。

景品が来るのをしばらく待つことになりそうだ。


「景品を交換するのって初めてなんですけど、高額なものだとこういうことってよくあるんですか?」


「無くはないけど…… なーんか怪しい気がする。本当に大丈夫かしら?」


その直後、突然足元の床が開いた。

突然のことに反応しきれず落ちてしまったが、幸い下は柔らかくダメージはなかった。

と思っていたが、逆に柔らかすぎて体が半分ほど埋まってしまった。


「なんなのコレ! なにが起きてるの!」

ロッティも一緒に落ちてしまったようだ。


「ハハハ! まんまとかかったな! 石板を交換するなどよっぽどの物好きか勇者ぐらいだろうからな! 余計なザコも一匹いるがまあいいだろう。」

聞き覚えのある声だ。

上を向いてみるとそこにはネメシスが立っていた。


「わざわざこんな罠を作ったのは万全の状態で魔神を呼ぶため。お前は殺しても蘇る。ならば、殺さず閉じ込めてしまえば良いというわけだ! もちろん、この部屋には魔法封じの結界が貼ってある。テレポートでの移動も不可能だ!」

何ということだろう。そうなると本当に世界が終わるかもしれない。


「それでは終末をその薄暗い穴の中で過ごすんだな!」

そう言って、ネメシスは高笑いしながらどこかへ行ってしまった。


「うわ、本当に魔法が使えなくなってる! こんな穴いつもなら飛んで出られるのに!」

確かにサキュバスは空も飛べるが、魔法が使えないと無理なようだった。

壁に滑りやすく、登って行けそうにもない。


色々踏ん張ってみたがどうにもなりそうにない。

今度こそ本当に終わりなのだろうか。


「こんなとこで骨になるなんてイヤー! 助けて、神様! お願い!」

神様がいないこともないが、魔法封じのせいか女神様も応答がない。

祈りすら届かないだろう。


そうしていると、何か電気が流れるようなバチバチとした音が微かに聞こえてきた。

音の出どころを探して周囲を見回すが何も見当たらない。


「ねえちょっと、目の前! 何か出てきた!」

そう言われて正面を見ると何か光るものが目の前に現れた。

その光は徐々に大きくなり、所々表示が崩れたリモレイドのウィンドウになった。


「なにこれ? 魔法は使えないはずよね?」


「そのはずですけど、これを使えば魔神のもとに瞬間移動できます。ひとまず魔神戦には行けそうです。」


「外に出られるってこと!? それじゃあ魔神戦の後でいいから絶対助けに来てね!」


「はい、必ず勝って戻ってきます!」


リモレイドで転移した先は何もない荒野だった。

だいぶ辺境の地なのか、いつもより人が少ない。

そしてまた奇妙な声が聞こえてきた。


――――――――――――

全てを知り、知識を持って人を試すもの

人類の繫栄に知識は不要と断じたもの

その問いかけに答えられなければ全てが焼かれる

その神の名は『ヴェロクス・クエスティオ』

全ての知識を閉じ込める番人

――――――――――――


声が止むと、2番目の魔神が現れた。

上半身は元の2号と変わりないが、下半身は羽の生えたライオンに変わっていた。


「これからレイドバトルを始めます。前半は戦闘、後半は知識の試練となっています。それぞれのフェーズの制限時間は30分です。時間内に完了できない場合、この世界のありとあらゆる記録媒体が消滅します。」

以前会った時とは違い、2号はやや早口ではっきりとした声で話していた。

制限時間はかなり短く、ペナルティもかなり重そうだ。


「まず戦闘の試練を開始します。時間内に体力を削り切ればこのフェーズは完了となります。それでは開始します。」


説明が完了すると、2号は魔王と同じようなカラフルなキューブを多数召喚した。

そして、キューブからは激しい魔法攻撃が放たれていた。


魔法攻撃は激しいものの、他の魔神たちの攻撃に比べるとかなり威力は控えめだ。

それに、本体のライオン部分の攻撃も決して弱くはないが、サイズが極端に大きくなっていないため、大した被害にはなっていない。

これならこの制限時間でも問題なさそうだ。


その後、特に危なげもなく体力を削り切ることができた。

残るは知識の試練。これがどれだけ難しいのか予想がつかない。


「戦闘の試練完了です。お疲れ様でした。次は知識の試練です。会場を準備致しますので、しばらくお待ちください。」

そう言うと辺りが真っ暗になり、空と地面の区別もつかなくなった。


気づくと、広いホールの中にたくさんの席が並んでいて、魔神戦の参加者が座っていた。

俺も席に座っていたが、目の前の机に奇妙な装置が置いてあることに気づいた。

箱に大きなボタンと赤いクリスタルが付いている。押すと何か起こるのだろうか。


「それは早押しボタンですよ。それをそして問題に答えるのです。」

隣を見ると、いつの間にか女神様が座っていた。


「前半戦はお疲れ様でした。後半は私に任せてください。」

そう言ってもらえると心強い。

女神様も自身に満ち溢れた表情をしていた。


「お待たせ致しました。これから知識の試練を開始します。これから問題を読み上げますので、答えが分かった時点でお手元の早押しボタンを押し、クリスタルが光った後回答をお願いします。問題は全部で100問あります。それでは第一問。」

その瞬間、女神様の表情が真剣になり、ボタンの上に軽く手をのせていた。


「世界で一番高い」

ここまで聞こえたところでピンポンという音が真横から聞こえた。


「ホワイトクラウン!」

女神様が答えた。


「正解! それでは第二問。」

何が正解なのか全くわからなかった。

そもそも問題すら途中までしか聞いていない。


その後の問題はよりわからないものだらけだった。

さらに、女神様の回答を聞いても全く予想のつかない問題ばかりだった。


「お疲れ様です。これで全ての試練が完了しました。1分後この会場は自動で消滅し、元の場所へ送還されます。リモレイドでお越しの場合、さらに1分後自動で転移前の地点に送還されますが、時間内にテレポートを行った場合送還は行われません。」

気づけば2号は崩れて消えていった。

すごく楽勝のような気もしたが、後半に女神様がいなければ恐ろしい難敵だった可能性もある。


「勇者よ、改めて魔神戦お疲れ様でした。管理者と連携して何とかリモレイドを起動しましたが、うまくいって良かったです。」


「女神様のおかげだったんですか!? ありがとうございます! 後半も助かりました。」


「例には及びませんよ。いつも助けてもらっていますからね。……さて、自動送還の前にテレポートでゴルディアスに戻りましょうか。もう一度あの場所に閉じ込められては困りますからね。」

確かに2号がそう言い残していた。

荒野に戻った後、テレポートでゴルディアスに移動する。

テレポート後しばらく経っても落とし穴の中に戻ることはなかった。


ロッティを救い出すため、俺は再び交換所に向かった。

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