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ゲームの世界

「これでアタシも世界を守れたってことになるのかな? 」


「もちろんです! それに俺も無事に地上に戻れました。ありがとうございます。」


「そっか、良かった! まあ、もちろんメインで戦ったのは君だけど…… あの時のお返しぐらいはできたかな。」

「君はまた、魔王を倒しに行くんだよね? アタシはこの辺りの人々を助けないとだから、ついてはいけないけど……代わりにこれを持って行って!きっと役に立つと思う!」

アネモが花のようなオブジェを手渡してくる。

どうもいざという時に幸運を引き寄せるアイテムらしい。


「ありがとうございます! 絶対に全部の魔王を倒します!」

アネモと別れた後、宿屋で休息を取ることにした。


宿で休んでいると、気づけばいつもの白い空間に飛ばされていた。


「女神様?」


「やぁ! 勇者くんおつかれ! だいぶイレギュラーだったけど良く頑張ったね!」

何故か管理者、10号が目の前に現れた。

6号に似ているが、少し薄いレモン色の体で、腕や耳が虹色になっている。

服装も全体的にカラフルだ。


「何故ここに管理者が!?」


「ホントはもうちょっと早く出てきたかったけど、なんか2人で話してるのを邪魔するのもどうかなと思ってさ。今回の戦いで魔王も倒したことになってるから、その後処理に来たんだ! 勇者は続けるよね?」


「そうだったんですね。もちろん続けます!」


「はいはーいOK! ……後処理してるってことはさぁ、せっかく頑張って作った魔王の出番がなくなっちゃったんだよね! 君だけでも見て! <シャイニングドリーミーダイヤモンドインコ>をさ!」

そう言って、薄桃色の輝く神々しいインコのようなモンスターの模型を出してきた。

かなりリアルで剝製のようにも見える。


「これを自分で作ったんですか?」

見事な出来だったが、戦闘中に出たモンスターと出来が違いすぎる。


「まあ、半分くらい? 原型は自分で作って、6号に手直ししてもらったんだ!」

そう言って、薄桃色の卵に顔がついたような模型と、アイディアメモを取り出してきた。

ここからあのデザインになるのが信じられない。


「あっ、自己紹介してなかった! 僕は10号! 担当はアイディア出しだから…… 夢想家って呼ばれてる! 原物質を出して色々作るのが好きなんだ。」


「原物質?」


「錬金術とかやったことない? 賢者の石の第一段階で作るニグレドとも呼ばれるやつだよ。この世の物質は突き詰めると全てこれでできてるんだ! まあ、ここから何かに変換するのは時間がかかるから、普段は原物質を固めて模型を作って、納得がいくものが出来たらちゃんとした素材を錬成するよ!」

詳しくはわからないが、魔神戦のモンスターは錬金術で作られていそうだった。


「なるほど、すごいですね! そういえば、2号から魂の生成はできないって聞いたんですけど、その魔王ってどうやって動かしているんですか?」


「まぁゴーレムみたいな感じで疑似魂を入れて、事前に行動パターンを登録してるだけで特に魂は入っていないんだ。線を踏み越えたものをそのパターンに沿って攻撃するようになっているだけだよ。」

線を越えるまで大人しい理由をやっと知ることができた。


「そうだったんですね! ……ところで、かなり奇妙な質問だとは思いますが……この世界ってゲーム?というか……作り物だったりしますか?」

魔神戦でのネメシスと10号の話を話を聞く限り、この世界は単なるゲームであり、俺たちは盤上の駒でしかないらしい。

これが何を意味するか、何か見えない巨人に操られているのか、自分は人間だと思い込んでいるだけのただのミニチュアであるのか全くわからなかった。

さらに言えば、もしその言葉の意味を理解できても、その状況をどうにかできるものではなさそうなことも分かってはいたが、恐怖によるものか好奇心によるものか、知らないままではいられなかった。


「君、この世界をゲームだと思ったの?」

10号が急に緊張した表情でこちらに聞いてくる。


「俺はよくわからなかったんですけど、ネメシス…… ええと、あなたを召喚した人が言ってて……」


「まぁ、そっちか! ホント!? マジで言ってた!?」

先ほどより興奮気味に聞いてきた。


「はい、言ってました……」


「うわーすごい! 40億年分の嬉しさだ! やっとそう思ってくれる人が来たんだ! 実際アイツ結構この世界と違うとこから来てそうだったもんね! ずっと世界をデザインし続けた甲斐があったな!」

