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荒れ狂う魔神

魔王門の中に入ると、既にネメシスが待ち構えていた。

先ほどより怪しげな宝玉の輝きが増していた。

魔王がいないが、もしかすると宝玉に閉じ込めたのだろうか。


「やっと来たか! それでは始めようか!」

そう言って、ネメシスが石板に宝玉をかざすと、石板が輝き始めた。

宝玉が砕け散って、また奇妙な声が聞こえてきた。


――――――――――――

天を恨み狙うもの

大地を自在に捻じ曲げるもの

その巨体は全てを薙ぎ払い、その歌は災いを呼ぶ

その神の名は『カントゥス・イーリス』

混沌をもたらす気まぐれな虹

――――――――――――


「フハハハハ! それでは俺は外で滅びを待つとしよう! さらば!」

そう言うと、ネメシスはワープゲートでどこかに行ってしまった。


床に大穴が開き、勢い良く魔神が出てきた。

その直後にはもう天井に勢い良く頭をぶつけていた。


「いったた、何ここ!? 狭すぎない!?」

現れた魔神は虹色に光る長い胴体を持っていた。

しかし、まだ完全に全身は出てきていないようだった。


「しかも君しかいないの? ちょっと集まり悪いなぁ…… こんな陰気なところに召喚されたからかなぁ……」

「やっぱりこんな狭い所じゃ君もやる気起きないんじゃない?」

思わぬことを魔神から聞かれた。


「そうですね! やっぱりもっと広い外で戦った方がやる気出ますよね!」

そう言ったところで叶うかわからないが、前向きな返事をしてみた。


「よーし、それじゃあ頑張っちゃうか!」

そう言うと、さらに体を穴から出して勢い良く上体を回転させだした。

長い体をうねらせながら、壁に激しく頭を打ち付ける様は、なんだか怖かった。


そして、しばらく物凄い音を立てて壁を叩いていたが、急に目の前が真っ白になった。


気づくと魔王門は消えており、魔神と一緒に外に出られたようだ。

辺りを見回すと、アネモとネメシスが驚いた顔でこちらを見ている。


「おっ、外だ! やったー! やっぱりこれぐらい広くないと!」

あれだけ頭を打ち付けていたのが噓のように、魔神は無邪気に喜んでいる。


「な、何をしやがった貴様ァーッ!! ふざけるな! 一度きりのチャンスだったんだぞ! せっかく勇者以外立ち入れない状況で召喚してやったのに……このバカ魔神!」

確かに世界を滅ぼす絶好のチャンスを魔神自身に潰されたらこうも言いたくなるだろう。


「なに? 今バカって言ったの? 別に頼んでもないのにあんなところに召喚しておいて? そっちの方がバカなんじゃん!」


「クソッ、まあ何でもいい! 俺が召喚したんだ、お前を勝たせてやるから指示に従え!」


「えー? なんかアイディアくれるってこと? まあ、面白かったら採用しようかな?」

しばらく喧嘩していたのに何かまとまったようだ。

魔神の頭部にネメシスが乗っている。


「勇者くん! 今度こそアタシも協力するよ!」

アネモが俺の方に飛んできた。


「おっ、2on2か! ちょっとワクワクするね!」

「ルール説明がまだだった! 制限時間は長すぎると飽きちゃうし…… 3時間! ペナルティーは地殻変動の活発化! それじゃあ始めよう!」

そう言って、魔神は光輪を展開した。

その光輪は2色に分かれており、95%程が青、残りの5%程が赤になっていた。


始まった途端、魔神は地面をえぐりながらこちらに突進してきた。

巨体に見合わず、というより巨体だからこそかかなりの速度で突っ込んでくる。

跳躍の上昇速度でも少し間に合わないかもしれない。


「危ない!」

アネモが叫ぶのが聞こえた。

その瞬間、体が風によって持ち上げられ、跳躍を間に合わせることができた。

そのまま魔神の胴体に着地する。

これなら攻撃し放題だろう。


「おい、魔神! 上に乗られたぞ! どうするつもりだ!」


「大丈夫、大丈夫! いつもこんなものさ! さぁみんな、出番だよ!」

そう言うと、魔神は上空に向けてらせん状に体を伸ばしていった。

アネモの支援のおかげで、何とかずり落ちないように踏ん張ることはできた。


「ワンダーランドへようこそ!」

長い胴体の上にたくさんの扉のようなものが出てくる。

そして、一斉に開かれると、中からカラフルな生き物たちが一気に飛び出してきた。

どれも見たことない生き物ばかりだが、いずれも落書きのようにふにゃふにゃとした抽象的な見た目をしている。

しかし、ゆるい見た目に反して、こちらに激しい攻撃を加えてくる。

しかも、いくかは闇のオーラを纏い、連携攻撃をしてくる。

ネメシスが操っているのだろう。


「ワンダーワーミーのワンダーランド、楽しさ驚きいっぱい! 素敵なダイナー、美味しいご飯、ショータイムを見逃すな! アトラクションも、もちろんいっぱい! みんな大好きフルダイブパーク~」

俺が大量の生き物たちを相手にしているのをよそに魔神は楽しげに歌っていた。

少年か女性を思わせるような明るい声で何かの紹介の歌を歌っているが、それが何を意味するか全くわからなかった。

ただご機嫌に無尽蔵に体を伸ばし続けている。


(どうすればこの巨大な魔神を倒せるのだろう…… 頭を狙うか?)

