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灼熱の砂漠

都市を出てしばらく歩くと、急に草原が途切れて砂漠が現れた。

かなり暑いのか砂漠に生えているサボテンが揺らめいて見えた。


(そういえば、青い冠は使ってなかったな…… 雨を操る傘だったし、冠も雨に関連するものかな?)

アナライズで調べてみると、雨の冠という名前で名前通り雨の加護を受けられるようだった。


試しにかぶってみると、太陽の冠とは違いヒールの効果はなさそうだったが、代わりに何かに守られているような感覚を覚えた。

おそらく防御力が上昇しているのだろう。

普通に使う分なら太陽の冠の方が便利だが、攻撃力が途轍もなく高い相手ならこちらの方が有利かもしれない。


そして、砂漠に足を踏み入れてみたが、思ったよりも暑くなかった。

おそらくこの冠の力だろう。


(それじゃあ、この傘もさしてみようかな)

傘をさしてみるとさらに快適になった。

半透明だからあまり日差しは防げなさそうだが、おそらく守りの力が働いているのだろう。


傘をさしながら砂漠を歩いて行く。

多少砂に足を取られているが、それ以外は快適に移動できている。

辺りを見回しても岩やサボテンぐらいしか見えない。


(もう少し足回りが良かったら最高なんだけどな……)

そんなことをぼんやりと考えながら砂漠を歩いていると、何か動くものが見えた気がした。

その場所を注意深く観察すると、何かが砂に潜りながらこちらにゆっくりと近づいて来ていた。

よく見ると2つの光るものが見えている。潜っている生き物の目だろうか。


(砂漠のモンスターなら、早速ウォーターアローの出番だ)

とりあえず、傘を持っていない方の手からウォーターアローを飛ばしてみる。

しかし、放ったウォーターアローは髪の毛のような細さで、相手に当たる前に霧散してしまった。


(もしかして水属性苦手か? いや、この辺りの魔力が火属性に傾いている?)

そういえば、この砂漠は火属性の精霊が勝ったことでできたことを思い出した。

空気中の魔力に火属性が多いため、水属性が打ち消されてしまっているのだろう。


そうしているうちに砂から生き物が顔を出した。

砂漠の砂に溶け込めるような黄土色のトカゲのようなモンスターだ。

体は所々岩のようにとがっていて、その両目はペリドットのように輝いている。


様子を伺っていると、トカゲの両目が強い輝きを放った。

おそらく邪視だろう。


(ヤバい! 目を見てしまった…… と思ったけど、なんともないな?)

不思議に思いアナライズでトカゲを見てみる。

名前はバジリスクオオトカゲ、通称バジリスクというらしい。

そして、得意技はパライズアイ、つまり相手をしびれさせる邪視を使うらしい。


(危ない…… これが石化だったら終わってた)

幸い麻痺耐性のおかげで邪視は特に効果がないようだった。


(それなら今度は傘を使おう)

以前傘に水属性の魔力があることは確認している。

この傘を杖の代わりにして魔力を込める。

そして、放たれたウォーターアローは物凄い勢いでトカゲの体を貫通した。


(なるほど、魔法を使うにも道具は結構重要なんだな……)

予想通り砂漠の魔物には水属性が効くようで、トカゲは一撃で動かなくなっていた。


(さて、スキルは…… やっぱりあった!)

予想通り<砂歩き>のスキルが取れそうだった。

これで砂漠の度はより順調になるだろう。


再び砂漠を歩き始める。

たまに遠くにウサギのような生き物が跳ねているのが見える。

実はあれも恐ろしいモンスターだったりするのだろうか。


しばらく歩いていると、急にウサギの群れが正面から全力で走ってきた。

やはり群れで他の生き物を襲うモンスターだったのだろう。

そう思っていたが、ウサギが走っているのが別の理由であることに気づいた。


急に目の前の砂が盛り上がりだすと、巨大な壁のようになった。

砂でできた巨大な蛇が行く手を塞いでいる。


すかさずウォーターアローを数発打ち込むと、砂が湿って重くなったせいか、たちどころに蛇は崩れてしまった。

あっけなく終わったが、ウォーターアローがなければ結構強敵だったのかもしれない。


脅威がなくなったらウサギが襲ってくるのではと考えていたが、散り散りにどこか逃げて行ってしまった。

この世界にまだ安全な生き物が残っていることに安心感を覚える。


さらに進むと、砂岩の家が立ち並んでいるのが見える。

ついにエンシェルイナまでたどり着くことができた。


町に入ると、様々な場所に石碑が立てられていた。

何やら要件と名前がたくさん書かれている。

どうやらこれらは伝言板らしい。


町の人々が服装に関わらず、皆奇妙な模様の入った腕輪をつけている。

灰色を基調としていて、不規則な赤い線が入っている。


歩いていると、突然頭がクラクラして立てなくなってしまった。

日差しのせいかと思ったが、何か違うような気もする。


「大丈夫ですか?」

頭上から女性の声が聞こえた。

そして、何か腕輪が光ったのが見えた。


すると、たちまち頭がスッキリしてきた。

目の前には砂漠に住むエルフ、デザートエルフの女性が立っていた。

褐色の肌に月のように輝く銀髪が特徴的だ。


肩から大きなカバンをかけていて、背中には大きな宝石が複数ついた杖を背負っている。

もしかして、希少な職業、石魔導士なのではないだろうか。


「ありがとうございます。今のは一体?」


「ここは魔王の影響で時折記憶が消えてしまうんです! その前兆として急なめまいや頭痛があるんですよ。」

「でもこの腕輪があれば大丈夫です! これ、どうぞ!」

そう言って、女性は腕輪を差し出してきた。


「えっ、そんな重要なもの受け取れないですよ! あなたもそれがないと困るんじゃないですか?」


「大丈夫! 私、よく物をなくしちゃうので腕輪もいくつか予備を持っているんですよ!」

それはそれでちょっと心配だが、ひとまず腕輪は有難く頂くことにした。


「おいおいエリー、知らない奴にタダで腕輪をあげちゃうなんてお人よしすぎないか?」

急に声が聞こえたが、声の主は見当たらない。


「フィーちゃん! そんなこと言っても記憶を失っちゃったら可哀想じゃない! 」


その時このエリーと呼ばれる人物が石魔導士であることを確信した。

石魔導士はその名の通り石を利用して魔法を使うが、上級の魔法になるにつれて様々な宝石が必要になってくるため、一般には宝石魔導士と呼ばれている。

宝石の入手には、採掘師か錬金術師の技術を身につけて自分で手に入れるか、高い金を払って購入する必要がある。

もちろん、2つの職業を極めるのも、たくさんの金を稼ぐのも容易ではないため、かなり希少な職業だ。

そして、一人前の宝石魔導士ならほぼ必ず使い魔を連れている。それは……


「カーバンクル!?」

エリーのカバンの中からウサギに似た小動物が現れた。

その額には真紅に輝く宝石の角が生えていた。

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