急に物凄く喜び始めたが、全く意味が分からない。


「ああそうだ、この世界がゲームかって? もちろんそんなわけないよ! 君が一番分かってるでしょ? 」

「僕ら管理者は元々何にもなかった星を第二の地球にするために力を与えられたんだ! しかも現実と同じじゃつまらないだろうから、ゲームみたいにしろって言われてたんだ!」


「つまり、あなた方管理者は別の星から来ていて、しかもその星とは全然違うような作りにしろと言われながらこの世界を作ったということですか?」


「そうだね、魔法もモンスターもダンジョンも元の世界にはないものなんだ! 冒険者だってもちろん元の世界にはいなかったよ。」

そんな世界があるとは到底信じられなかった。

ただ、確かにそこまで違う世界から来たら、この世界が作り物と言われたら信じるかもしれない。


「とは言え、この世界で初めから生きている人にとっては、別に当たり前のことだし、面白いもつまらないもないよね? それに、モンスターが元の世界にいないって聞いたら、その方がいいって思うこともあるんじゃないかな?」


「確かにモンスターがいなければ、その犠牲になる人はいなかったと思います。ただ、一方でモンスターの素材でしか作れない物もたくさんあるので、完全にいなければいいかというと、少し難しいと思ってます。」


「実際、素材は倒す価値があるように調整してるところはあるし、倒せるように人類は頑丈に作ってる。とはいえ、モンスターと魔王の役割は他にもある。人間同士で争うリソースを削ぐ、つまり戦争を減らすことも狙っていたんだ。それに勝手に湧いてくるダンジョンから資源が取れれば、わざわざ奪い合う必要も減らせると考えてるよ。」


「確かに歴史書だと戦争は2回ぐらいしか起こってないし、起こりそうな状況だったところにモンスターが来てそれどころじゃなくなった記述の方が多いくらいですね……」


「僕らが居た世界は戦争がひどくって、最後にはほとんどが不毛の大地になり、1つの都市しか残らなかった。それに、人類が一番負の感情エネルギーを生産しやすい生き物だから、何とかして戦争を減らしたかったんだ。」


「なるほど、モンスターがいない世界も大変だったんですね……」


「まぁ、モンスターを弱くしすぎても環境が壊れて本末転倒になっちゃうから難しいところではあるんだよね。今回みたいに魔王が増えると大変だし…… そうだ! 忘れてた!物質の冠をあげよう! これを被るとちょっと錬金術ができるようになるし、便利なレシピブックもついてる! 少しでも役に立つといいな!」

錬金術があればレアな素材も錬成できるかもしれない。

そして、いいスキルが取れるかもしれない。


「ありがとうございます!」

「それで、一つ気になったんですが…… あなた方が魔法を生み出したなら、魔法がない世界でどうやってホムンクルスであるあなた方が誕生したんですか?」

魔法が無ければ錬金術は成り立たない。


「ああ、僕らは生命の樹から生まれたんだ! 元の世界だと別の技術で複製できたからいいけど、この世界にはそれが持ち込めなくって、それで錬金術のレシピにホムンクルスの作成方法を追加したんだ。流石に僕らだけじゃ人類をサポートしきれないからね」

そもそも人類に作られたわけでもないようだ。


「このタイプの世界の人類は結構僕らを活用してくれてると思うね! わりと町でよく見かけるでしょ?」

確かに町でよく働いているのを見かける。

何なら孤児院で働いているホムンクルスと遊んだり、ちょっと勉強を教えてもらったこともあった。


今まで管理者が友好的なのはホムンクルスだからだと思っていたが、ホムンクルスが友好的なのが管理者の性質を受け継いでいるということに気づいた。


「さて、後処理終わり! 残ってる管理者は8号以外だいぶとっつきにくいかもしれないけど、まぁ頑張って!」

そう言うと、10号は消え去った。

そして、入れ違いで女神様が来た。

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