そう思って上を向いたとき、まだ本体に攻撃できていないのに光輪の青い部分が削れていることに気づいた。


「なぜ体力が減っている!? こんなものバグだろ! チートだ! チート!」

若干意味が分からないところはあるが、ちょうど疑問に思っていたことをネメシスが叫んでいた。


「大丈夫、大丈夫! 仕様通りさ! 青ゲージはワンダーアニマルを倒すと少しずつ減っていくし、赤ゲージは青ゲージ消滅後の頭へのダメージでしか減らないよ!」

結構重要な情報だ。

つまり、この大量の生き物たちを倒して、頭に攻撃すれば倒せる。


「何が大丈夫だ! お前その図体で5%しか体力がないというのか!?」


「まあ、僕ら精神は本物だけどこの肉体は手駒用のコピーに過ぎないしね。本体討伐だったら固さには自信あるし、一週間以上かかっちゃうでしょ? そしたらみんな疲れるし飽きると思うんだよね。やっぱりゲームは勝ち筋も負け筋もあってこそ! なんだってバランス調整は大事なんだ!」

上位存在は手駒を用意すると聞いていたが、魔神はなぜ本体がいるのだろうと考えたこともあった。

彼らは自分と同じ姿の調整された肉体を魔神として送り込んでいるというのが答えだった。


「君も文句ばっかじゃなくて、なんか面白いものを見せてよ!」

そう言うと、ネメシスの周囲に虹色のリングが現れた。


「なんだ、君かなりいいもの持ってるじゃないか! そろそろ中ボスだね、こいつを出そう! いくぞ!<ダークネスゴッドシャイニングフェニックス>!」

魔神がそう言うと、黄色と紫色の半分ずつの体色を持つ巨大な鶏のようなモンスターが現れた。

しかし、あまり強そうでない見た目と裏腹に、強烈な魔法を放ってくる。


「なんだ……想像の産物に過ぎないはずのモンスターが湧いてきやがった。強さは想像通りだが、見た目が気に入らんな。」

やはりネメシスが考えたモンスターらしいが、見た目は結構違うらしい。


マジックミラーで攻撃を返して、攻撃を加える。

足場から落ちそうなときもあったが、アネモの風魔法で何とか復帰する。

そして、何とかフェニックスを撃破することができた。


魔物を倒して上に進み続けていたが、なんだか肌寒くなってきた。

気づけば辺りも暗くなって来ている。

そして、ようやく魔神が体を伸ばすのを止めた。

ついに頭の上にいるネメシスと対面した。


「ついに来たか…… しかし、お前も限界のはず。ここで片付けてくれるわ!」

そう言って、ネメシスは闇属性魔法を連射してきた。

マジックミラーではじいたが、その時には姿が消えていた。


「後ろ!」

アネモの声で気づいて何とか反撃する。

鍔迫り合いになったが、アネモがネメシスにウィンドウェイブを撃って状況を変えてくれた。


モンスターを召喚しきって攻撃手段が単純なレーザーしかない魔神はほぼ戦力にならない。

こちらは道中で疲弊してはいるが、挟み撃ちできるおかげで何とか均衡を保っていた。


「小賢しい奴らだ…… これで一気に片を付ける!」

ネメシスの周りに強い闇のオーラが立ち込める。

そして、それが一気に放たれる。


「俺の後ろに!」

アネモを後ろに下がらせて、マジックミラーを構える。

しかし、あまりの威力に押し出され、吹き飛ばされてしまった。


とんでもない勢いで下に落ちていく。

(せっかくあと少しでトドメをさせたのに……)

そう思って魔神の方を見たその時……


「あららー、フレンドリーファイアじゃん。この世界に防止機能なんてないよ。そいじゃ、さよーならー」

なんと、ネメシスの攻撃で魔神の体力を削り切ったらしく、魔神は崩壊していった。


「どいつもこいつも…… たかがゲーム内の駒に過ぎないというのに、ただのゲームでしかないこの世界を何故守ろうとする! 何故気持ち良くこの世界を壊させてくれないんだ! 覚えていろ!」

そう言うと、ネメシスもワープゲートに消えてしまった。


魔神は倒せたが、まだまだ落ち続けている。

自分は死んでも生き返るが、アネモはそうも行かないかもしれない。

吹き飛んだアネモの無事を祈りつつ、落下に備えて目を閉じた。


そろそろ地面にぶつかるかと考えながらしばらく落ちていたが、急に勢いが止まる。


「勇者くん! 良かった、間に合った……」

なんとアネモが戻ってきて、魔法で受け止めてくれていた。

二人とも無事で魔神を討伐することができた。

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