魔法戦に向けて
魔神戦を終えて、鏡の盾を教授に返却するため、再び研究所に向かった。
「鏡の盾? ああ、それは君が持っていた方が役立つだろうし、君にあげるよ。その代わり、魔神について色々聞かせて欲しいな。見た目とか能力とか、貴重な情報なんだ。」
俺は、魔神戦の話をした。
その内容を教授は熱心にノートにまとめていた。
「なるほど、魔神たちは僕が知っている神の姿とは全然違うみたいだね。僕が知っている神たちは普通のホムンクルスと大差ない見た目をしているんだ。話を聞いて気付いたが、魔神は邪竜配下の10の魔物と同じ存在かもしれない。なかなか興味深いな……一応写しを君に渡しておこう。」
「ありがとうございます! 」
もしかすると、何か役に立つかもしれない。
「それにしても、このお守りは3番目の魔神に結構似ているね! 元々の神が真実を見通す能力を持っているし、このモチーフならかなりの力を持たせられるだろうね!」
「でも何故大賢者が魔神の見た目を知っているのでしょうか? しかも召喚前からこの商品はありますし……」
「うーん、彼は何でも知っているらしいんだよね。もしかしたら上位存在に関係あるのかも? まあ、確かめるにはノースホルンの厳しい自然に立ち向かわないといけないんだよね…… とはいえ、あそこにも魔王門があるからいずれ君は行くことになるだろうね。」
「そうですか…… じゃあその魔王を討伐する時についでに会いに行ってみようと思います!」
「ところで、今更なんですけど、邪竜ってどんな上位存在なんですか? 名前からしてあまり良い存在ではないような気はしていますが……」
「その通り、奴は世界を滅ぼす上位存在だ。どの記録でも普段は深淵で眠っていて、世界が終わるときに目覚めるか目覚めた時が世界の終わりだと言われているんだ。そして、目覚めた後は世界を粉々にして食べると伝えられている。」
「それって魔神より遥かに恐ろしいじゃないですか?」
「そうだよ。なんせ目覚めたら全て終わるからね。ただ、恐ろしいだけではない、奇妙な伝承も残っているんだ。」
「以前管理者達……つまり、10人の神が邪竜の配下だって話したよね? なんと邪竜が人間たちのために彼らを指揮して世界を作ったという話が残っているんだ! 」
「とはいえ、世界を提供する代わりに人類と契約を交わしていて、これが守られないと世界を滅ぼすというオチではあるんだけどね……」
「結局滅ぼされるんですね…… でも契約さえ守ればいいんですよね? 条件って何なんですか?」
「それが……一切わからない! 何故かどの記録にも一切条件が残っていないんだ。まあ世界の終わりなんて誰にもわからないってことなのかな?」
「そうですか…… まあ出てきた時は倒すしかないってことですかね…… 強くなれるように頑張ろうと思います!」
「やっぱり君は頼もしいな! また何か力になれそうなことがあったら言ってくれ!」
研究所を後にして、宿屋で休息を取りながら次の目的地を決めることにした。
「勇者よ、お疲れ様でした。無事2体の魔神を討伐することができたようですね! あと今召喚される可能性のある魔神は4番目の魔神ですが…… まだ石板に関する情報は見つかっていません。すみません。」
「魔神についてなんですが…… 実は魔王を魔神に置き換えるアイテムを教団が持っているという話を聞きました。そうなると、残りの魔神全てが召喚の対象になると思っています。」
「なんと…… それは大変ですね…… 置き換えられるとすれば魔王と戦わずに済むかもしれませんが、その代わり魔神と1人で戦うことになってしまいそうですね……」
「逆に考えれば魔王を討伐すれば置き換えられることはないでしょう。それでは、次の目的地は2番目の魔王討伐に向けてここから東にある<エンシェルイナ>に向かいましょう。他の魔神も恐ろしいですが、この魔神は1人で勝つのはかなり厳しいと思います。」
「わかりました! 明日からはそこに向かいましょう!」
「そこの魔王は強力な魔法攻撃を扱うことが多いです。魔法対策はしっかりとしていった方が良いですよ。」
翌日、アドバイスに従ってまずは魔道具屋を色々巡ってみることにした。
一番の狙いはマジックバリアだ。
このスキルがあれば魔法攻撃を防ぐことができるだろう。
一番安いスクロール売り場でスキルクリエイターを使ってみたが、あまりいいスキルはなかった。
有用そうな魔法のスクロールも売っていたのだが、やはり使い捨ての道具のせいかそこからスキルを取得することはできなかった。
ただ、最も弱いアロー系の魔法は全属性分取れそうだったので、全て購入して取得しておく。
1つ500G程度でスキルを取れるなら安いものだ。
これで一応は火、水、地、風、光、闇の基本6属性を使えるようになった。
魔法の戦いは結構属性が重要になってくる。
少しでも使える手札は増やしておきたかった。
次にだいぶ高くなるが、使用回数に制限が無い魔導書売り場を覗いてみる。
どれも数万Gはするが、ほぼ全てスキルは取れそうだった。
そして、望んでいたマジックバリアの魔導書も見つけることができた。
(おや? マジックバリアじゃなくてマジックミラーのスキルも取れそうだぞ)
こちらはバリアの上位版で魔法を跳ね返すことができる。
その代わりに魔導書以外に鏡の盾も必要だった。
装備として盾を残しておけば魔力がなくてもレーザーを跳ね返すことができる。
ただ、スキルに変えれば武器を持ち変える手間が省けるし、より多くの魔法を跳ね返すことができる。
(これならマジックミラーの方が良さそうかな?)
購入した魔導書と鏡の盾を消費して、マジックミラーのスキルを手に入れた。
これで魔法対策はかなりできただろう。
そして最後にたくさんの水を買った。
これから向かうのはかつて精霊同士の争いがあった地。
火の精霊の勝利によって灼熱の砂漠が広がっている。
その先のエンシェルイナに向けて歩み始めた。